新型フリード、シエンタのライバル対決を見ていると、かつての闘争を思い出す。後出しじゃんけんで、真似したクルマのほうが、売れてしまい、もとのクルマは「やってられんわー」状態になったのが、初代ストリーム、初代ウィッシュの闘争だ。事の顛末を改めて振り返ってみたいと思う。

文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、ホンダ

■ストリームが売れてるのをトヨタとしては、見過ごせなかった?

2000年10月登場の初代ストリーム

 ストリームとウィッシュの闘争はいかなるものだったのか? 

 初代ストリームは2000年10月、「次世代の潮流たり得る新しい価値を持つクルマをつくりたい」という熱い思いを抱いた開発責任者・藤原裕氏のもと、「新価値7シーター」のコンセプトで、21世紀に向けた7名乗車のクルマとしての新潮流の創造を目指した。

 そこで「新世紀を予感させる先進スタイル」、「パーソナルでも楽しめるスポーティな走り」、「快適で洗練された革新ミニバン空間」の3つのテーマで開発された。

 初代ストリームデビュー時は、5ナンバーサイズで、3列7人乗りにもかかわらず、セダンと変わらない走りのよさで大ヒット。当時のことを思い起こせば、たしかにストリームはライバル不在で、唯我独尊の状態だった。

 2003年1月、そのストリームと同クラス、形こそ違えど、ボディサイズは全長4550×全幅1695×全高1590mmと、まったく同じサイズで、トヨタはウィッシュをストリームにぶつけてきたのである。ただし、ストリームの2720mmに対しウィッシュは2750mmと30mm長い。

 この時、自動車雑誌はさすがにタマげた、「あのトヨタが堂々とパクるとは……」と。当時、筆者は、毎月のように、どっちが売れてるか、販売台数をチェックしていて、「ストリーム後出しじゃんけんのウィッシュに無念の敗北」といった企画を展開したのを覚えている。

 ここで2003年~2004年のストリームとウィッシュの新車販売台数を見ていこう。以下の通り、2003年1月20日に発売されたウィッシュの販売台数は約9000台~約1万8000台を推移し、対するストリームは燦燦たるもので、対前年同月比40%台という月もあるほどだ。

 ちなみに2003年9月にストリームはマイナーチェンジするのだが、効果があったのは2カ月ほどだった……。

 2003年累計販売台数を比較すると、ウィッシュは15万8658台に対し、ストリームは3万5437台と、ストリームはウィッシュに対し、約45%にとどまっている。それほど駆逐されてしまったということだ。トヨタの底力恐るべし……である。

■ウィッシュ(2003年1月20日発売)、ストリーム(2000年10月27日発売)の月販台数比較
2003年1月:ウィッシュ4350台、ストリーム2312台(50.0%)
2003年2月:ウィッシュ16208台、ストリーム3101台(48.3%)
2003年3月:ウィッシュ18255台、ストリーム7066台(65.3%)
2003年4月:ウィッシュ14549台、ストリーム1721台(41.4%)
2003年5月:ウィッシュ14248台、ストリーム2921台(65.4%)
2003年6月:ウィッシュ16618台、ストリーム2569台(45.9%)
2003年7月:ウィッシュ16944台、ストリーム2644台(48.5%)
2003年8月:ウィッシュ10067台、ストリーム2069台(43.6%)
2003年9月:ウィッシュ14976台、ストリーム2164台(39.8%)
2003年10月:ウィッシュ11686台、ストリーム3413台(87.9%)
2003年11月:ウィッシュ11818台、ストリーム3011台(74.9%)
2003年12月:ウィッシュ8939台、ストリーム2446台(52.5%)
※カッコ内は対前年同月比

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■ポリシーなんかあるわけないウィッシュ!?

真似した、パクったと言われているが、当時のエクステリアデザイン案を見る限りパクった訳ではない……?

 ちなみにみなさんが気にしているのは、初代ウィッシュ登場時に「ストリームを真似したんですか?」という質問は出なかったのかということと、ストリームのマイナーチェンジ時のCMキャッチコピーをホンダが出した時にストリームの開発者はどのように思っていたのか、ということだろう。

 初代ウィッシュが2003年1月に登場した時、発表会場の開発責任者の囲み取材で、それとなく、「ストリームと真っ向勝負ですね」と聞いたら、「5ナンバーサイズでいいパッケージングは似てしまうものですね」と答えたのを覚えている。

 いっぽう、ウィッシュが登場して1年後、ストリームが2003年9月にマイナーチェンジした際、「ポリシーは、あるか。」という、パクったウィッシュに対する反撃のキャッチコピーで話題を呼んだ。この際、フロントマスクを大きく変えて、スポーティなアブソルートを設定している。

 真似した、パクったと言われているが、当時のエクステリアデザイン案を見る限り、似ていないと、トヨタを弁護しておこう(失笑)。

 後年、初代ストリームの開発責任者に当時のことを聞いたことはあるが、ホンダ社内では怒りを通り越して呆れるというより、最初に作った我々の信念は不動のもので二匹目のドジョウに未来はない。でも販売台数でこれほど大きく差を付けられてしまってはさすがに参りました……」。

 その後、2006年7月、2代目ストリームはウィッシュとは全く違う背の低い低床ミニバンとして登場した。2006年7月、当時の福井威夫社長は発表会場の囲み取材で「真似されないようにフルモデルチェンジした」と答え、当時の自動車雑誌では大いに盛り上がった。

 結局、ストリームは2代目が2024年11月、2代目ウィッシュも2017年10月に販売終了し、物議を醸したストリーム、ウィッシュは2台ともに消滅したのであった。

 みなさん、ストリーム、ウィッシュの仁義なき戦い、どう思いますか? 

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