「お金はないけどウデはある」。そんな言葉がぴったりの全日本ラリー王者の新井大輝(ヒロキ)選手。ベストカーWebとしても彼の頑張りは全方位的に応援しまくっておりますが、なんとラリーカムイで全ステージベストで総合優勝。マシンが元気なら負ける要因はゼロなんじゃないか?

文/写真:新井大輝

■総合優勝でぶっちぎりでも難しいラリーだったぜ

新井選手がぶっちぎり優勝。順風満帆に見えるも実は隠れた苦悩あり?

 すでにご存知の通り、ラリーのサービスパークがあるニセコ町までの道中は色々ありすぎましたが、ラリーは思ったより良い結果で終えることができました。

 事前に乗るはずだった船とアストロのヘッド車はDNF(do not finish)でしたが、全日本ラリー選手権の方は全ステージベストで人生初の完封勝利を達成することができました。

 これも皆さんの応援のおかげです! ありがとうございます!

北海道らしからぬ梅雨空が続いた

 思い返してみるとこの2日間は北海道らしくない梅雨のような、降ったり止んだりの中途半端な天候でいつものグラベルイベントに比べるとかなり難しいラリーだった気がしなくもないです。いかんせん5年ぶりのグラベルイベントなので、雨が降っていなくても難しいラリーでしたとか書いていそうな気がします。

 このやる気を削がれるような憂鬱な天気はイギリスに住んでいた頃を思い出させてくれました。そりゃレベルの高い皮肉な言い回しが言えるような国民性になるのも頷けます。(筆者はイギリスが大好きですよ)

 道中はもちろんのこと、リザルトだけ見ればノートラブルで順風満帆のように見えるかもしれませんが、実際は「山(谷)あり谷あり」の満身創痍のイベントだったりしました。

■安価なフィットでのレッキもなかなか……

金銭的な余裕はなく、無駄な出費はしない

 まず初めにレッキ(コースの下見)ですけども今回は貧乏に更に拍車が掛かっているアライさんですので、レンタカーは一番車格の小さくて安価なフィットを借りました。木曜日からの4日間のレンタルで1万7150円としがない(サ)ラリーマンには嬉しい良心価格です。

 ニセコまでの道中はリッター20km/L超えて乗り心地もそこそこで良い車だなと思ったのですが、いざレッキがはじまると砂利の上では最高時速が30km/hぐらいで、林道の砂利が抵抗になってスピードが出ませんでした。また、登り坂になると速度は更に鬼のように遅くなりこの世の終わりのようなスピードです。

サービスでは泥まみれのマシンのメンテが進む

 道も狭いので後続車両に譲ることもできず、中には痺れを切らしてクラクションで“邪魔だ”とストレートに気持ちをぶつけてくれる方もいてくださりご迷惑をおかけしてしまいました。ごめんなさい。今度からはこの反省を生かしもう少しレンタカー代を奮発して四駆のSUVを借りたいと思います。

 そんなこんなで本番当日になり、アライさんは何故か緊張していました。

 何故こんなにも緊張しているのかと心の中のリトルアライさんに自問自答をしてみるとグラベルの林道でSKODA R5を走らせることが初めだし、R5規定のマシンは5年ぶりだからしょうがないんじゃないか? と言われました。

■経験豊富なアライさんのなぞの緊張

経験豊富な新井選手もさすがに緊張したという

 別にコドラに話したから緊張がほぐれるわけでもないのに、ステージスタート直前に横に座っている松尾君(初グラベル)に「緊張する、、どうしよう、、やばい、、トイレ行きたい(語彙力)」と言い続けており、そもそもグラベル経験ゼロのコドラにアドバイスを貰うというよくわからない状況になっていました。

 結果的には事前セットアップ(ワイパーブレード修理)がバッチリと噛み合い、撥水効果も相まって総合首位のままリードを広げることができたのは良い誤算でした。もしワイパーが動かずにニセコ入りしていたら何秒ロスしていたのか、想像するだけでも身の毛がよだちます。

 しかし順調だったのも束の間、最終日は最終セクションで絶対に避けたかったメカニカルトラブルが発生、SS9~12でまたしてもハンドブレーキの故障と今回はローンチコントロールボタンの断線を併発しました。

 最終SSを走り切ってからのロードセクションで完全に断線症状になったので結果的にはタイムを失わずにすみましたが、生きた心地がしませんでしたね。あわや万事休すです。何はともあれ今回のラリーは波乱万丈で色々ありはしましたが、

総合的にみるとレッキの速度は遅くてもラリーは総合優勝できるようです。

(筆者はイギリスが大好きですよ)

 冗談はさておき、全日本ラリー選手権は泣いても笑っても残り2戦です。かの戦国大名の北条氏綱が言った「勝って兜の緒を締めよ」という言葉があるように勝利に驕らず、常に緊張感を持って努力し続けることが重要なのかもしれません。

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