新開発の膜は性能と耐久性を両立する=山梨大学提供

山梨大学の研究グループは、次世代の水素製造方式である「アニオン交換膜(AEM)」型の基幹部材を開発した。AEM型装置は寿命の短さが課題だが、1000時間に相当する試験で性能を維持できた。装置は安価な部材で作れ、水素の製造コストを下げられる。企業と連携して早期実用化を目指す。

水と再生可能エネルギーを使う「グリーン水素」を作る方法は、「プロトン交換膜(PEM)型」と「アルカリ水電解」の2種類が主流だ。PEM型は再エネ由来の電気を使いやすいが、装置に貴金属を用いるなどコストが高い。アルカリ水電解は装置が安いが再エネ電源との相性が良くない。

第三の勢力として台頭するAEM型は、PEM型とアルカリ水電解の長所を両取りしたタイプだ。再エネ電源との相性が良い上に貴金属を使わないため、次世代方式の筆頭に挙がる。ところがイオンが行き来する膜であるAEMが劣化しやすく、長期間動かし続けるのが難しい。ドイツのベンチャー企業などのごく一部を除き、実用化されていない。

研究グループはAEMの分子設計を工夫して、薄くて柔軟かつ丈夫な膜をつくった。他の部材と組み合わせて水素製造実験をすると、1000時間に相当する耐久性試験でほとんど性能を落とさなかった。研究グループは「現状のPEM型と同じ性能をより安く達成できる可能性がある」としている。

この膜は国際的な規制が進む有機フッ素化合物(PFAS)を含む。PFASを含まない膜を開発するほか、触媒など他の部材の研究や装置の大型化もする。

成果はドイツの学術誌「アドバンスト・エナジー・マテリアルズ」で発表した。

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