大分県の別府湾など世界137地点の地層を調査した=愛媛大学提供

愛媛大学などの研究グループは、人類の活動が地球に大きな影響を与える時代「人新世(じんしんせい)」の始まりは、1952年ごろだと特定した。世界の地層を調べて人類活動による様々な痕跡が同時に急増し始めたと判断した。

地質学上、現代は氷河期が終わった後、約1万1700年前から続く「完新世」と認められている。21世紀に入り、世界で人口が急増し環境に多大な影響を与え始めた1950年ごろからを人新世として区分すべきだとの意見が科学者から出てきた。

人新世を完新世と同じように地質時代として新たに位置づける提案は、3月に国際学会「国際地質科学連合(IUGS)」の小委員会が否決した。ただ、人新世の定義や始まりを巡る研究は科学者によって続いており、再提案を探る動きもある。

国際協力で人新世の研究を進める愛媛大の加三千宣教授らは東京大学、オーストラリア国立大学などと共同で、人新世の始まりと言える年の特定を試みた。

北極と南極や欧米、アジア、オセアニアなど世界の137地点で7700年分の地層の記録を調査した。1年ごとに層を確認できる湖や海の堆積物、樹木の年輪、サンゴや氷床に着目し、マイクロプラスチックやメタン濃度の急増など人間の活動由来とみられる748の証拠を検出した。

その結果、痕跡が急増し始めたのが1952年で、より広く見積もっても48〜53年であると結論づけた。

人新世案が国際学会で否決された際には、50年ごろよりも前から始まっている可能性や、人間活動の痕跡が世界で広く確認されない点が理由に挙げられた。

今回の成果は、人新世の定義を再考する材料になる。愛媛大の加教授は「人新世の定義や始まりを考えることは、現代が地球環境を維持できるかどうかの転換点であることを再認識する機会になる」と語る。

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