東北大学の斎藤真器名准教授らは京都大学などと共同で、ガラスに力を加えたときに内部で起きる原子の運動を解析し、未知の動きを突き止めた。衝撃に強いガラス材料の開発のほか、長期間保存するために凍結乾燥する薬剤や食品の品質改善につながるという。

斎藤准教授らはガラスに放射光を当て、内部の原子の様子を観察した=斎藤准教授提供

ガラスは固体の結晶のように原子の構造に規則性が無いため、通常の固体の物質とは状態が異なる。窓ガラスなどに使うケイ酸塩のガラスの他にも、プラスチックなどの樹脂材料や凍結乾燥させた保存食や医薬品もガラス状態の物質だ。ただガラスの内部で起きる原子の動きには不明な点も多い。

研究グループはガラスに外部から力を加えたときの原子の動きを解析した。固体の結晶に外部から力を加えると、原子の規則的な構造が力を支えて壊れない。一方、液体では内部で原子が自由に動き回るため、外部の力で形が大きく変わって力が逃げる。ガラスは原子の不規則な構造が力を支え、さらに原子が少し動いて外部からの力を逃がして壊れないとされていた。ただどのように原子が動くか分かっていなかった。

兵庫県佐用町にある大型放射光施設の「SPring-8(スプリング8)」を使ってガラス内部の原子の動きを調べた。すると力を加えたとき、ガラス内部の大部分の原子が0.1ナノ(ナノは10億分の1)メートルほど動くことが分かった。

コンピューターで解析すると、力が加わったときに一部の原子が大きく動き、その間隙を埋めるように大部分の原子が集団で動いていた。外部からの力がその微小な動きに使われており、構造が維持されていた。

使う原子の大きさなどを調整し、壊れにくいガラスやプラスチックの開発につながるという。また医薬品や食品を長期保存のために乾燥凍結させると、中のたんぱく質が壊れて品質が落ちる。壊さずに品質を維持できるような手法の開発につながる可能性がある。

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