クルマに関する用語のなかには、うろ覚えのまま“何となく”使っているものが案外多い。普段からよく耳にはするけど、よくよく考えるとちゃんと説明できない……なんてクルマ用語、ありませんか?

文/井澤利昭、写真/トヨタ、Tesla, Inc.、日産、ホンダ、マツダ

■同じようで違うクルマのボディタイプ

メーカーが正式に認めているものではないが、国産車のなかで「サルーン」といえばやはりトヨタセンチュリーだろう。現行モデルの存在感ある大柄なボディや気品あふれるインテリアは、欧米の「サルーン」にも決して引けを取らない

 クルマの購入を検討している時、車種やメーカーとともに気になるのがクルマの外観や構造を表すボディタイプだ。自動車メーカー各社のカタログやウェブサイトを見ると、そのラインナップをボディタイプ別に分類しているところも多い。

 ボディタイプには「軽自動車」や「コンパクト」、「ミニバン」、「SUV」といった聞き慣れたものがある一方、クルマ系のニュースサイトや雑誌の記事などでは見かけるもののなかには具体的にはどんなクルマなのかがわからない用語もあったりする。

 例えば、「セダン」の一種である「サルーン」などは、いざ説明するとなると困ってしまう用語のひとつだ。

 最近では各社のカーラインナップから消えつつあるものの、古くからのクルマ好きには根強い人気を持つ「セダン」はご存じのとおり、客室と荷室、エンジンルームが各々独立してる4ドアのボディを持つクルマのこと。

 そのなかでも「サルーン」と呼ばれるモデルは、4ドア「セダン」の基本スタイルこそ変わらないものの、国内においてはより豪華で高級感のあるモデルを意味している。

 さらに、4ドアでありながら、かつては2ドアのクルマのことを指していた「クーペ」を名乗る「4ドアクーペ」なるものも最近では登場してきているのがなんともややこしいところ。こちらは4ドアでありながらルーフがより低くなだらかなフォルムが特徴で、欧州車を中心に展開されている。

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■オープン? カブリオレ? オープンカーはややこしい

マツダロードスターも2ドア2シーターモデル

 また、見た目には同じに思えてしまうにもかかわらず、さまざまな呼び方がされるのがオープンカーだ。「コンバーチブル」や「カブリオレ」、「スパイダー」、「ロードスター」など、同じメーカーでも車種によって名称が異なることもある。

 このうち「ロードスター」や「スパイダー」は、オープン専用に設計されたボディを持つ、2ドア2シーターのクルマを指すことが多い。

 言葉の意味するところは同じではあるが、「ロードスター」はイギリスやドイツ、「スパイダー」は主にイタリア車で使われている。同じクルマをベースとしながら、マツダ“ロードスター”とイタ車であるアバルト124“スパイダー”では車名が異なるのは、こうした理由からだ。

 一方、「コンバーチブル」や「カブリオレ」は屋根があるクルマをベースとした4人乗りのオープンカーのこと。屋根を閉じた状態が基本で、「コンバーチブル」はアメリカなどの英語圏、「カブリオレ」はフランスやドイツで主に使われている。

 なお、オープンカーは布やビニールなどをルーフの素材としている「ソフトトップ」と、金属や樹脂などの固い素材が使われる「ハードトップ」という2タイプに分かれるが、この「ハードトップ」という用語はBピラーを持たないクルマを示すこともあり、こちらも少々ややこしい。

■全部同じと思うなかれ、思った以上にいろいろな種類があるAT車

現在のほとんどのモデルは2ペダルのAT車となる

 国内を走るほとんどのクルマがAT車である現代。ところが、この「AT」や「オートマ」という用語の意味を、きちんと説明できる人は案外少ないのではないだろうか。

■ATとは?

 「AT」とはオートマチックトランスミッション(Automatic Transmission)の略で、エンジンから出力された駆動力をタイヤへと伝える変速機(トランスミッション)を文字どおり自動化したもの。MT(マニュアルトランスミッション)車のようなギアチェンジやクラッチ操作が必要ないため運転に集中でき、誰にでも変速時のショックがないスムーズな走りを可能としている。

 また、ひと口に「AT」といっても、いくつかの種類があるというのも知っておきたいポイント。なかでも最も一般的なのが「ステップAT」だ。

「トルクコンバーター」という流体と遊星歯車機構(プラネタリーギア)によってパワーを伝達する構造のため「トルコン式AT」とも言われる「ステップAT」は、1速、2速……というMT車と同じ段階的なギヤセットを持つのがその特徴。

 従来は3~5速が一般的だったが、近年では静寂性と燃費の向上を図るため多段化が進み、8速や9速のものも登場してきている。

■ATはCVTだけじゃない

 また、国内のコンパクトカーや軽自動車などでよく用いられている「AT」が「CVT」といわれるタイプだ。「CVT」(コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション)とは日本語で言うところの「無段変速機」のこと。

 向かい合ったふたつの可変プーリーをベルトでつなぐ構造で、連続的に無段階で変速比を変更することができるのがその特徴だ。

「CVT」は最適な減速比へと無段階で変速できるため、効率のいいエンジンの回転数を維持しやすく、燃費効率に優れるというメリットがある。

 これら以外にもMT車の変速機そのままに自動化した「AMT」(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)や、ふたつのクラッチを搭載することで「AMT」での変速時のタイムラグを短縮した「DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)」といったタイプもある。

 ひと口に「AT」といってもその種類はさまざま。それぞれのタイプの特徴まで知っておけば、クルマ好きからも一目置かれる……かもしれない!?

■何となく知っているけど説明しにくい!? トルクとパワーの違い

数ある市販車のなかでトルクが最も大きいのがベントレーミュルザンヌだ。6.8LのV8ツインターボエンジンが生み出す最大トルクは、カタログスペック上で104.0kgm/1750rpmにも及ぶ

 クルマ用語のなかには同じように扱われがちながら、実は意味合いが異なるというものがある。カタログの諸元表などにも記載されている「パワー(出力)」と「トルク」も、そんな用語ではないだろうか。

 このふたつの用語は、いずれもエンジンの性能を示す言葉ではあるが、それぞれの違いをわかりやすく説明するとなると案外難しいもの。

 まず「トルク」はエンジンが発生する回転力を示すもので、「kgm」という単位で表されることが多い。トルクをわかりやすく説明するのによく用いられる自転車を例にとると、ペダルを踏み込む力がトルクであり、これが大きいほど加速性能が高いといえる。

 いっぽうの「パワー」はトルクに回転数をかけたもので、単位には「ps」や「馬力」が用いられる。この値が大きいほどスピードが出やすくなるため、他の条件が同じであれば、クルマの最高速はパワーで決まることになる。

 ちなみに1馬力は馬一頭の力……ではなく、75㎏のおもりを1秒間に1m持ち上げる力を示しており、その単位である「ps」は、ドイツ語で馬の力を意味する「Pferdestarke」を略したものだ。

 なお、クルマ好きには昔からなじみのある「kgm」や「ps」、「馬力」といった単位は、国内ルールであるJIS表示を基本としているが、最近ではSI(国際単位系)に基づき、パワーを「kW」、トルクを「Nm」と表すことが一般的。自動車メーカー各社のカタログなどでは、両方が併記されていることが多い。

 クルマの話をする時には必ず必要となるさまざまな用語。その意味合いをよく知らずに使っているものがもしあるなら、一度きちんと調べておくと、後々恥をかかずにすむかもしれない。

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