2023年の登録車販売台数ランキングにおいて、トヨタ「シエンタ」が3位(約13.2万台)、ホンダ「フリード」が10位(約7.7万台)となるなど、バカ売れ中の5ナンバーミニバン。現状この2台だけで、セレナを擁する日産にも、このカテゴリーに食い込んでほしいところ。はたして、日産がコンパクトミニバンをつくる可能性はあるのか、あるとしたらどのようなモデルになるのか。期待を込めて予想してみよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:池之平昌信、NISSAN
■実はコンパクトミニバンの歴史はどのメーカーよりも長い日産
実は日産には、「コンパクトミニバン」というカテゴリーが確立される前から、乗用車タイプのミニバンがあった。1982年に登場し2004年まで3世代に渡って販売されていた「プレーリー」(2代目途中では「プレーリージョイ」、3代目は「プレーリーリバティ」、さらに3代目途中には「リバティ」に改称)やその後継モデルである2004年登場の「ラフェスタ」だ(2011年登場の2代目ラフェスタはマツダ「プレマシー」のOEMとなった)。
プレーリーは、センターピラーレス構造、後席スライドドア、3列シートの高効率パッケージングなど、当時としては画期的なアイディアが魅力のモデルだったが、これらのアイディアは、当時の技術では適切な動力性能との両立が難しく、また、デザインがお世辞にもスタイリッシュとはいえないなどネガティブな要素も少なくなく、プレーリーは販売面では苦戦を強いられた。
日産といえば、1998年に登場した「キューブ」もあった。3世代にわたって生産されたものの、2020年に惜しまれつつ生産終了となってしまったキューブには、2代目キューブ登場の翌年である2003年に3列シート7人乗りの「キューブキュービック」が設定されていた。
スライドドアこそ備えていなかったものの、当時、初代シエンタ(2003年登場)やフリードの前身であるモビリオ(2001年登場)としのぎを削っており、初代シエンタ登場翌年となる2004年の販売台数は、キューブが約13.8万台、シエンタが約6.7万台、モビリオが約5.6万台と、キューブ全体では、これらを大きく突き放していた。
このように日産は5ナンバーサイズで多人数乗車モデル、広い室内空間といういわば元祖的なモデルをつくり、ノウハウも十分持っている。見本とすべき現行シエンタや新型フリードもあり、大ヒット中のセレナで「売れるミニバン」に必要な要素は熟知してはずだ。いまの日産ならば、シエンタやフリードにも劣らない、非常に魅力的なコンパクトミニバンをつくることは難しくないだろう。
セレナの中古車をもっと見る ≫■「The Arc」に登場したシルエットは、匂わせか!??
実は日産は、新型のコンパクトミニバンについて、日産自ら、その登場について匂わせる発表をしている。日産が2024年3月に発表した経営計画「The Arc」の中で、2026年までに登場させる予定の新型車についてアナウンスしたが、その際、今後登場予定とみられる新型車のシルエットが走行するイメージ動画も公開され、その中には、コンパクトミニバンのようなシルエットのモデルがあったのだ。
このイメージ動画には日本で展開されていないモデルも含まれるため、必ずしもそのミニバンが日本で登場するとは限らないかもしれないが、サイズ感からいって日本で人気のカテゴリーなだけに期待は高まる。シルエットからは、ルーフレールが載ったややSUVテイストのミニバンであるようにみえ、イメージとしてはデリカD:5や新型フリードクロスターをさらに先進感のあるデザインにした雰囲気だろうか。
■セレナでの成功を活かし、ぜひ登場を!!
セレナが支持されるもっとも大きな理由は、「走りの良さ」だろう。筆者も新型セレナに数日間試乗する機会があったが、ミニバンらしからぬ走りの良さ、乗り心地の良さに驚いた。ミニバンならではの室内空間の広さやユーティリティの豊富さは当然ながら、e-POWERの走り、足回りのセッティング、燃費の良さ、先進性を感じさせるデザインなど、日産の隙のないつくり込みが高評価を得ているのだと思う。
そしてこの知見はコンパクトミニバンにも存分に生かすことができると思う。前述のイメージ動画に登場するシルエットではややSUVテイストであるようだが、サイズの制約があるカテゴリーではそのほうがマルチパーパス感を打ち出しやすく、実用性の高いイメージをつくりやすいかもしれない。はたして、日産のコンパクトミニバンは復活するのか!?? 今度の動向に注目だ。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。