産業技術総合研究所と筑波大学はギ酸を二酸化炭素(CO2)と水素から直接合成する手法を開発した。CO2を排出せずに水素を貯蔵したり製造したりするシステムの開発につながる研究成果だ。
ギ酸は化学原料や家畜に与える飼料の添加剤として使うのに加え、扱いづらい水素を運んだりためたりする「水素キャリア」として有望だ。水素をそのまま輸送するには高圧超低温にする必要があるが、コストや安全性で課題がある。ギ酸は常温で安全に管理できる。
一般に、ギ酸を作るには一酸化炭素とメタノールから固体のギ酸塩を作り、酸性にしてギ酸に変換する。さらに、ギ酸を分解して水素を製造するときには、温暖化ガスのCO2が出る。ギ酸の合成にはコストと手間がかかるうえに、水素キャリアとして使うためにはCO2を回収し、直接水素とくっつけてギ酸を合成する形で利用する技術が求められていた。
研究チームは、CO2と水素からギ酸を直接合成する手法を開発した。レアメタルのイリジウムを触媒に使う。通常、水中でイリジウムを触媒として使うとできたギ酸がCO2と水素にすぐに分解してしまう。ヘキサフルオロイソプロパノールという溶液の中で反応させると、ギ酸を生成する方向に反応を調整できた。
研究チームはこれまで、ギ酸から水素を取り出すときにCO2を回収する技術も開発してきた。回収率は99%以上で、CO2をほぼ外に排出せずに水素を取り出せる。この技術を組み合わせれば、CO2を排出せずに水素を循環的に使える。産総研の川波肇上級主任研究員は「ギ酸はためておいて、必要なときに水素を取り出せる」と期待する。
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