最近、一般メディアはこぞって「EVの売れ行きが世界的に低迷。ハイブリッドへ回帰の流れ」と報道している。ハイブリッド車を多数ラインナップするトヨタをクサしていたかと思えば今度は持ち上げたりと忙しい。では、専門家の見解はどうか? そこでこの件に関するご意見を国沢光弘氏にうかがってみた。

※本稿は2024年4月のものです
文:国沢光宏/写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN
初出:『ベストカー』2024年5月26日号

■日本の自動車界には追い風となるのか?

HEVとPHEVをラインナップするトヨタ プリウス。多彩なパワートレーンを持つトヨタはやはり強い

 一般メディアの多くが半年前まで「電気自動車の開発で出遅れたトヨタはどうする?」という論調だったが、ここにきて「電気自動車は低迷。ハイブリッドをフルラインナップするトヨタ凄い!」という流れになってきた。

 まぁ新聞など一般メディアの多くは、2~3年で担当が変わるためシロウトみたいな記者ばかり。全体を見渡した記事なんて書けませんワな。

 私ら専門家は「やがて電気自動車の時代になるだろうけれど、それまではハイブリッドとPHVが大きな役割を果たす」と書いてきた。もっと言えば「充電インフラが充実するまでハイブリッドを持つトヨタの一人勝ちになる」です。

 だからこそ燃費のいいフルハイブリッドを持っていないトヨタとホンダ以外のメーカーは厳しい。いや、ホンダも車重のある車種用のハイブリッドは持ってない。

 トヨタはヤリスに代表される車重1000kg級から、センチュリーのような車重2500kg級まで対応する、7種類ものハイブリッドを持っているのだった。

 しかもライバルと比べ燃費で勝り、ドライバビリティも良好。加えてそのまんまPHEVにもなるという万全のシステムだったりする。耐久性や信頼性に代表されるブランドイメージだって高いため、トヨタを買っておけば間違いない。

 今後、世界規模でCAFE(企業別平均燃費)が一段と厳しくなっていく。ハイブリッドかPHEV、電気自動車を増やすしかないのだが、トヨタ以外のメーカーは多くの車種に搭載できるハイブリッドを持っていない。PHEVか電気自動車を売るしかない、と言い換えてもよかろう。

 遠からずハイブリッド車はすべてトヨタ車になる可能性だってある。欧州なんか間違いない。

 アメリカだってCAFEがキツくなれば燃費のいいクルマをたくさん売る必要出てくる。イッキに電気自動車に切り替えられればいいものの、航続距離や価格、充電インフラなどやるべき点は多い。

 ハイブリッドなら従来のエンジン車から乗り換えるだけで、二酸化炭素の排出量を30~40%減らせる。2035年くらいまでの目標として考えたら必要にして充分といってよかろう。

 トヨタ以外のハイブリッドはどうか? アメリカで売るなら、ホンダの場合、車重のあるクルマ用にシステム出力250ps以上のパワーユニットが必要(アコードで200ps級)。

 日産e-POWERは200ps級が上限なだけでなく、120km/h以上で巡航した時の燃費が極端に悪くなるという致命的な弱点を持つ。これから開発するのか、それとも電気自動車ベースのPHEVを作るのか不明ながら、厳しい戦いになります。

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