先日都内某所で、国内で販売されている(もしくは近々導入予定の)バッテリーEVに触れることができるイベントが開催されていた。レクサスなどの国内メーカーのほか、BYDやヒョンデ、BMWやテスラやなど、さまざまなクルマが並べられているなかで、筆者がもっとも日本に適していると感じたのが、ボルボ「EX30」であった。
価格は税込559万円(24年度の補助金45万円加味せず)と、ガソリン車と比べると決して安いクルマではないが、とにかくすべてが「ちょうどいい」のだ。
文:吉川賢一
写真:VOLVO、エムスリープロダクション
新世代のBEV専用プラットフォームでコンパクトかつリーズナブルを実現
2023年6月に世界初公開となった、ボルボ「EX30」。ボルボにはこれまでにも、エンジン車をベースにしたC40リチャージ(税込679万円~)、XC40リチャージ(税込699万円~)といったBEVがあったが、新型のEX30では新世代のBEV専用プラットフォームを採用することで既存のBEVよりも小さく、リーズナブルなコンパクトSUVに仕上げた。
ボルボは、2030年までに販売するすべての新車をBEVにすることを表明している。なかでも、日本仕向けを担当するボルボカージャパンの目標は、「2025年に国内で1万台以上のBEVの販売」だ。そのなかでもっとも重要な役割を担うのがこのEX30だ。
日本向けのEX30は、バッテリー容量69kwhサイズの高効率NMCバッテリーを搭載し、1充電あたりの航続距離は最大で480km(欧州参考値)。充電電力量は最大で153kWhまで可能で、仮にこのスペックで充電した場合、10%から26分強で80%にまで充電可能だとボルボは説明している。航続距離も及第点だし、充電速度も文句なく速い(対応する急速充電器があればだが)。
またEX30は、サステナビリティにも配慮した設計がなされており、ボディの小型化によって製造に必要な素材を減らしたうえで、CO2排出の最大要因であるアルミとスチールの使用量を削減。製造に使用される全アルミニウムの約25%、全スチールの約17%、全プラスチックの約17%がリサイクル素材であり、実車に触れてみると、例えばフロントドア内張りは再生樹脂っぽさが感じられる簡素な質感だったりもする。
それでいて、12.3インチの縦型センタースクリーンには、Google搭載のハンズフリー支援やナビゲーション、Google Playといったアプリが組み込まれており、ワイヤレスのApple CarPlay機能も搭載するなど、需要の高い部分にはコストをしっかりとかけている。ボルボの顧客が興味をそそられる攻め所と守り所を考え尽くしているようだ。
全長のわりにロングホイールベースで後席が広い!!
筆者が、EX30が日本向けにピッタリだと感じる最大の理由は、EX30の「絶妙なサイズ感」だ。日本では、全長4500mmを超えるクルマだと気を遣う部類に入るが、ヤリスクロス(全長4200mm)よりも長く、ヴェゼル(4295mm)よりは短いEX30の全長4233mmというサイズ感は、絶妙に使いやすいトコロにある。それでいて、ホイールベースは2650mmと、全長が200mmも長いXC40と、ホイールベースは50mmしか変わらない。全長のわりに後席スペースが広いロングホイールベースなのだ。
ロングホイールベースがもたらす後席の広さはなかなかのもので、使い勝手もよい。また全面ガラスルーフとなる車内は、非常に明るくて開放的。さらには最小回転半径5.4mと、ボルボ車の中ではひと際小さく、狭い駐車場でも心に余裕が生まれる。
日産アリアやリーフ、トヨタbZ4X、といった国産BEVは、使い勝手がいいとされるCセグメントクラスを目指すため、4500mm前後のサイズとなりがちだが、その考え方はファーストカーとして使う場合に当てはまるものだ。現時点のBEVは、セカンドカーorサードカーとしての使い方でなければ、メリットよりも不便さが勝ってしまうと筆者は考えており、そう考えると、たとえば、全長4290mmのBYDドルフィン(税込363万円)や、全長3630mm のフィアット500e(税込553万円)など、Bセグメント(全長4200mm前後)以下のモデルが、今後売れ筋になっていくのだろうと思う。
これこそがBEVの最適解だ!!
ゼイタクをいえば、あと少し補助金が増え、総額500万円切りができれば嬉しいところだが、それでもボルボのラインアップの中では最安だし、安すぎないほうがボルボのブランドバリューを高めることに繋がるはずだ。
絶妙なサイズとデザイン、バッテリー等の必要十分なスペック、そしてサステナブルな心意気が揃ったコンパクトBEVであるEX30は、待ち望んでいたBEVの姿に近いものがあった。
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