「左右非対称パターン」トラックタイヤの世界にも、こんなフレーズが出てくる時代になったとは! 乗用車の世界では当たり前でも、重量が重い&走行距離の多いトラックの世界では、特に耐摩耗性等々を考えると難しいのだと思い込んでいました。

技術は日々進歩してるんですね! そしてその進化の結果をトラック業界最大級の展示会である「ジャパントラックショー2024」会場にてTOYO TIREが強くアピールしていました。

EVトラックの増加で要素を満たした専用タイヤの必要性が高まる

トーヨータイヤブース…ジャパントラックショー2024

さて、何を隠そうこのようなタイヤが生まれた背景には、EVトラックの増加という世情があります。昨今、特に小型EVトラックは、続々と増加中だったりしますからね。住宅街で宅配なんていうシーンでは、静粛性が高く、走行中に排気ガスを出さないEVトラックはベストマッチ。とはいえ、内燃機関を持つトラックとEVトラックでは、クルマの特性が違います。そこで、専用タイヤ「ナノエナジーM151 EV」の登場となったわけです。

NANOENERGY M151 EVと竹岡 圭氏

ちなみに、小型EVトラック専用タイヤに求められる性能として挙げられるのは、まず言わずもがな低電費性能。配達の途中に充電が必要になるなんていうのは非効率極まりないですから、どうしたって低電費性能は外すわけにはいきません。続いて静粛性も当然求められます。

NANOENERGY M151 EV

また、モーターはゼロスタートからのトルクが大きい=タイヤへの負担も大きいので、それに合わせたトラクション性能を…というところまでは想像がついたのですが、なんと回生ブレーキも結構な負担になるのだとか。電費の向上を考えると、上手に回生ブレーキを使って減速エネルギーを回生し、再び走るために使いたいと思うのはドライバーとしては当然のこと。タイヤ側でカバーしてあげたい部分ではありますよね。

NANOENERGY M151 EV

しかし、何と言ってもEVトラックというだけで、全体的に車両重量は重くなっているわけですから、それだけでもタイヤへの負担はかなりのもの。それとは逆に、例えばエンジンがない=オイル交換が必要ないなど、クルマのメンテナンスの手間は減るわけですから、タイヤのメンテナンスの手間だって減らしてあげたい。となると、耐摩耗性や耐偏摩耗性が強く求められてきます。これらの要素を総合すると、やはり専用品が必要になるのも頷ける話なんですよね。そして、そういったニーズを反映するための、ひとつの手段として用いられたのが左右非対称パターンであり、小型EVトラック専用タイヤ、ナノエナジーM151 EVが生まれ、ジャパントラックショー2024でお披露目となりました。

EVトラックに特化したパターン設計で求められる要素を高次元でバランスさせる

NANOENERGY M151 EV

さて、気になる左右非対称パターンの内容ですが、半分を低電費・耐摩耗・偏摩耗・低ノイズに強いリブパターンに、半分をトラクション性能やグリップ力が高いブロックパターンに、という感じに配分されています。これを、フロントタイヤは外側にリブパターンがくるように履いて、リアタイヤはダブルタイヤなので、2つでひとつと考えて、外側にブロックパターンがくるように履く…と伺って、思わずポンッと手を打ちました。な~るほど、と頷けるアタマのイイ作戦♪ 確かにこれなら、操舵を担当するフロントタイヤの外側にリブパターンが来るので耐摩耗性は高くなるし、駆動を担当するリアタイヤの外側にブロックパターンが来るので、トラクションやグリップ力は上がるはずです。

NANOENERGY M151 EV

実際に試走させていただいたのですが、比較用に用意されたリブパターンのM125と比べても、直進時はM151 EVの方が四角く広い接地面が感じ取れました。この接地面を板チョコ4つ分と例えるとしますと、コーナリング時は外側は縦に合体した板チョコが踏ん張ってくれて、内側はブロックの板チョコ2つが路面にペタッと張り付いて支えている感じと言えば、伝わるでしょうか(笑)。

NANOENERGY M151 EV

レーンチェンジに至っても、安定しながらタイヤをきちんと使えている感じが伝わってきましたし、ウェットブレーキでも接地面積が広いことは有利に働いて制動距離も短く、その上でハンドル取られも少なく、安定感の高さはお見事という感じだったんですよね。

NANOENERGY M151 EVの試乗を行った竹岡 圭氏

とはいえ、本当に偏摩耗しないのか? と、ここだけは疑っていたんですけど(笑)、摩耗試験中のタイヤを拝見したところタイヤは均一にキレイに減っていました。この耐偏摩耗性については、パターン設計で偏摩耗の発生を抑え、新しいゴム配合によって減りにくさもきちんと考慮されているというのが実証されましたね。

今回参考出品された小型EVトラック専用スタッドレスタイヤ NANOENERGY M951 EV

ちなみに今年の秋には、小型EVトラック専用としては国内初登場となるスタッドレスタイヤ「ナノエナジーM951 EV」も発売されるとのこと。冬道で乗るのが今から楽しみになりました。

未来の運送業界へ提言するトーヨータイヤのソリューション

ジャパントラックショー会場で行われたトークショーは多くのユーザーが集まり盛り上がりを見せていた

さて、ジャパントラックショー2024で発表されたものは他にもありまして、その中で今後積極的に取り組んでいくものとして紹介されたのが、リトレッドタイヤです。リトレッドタイヤとは一次寿命が終了したタイヤ(台タイヤと呼びます)の接地部(トレッド部)に残っているゴムを削り取り、その上に新しいゴムを貼り替えることで再使用(リユース)できるように機能を甦らせたタイヤで、環境貢献に大きな役割を果たすものとなります。

注目を集めるリトレッドタイヤの工程を段階的に展示される

なんと、新品タイヤに比べて資源削減量は69%、生産時のCO2排出量は65%も低減できるということで、環境負荷低減対策としてはかなりのものなんです。無論安全第一で、台タイヤの点検は目では見えないところまでしっかり行われ、選抜された台タイヤだけがリトレッドされるということなので安心感があります。

竹岡 圭氏(左)とトーヨータイヤジャパン 企画本部 企画推進部 生産財担当部長 山田 俊光氏

続いて、人員不足が嘆かれる2024年問題に向けてタイヤメーカーができることとして、商用タイヤの定額プランについても紹介されました。年間に掛かるタイヤ関連費用を、均等にした月度支払にすることで、特に夏前と冬前に集中するタイヤ交換による経費集中を解消する他、メンテナンスについてもプランに含まれるというのがポイント。タイヤのメンテナンスはタイヤメーカーというプロに任せて、物流という本来のお仕事に人員を集約させることができるというのは、2024年問題の解決策のひとつになりそうですよね。

さらに「タイヤ空気圧・温度モニタリングシステム」の実証実験も行われています。空気圧や温度の異常をデータ通信により集中管理し、異変を見つけたらすぐさま連絡することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができるこの実証実験の内容が実用化されると、二次被害やそれに伴うダウンタイムの防止といった面でも大いに役に立ってくれることでしょう。

竹岡 圭氏(左)と技術開発本部 TBタイヤ開発部 パターン開発グループ リーダー 藤岡 剛史氏

EVトラックの増加といったクルマそのものも、2024年問題にまつわる働き方も、大きな変革期を迎えている物流業界ですが、タイヤの進化はもちろんのこと、タイヤメーカーとしてタイヤ作り以外にもできることを提案しているトーヨータイヤ。「すべての物流事業者に感謝を伝えるプロジェクト」という取り組みは、そんな姿勢の象徴と言えそうです。常日頃お世話になっている皆さまに、心から感謝を伝えたい、そんなジャパントラックショー2024トーヨータイヤブースからのご報告でした。

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