取り巻く環境はとてつもない早さで変化している昨今。電動化などがその話題の中心となりがちだが、セキュリティ対策もその一つだ。継続販売の課題として近年取り上げられることが多いのがサイバーセキュリティ法への対策だ。一体自動車にどんな変化が求められているのだろうか?

文:西川昇吾、写真:Adobe Stock(トップ画像=Aliaksandr Marko@Adobe Stock)

■サイバーセキュリティ法に対応とは?

近年は新型車の話題となると「コネクテッド」といったワードが出てくることが多いが、外部からの電子的な攻撃に備えなければならない( Open Studio@Adobe Stock)

 簡単に現行車に対して、新たに対応が必要となった部分をいえば「サイバーセキュリティに関する新たな国際標準規格に適合しなければいけなくなった」ということだ。これはUN-R155自動車サイバーセキュリティ法規という法規が、国際連合欧州経済委員会によって2022年1月に施行されたからだ。

 2022年7月以降に販売される一部の車両から順にこの法規に対応が必要となった。無線通信でソフトウェアを更新するOTA(Over The Air)に対応している当時の新型車から規制が開始された。

 しかし、2024年1月から規制対象は拡大され、OTA非対応の新型車も対象となった。また、2026年5月には規制対象が継続生産車にも拡大される予定だ。なのでこれからも継続生産をしたいのであれば、サイバーセキュリティ対応を施したマイナーチェンジが必要となる。

 この対応をしていない場合、販売するための認可が得られなくなってしまうのだ。

■なぜ対応が求められるように?

 対応しなければいけないというのは分かるが、具体的に何がこれまでのクルマと異なるのだろうか?

 このサイバーセキュリティ法の目的を具体例に分かりやすく例えると、運転中にハッキングにより操作不能になることを防ぐといったところだ。キッカケは2015年にジープチェロキーが遠隔ハッキングの可能性が指摘され、140万台のリコールに踏み切ったことにある。

 近年は新型車の話題となると「コネクテッド」といったワードが出てくることが多いが、繋がる時代のクルマだからこそ、外部からの電子的な攻撃に備えなければいけないということなのだ。

■チューニングはより難しくなる?

チューニング業界ではお馴染みのメニューとも言えるエンジンコンピューターの書き換えやリセッティングのハードルがとても高くなるだろう(wutzkoh@Adobe Stock)

 一般的なユーザーにとっては、通常通りの使用をする場合あまり影響がないとも言えるサイバーセキュリティ法への対策だが、ディーラー以外の一般的な整備工場では対応がより難しくなるといった可能性も考えられる。

 また、チューニング業界ではお馴染みのメニューとも言えるエンジンコンピューターの書き換えやリセッティングのハードルがとても高くなるだろう。もしかしたらリミッターカットも難しくなるかもしれない。

 過給機を追加することでのパワーアップなどは、コンピューターチューニングが必須ともいえる。それが難しくなることを考えると、よりパワーチューニングへのハードルは高くなることだろう。

 自動車の進化と共に法規も進化しなければいけない。このような変化が自動車全体にどのような影響があるのかもユーザーにとっては大事件になる可能性があるのだ。

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