国内の主要自動車メーカー9社のインテリアデザイナーが集結した団体であるJAID(Japan Automotive Interior Designers)とアパレルの株式会社ワールドは、6月22日、ワールド北青山ビルにて異色のファッションショー&ミートアップパーティー「HORUMON NIGHT」を開催した。
イベントのメインコンテンツは廃材を使ったファッションショー。「HORUMON NIGHT」は“ホルモン=放るもん”から命名された。たとえば自動車の生産や廃車時に出てしまうシートやエアバッグを活用して仕立てたデザインのほか、ワールドグループのユーズドセレクトショップ「ラグタグ」の倉庫からピックアップした服をアップサイクルで仕立てるなど、資材の特性も活かした既成概念にとらわれない作品の数々が披露された。
JAIDは、国内の主要自動車メーカー9社のインテリアデザイナー、CMF(COLOR、MATERIAL、FINISH)デザイナーが集結した企業の枠を超えた新しい自動車の内装デザインを追求する団体。このJAIDと、アパレル業界での豊富な経験を持つワールドがコラボレーションしたのが今回のイベントである。JAIDのうち今回は、ダイハツ工業、本田技術研究所、いすゞ自動車、日産自動車、トヨタ自動車、トヨタ車体、トヨタ紡織が名を連ねた。
ワールド北青山ビルの1階ホールをすべて利用して中央にランウェイをつくり両側に客席を配置(ちなみに3500円の有料席はすべて売り切れ、異色のコラボへの関心の高さが伺われた)、ファッションショーは各社7分程度の持ち時間を、JAIDのメンバーを中心に一部プロモデルや文化学園大学の学生もモデルとして、音楽や映像とともに世界観を表現した。
トップバッターのトヨタ紡織は、「カケラノダウン」と「カフツナグフク」をテーマに、自動車のシート生産時に廃棄された素材を使用し、裁断端材の欠片を詰め込んだダウンジャケットや、自動車シートカバーをつないで作った服を披露。
次にダイハツが登場、「PVC Raincoat」として、使わなくなったアナログレコードを粉砕しPVCとして再生、アップサイクルし野外音楽フェスで使うレインコートとしてユニークなシルエットを映し出した。
トヨタ車体は、「KIMOCHI BOOSTER」として、着ている人の感情を反映し色と体格が変わるウェアを発表。自動車部品の工場から出る端材と最先端テクノロジーを組み合わせた作品。
大型3DプリンターメーカーのEXTRABOLDからは、「SAAYA 2024コレクション」をテーマに、デジタル領域で起こるバグや破綻を3Dプリンティング技術で再構築したファッションを披露。
トヨタ自動車からは、「TOYOTA カルテット」として、製造過程で捨てられる樹脂や木材の端材、皮の部分を使って楽器を作り、異素材のコンビネーションを提案した。
いすゞとホンダは共同で「親子ツナギ」シリーズを表現。安心・安全のイメージのISUZUと走りのイメージのHONDAがコラボし、ユーズドセレクトショップ「ラグタグ」の古着や自動車廃材を使って作った親子用のツナギを発表した。モデルはすべてJAIDメンバーの親子たち。
最後を飾る日産からは、「セレブトン」として、廃棄される自動車のエアバッグやファブリックを使い、布団から出たくないズボラ女子向けの「最強に意情で最高に優雅」なセレブツナギをキメた。
今回のイベントを実現した、JAIDメンバーでトヨタ自動車ビジョンデザイン部長の中嶋孝之さんによると「JAIDの活動は、モビリティショーなどの作品について各社で意見交換するなど会社を越えて刺激を与え合うことも多い。一方で、AGCとの共同イベントなど、メンバー外の異業種とのコラボも積極的に行っている」とのこと。このファッションショーの企画は、3年ほど前のワールドの高橋啓介さんと「なにかやりたいね」という雑談からはじまったという。例えば、ダイハツのデザイナー青山尚史さんはトヨタ車体の「KIMOCHI BOOSTER」にデザインやモデルとして登場するな、どJAIDメンバーは企業の枠にとらわれず、異文化に触れることで多くを吸収している。
クルマの進化が著しく、EVの部屋としての付加価値や将来の自動運転車での移動中の過ごし方など、インテリアデザイナーの発想の拡張がクルマの付加価値の鍵を握っている。内にこもらず、外に刺激を求めるデザイナー集団は頼もしい限りだ。
コミュニケーションや異業種からの刺激が尖った発想につながったファッションショーのあとは、盛り上がりの余韻をそのままに「HORUMON NIGHT」の夜は後半のミートアップパーティの宴に続いてゆくのだった。
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