2012年6月にキャラバンシリーズとしては通算5代目となるフルモデルチェンジを果たした日産の商用バン NV350キャラバン。同年12月には待望のワイド&スーパーロングボディが追加。その実力と活用術を指南!(本稿は「ベストカー」2013年1月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏
■コイツの広さにゃおっタマゲ!
NV350キャラバンにも待望のワイド&スーパーロングボディが追加された。これでハイエースとガチで勝負できるというモノ。ボディサイズを見ると「すばらしい!」のひとこと。なんたって全長5230mm×全幅1880mmである! オトコのクルマとしちゃ最高でございましょう。ということでまず試乗といきたい。
Dレンジをセレクトしてアクセル踏むと、「ぐぉ~っ!」っとエンジンがウナり、129psしかない2.5Lディーゼルと思えないほど元気よく走り出す。
少なくとも空荷ならまったく不満なし! さすがにデカさを感じさせるものの、考えてみればロールスロイスと同じくらいのサイズ。気合いさえ入れればなんとかなりそうだ。
普段走っている道を試乗してみたけれど、躊躇するようなことはなかった。ハンドルがけっこう切れるし、ホイールベースだって3mを切っている。
毎日の買い物用として使おうとは思わないけれど、休日の相棒ならまったく問題ないと思う。
というより大きなクルマを運転するのって、積極的に楽しい。ハンドル握っているだけでワクワクするから不思議。
もちろんその気になれば100km/h巡航できるし、乗用車の普通の流れに混じってワインディングロードを走ることも容易。
ウルサイだろうと予想した車内騒音だって充分会話ができるレベル。気になる燃費は街中だと7~8km/L。高速道路を80km/h前後で走れば12km/Lといったイメージ。
ガソリンより20%近く安い軽油を使うため、大雑把なランニングコストは2L級のミニバンといった程度です。
いろんな意味で普通の人がマイカーとして使える資質を持っていると考える。
いっぽう、使い方は無限大だ。
例えば「なんちゃってキャンピングカー」。
バックドアを開けてみたら、見た感じで3畳ぶんくらいのフラットなスペースがある。試しに家庭用のコタツを持ち込むと、余裕のよっちゃん!
写真のように配置すれば、大人4人で座れてしまう。鍋など持ち込むだけで宴会部屋になっちゃいますね。
コタツだけだと前方にスペースを残すので、ここにTVや電子レンジなんか置いたっていい。食材や飲み物を積むスペースだってある。眠くなったら4人で沈没することも可能。
床がフラットだからフトン敷いて寝てみた。
写真はシングルサイズながら、小さい子供ならダブルサイズのフトンで親子4人で寝られます。
日曜大工で家具など作り、自作のキャンピングカーなんか面白いと思う。とにかく3畳+αくらいのサイズがある(さすがに身長180cmだと立ち上がっては歩けない)。
携帯発電機を積んでおくと、暖房や前述の電子レンジを稼働させられます。キャンピングカーを買うとなれば高いが、自作なら手軽。こいつを手に入れたら毎週末は大工ごっこで遊ぶことになりそうですね~。
趣味のある人であれば「遊びの基地」にしたっていい。
釣り好きは車内にすべての釣り道具を収納しておくだけのスペースがあるので、どんな釣りだってできてしまう。
もちろん前夜に釣り場に乗り込んで爆釣の夢が見られる。イベント観戦好きなら宿の予約の心配をしなくていい。自転車2台+スペアパーツ満載という楽しみ方も。
そうそう。唯一注意してほしいのが2285mmという全高のみ。]
ファミレスなど普通の駐車スペースは案外2100mmで一杯という場所も多い。アタマをブツけたらお金かかります。
■最大のライバルにして難敵のトヨタハイエースの牙城を切り崩すことはできたのか?
ガチのライバルとなるハイエースのスーパーロング&ワイドと比べたらどうか?
私も初めて書くバイヤーズガイドなので、真剣にいきたい。
ちなみに先号で「マニュアルミッションがあったらいいクルマ」にNV350キャラバンを挙げた。
そしたら読者から「マニュアルあるぞ!」というご指摘をいただいた。
確かにロングボディならマニュアル選べるものの、私が欲しいスーパーロングにゃ設定なし。といった細かいことまで誤解されないよう、キッチリ分析します。
まず価格。スーパーロング&ワイドボディはベーシックグレード『DX』同士ならNV350キャラバン280万9800円のハイエース280万2000円で互角。
搭載されるエンジンはNV350キャラバン2.5L、129ps+5速AT。ハイエースは3L、144ps+4速ATで、最高出力だけ見たらハイエース優勢。
しかしトルクは36.3kgm対30.6kgmとNV350キャラバンのほうが優位。
実際に乗り比べたら、トルクが大きく5速ATを採用しているだけあり、軽快に走ってくれます。実用燃費だっていい。サスペンションもNV350キャラバンに軍配を上げておく。
ハイエースの足回り、購入したら真っ先に交換したくなるくらい硬い。いや正確に言えば「動かない」のだ。リアサスなんか右と左でダンパーの取り付け位置が違うほど。
ハイエースの足回りじゃ超有名な『サンコーワークス』(ネオチューンでも知られている)の喜多見さんに聞いてみたら「モディファイしたらまったく別のクルマになるほどノーマルは厳しいです」。
韓国ザックスのダンパー使うNV350キャラバンならノーマル状態で乗れる。乗り比べたら誰だって即座にわかるくらいハイエースの乗り心地は酷い。ハイエースを買って納得できる乗り心地にしようとすれば10万円かかる。
ボディ同色バンパーなど乗用車風の外観持つモデルを選ぼうとすると、NV350キャラバンは『クロムギアパッケージ』となり312万4800円。
片やハイエースの同様ボディだと、同じく『GLパッケージ』が289万4000円。
アルミホイールや革巻きハンドルまで装備するNV350キャラバンに対し、ハイエースはバンパーやホイールキャップなど最小限の装備に抑えているからだ。
キャビンスペースはイーブン。どちらも全長3m×全幅1.7m程度と、軽自動車ならカンペキに飲み込む。
子細にチェックしてみたが、ホイールアーチの出っ張り具合や使い勝手など大差なし。
簡易式リアシートの形状や座り心地は引き分け。ハイエースの基本設計が優れているため、後発のNV350キャラバンといえども勝てない。強いて言えばNV350キャラバンのほうが凝っている。
このタイプのクルマで重要なことを忘れちゃイケナイ。ハイエースだと超豊富なモディファイ(手直し)のアイテムを選べる。
それこそ走り屋御用達のローダウンサスペンションから、派手なエアロキット、はたまた正統派のためのキャンピングカー用改造パーツを含め選び放題。
ハイエースだけのイベントや雑誌まであるほど。歴史の浅いモディファイキャラバンは、選べるパーツが10分の1程度しかない。
例えば寝るためのベッドのキットを探すと、6万円くらいから選べる。折り畳んで収納できるタイプなど、現時点でおよそ50製品!
ショックアブソーバーもビルシュタインからモンロー、車高調整式までさまざま。御予算が限られているなら中古パーツすら簡単に買えちゃう。ハイエースのモディファイ部品だけ見ていても飽きないくらい。これまたハイエースの大きな魅力になってます。
国沢光宏ならどうする? この2車種、私は14人乗り(中型免許以上が必要)を選ぶ。
その場合、圧倒的に魅力的なのがNV350キャラバンだ。価格はまったく同じ332万200円!
だったらトルクのあるエンジン+5速ATを搭載し、足回りも改良しないですむという有利さを評価します。さて、購入にあたり最大の問題になるの、何に使うかだ。
今の私だと使うアテなし。大家族なら迷うことなく買うのに!
(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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