サーキットでのスポーツ走行では依然圧倒的にマニュアル車が多い。だが、最近はオートマのスポーツカーも増えている。それらでスポーツ走行はできるのだろうか? 現代のオートマはかなり進化していてスポーツ走行可能な性能も有するものも多いのだ。
◆ATでも機敏にシフトチェンジ!想像以上にスポーツ走行が楽しめる仕上がりとなる
オートマといえばスポーツ走行には不向きとされていた。シフトチェンジには時間が掛かるし、思ったようにシフトダウンしてくれなくて、加速しようと思ったらギアは勝手に上がってしまい、アクセルを踏んでからキックダウンしてやっと加速に移れる。そんなオートマも多かった。
だが、最近ではスポーツ対応のオートマも増えている。トヨタ『GR 86』/スバル『BRZ』に使われている6速ATはかなり優秀で、普通に加速するとMT車よりも速いくらいシフトアップが速い。シフトダウンもレスポンス良く作動してくれて違和感がない。
唯一残念なのが、シフトダウンしたあとにエンジン回転数が高回転になるときにパドルシフトによるシフトダウンの指示が勝手にキャンセルされてしまうことがある。
しかし、これは対策品が発売されている。オートプロデュースボスで売られているオートマティックダウンシフターを使えば、シフトダウンの予約指示を入れられる。シフトダウンのパドルを3回操作しておけば、速度に合わせてギアが3回落ちてくれる。コーナー進入時にシフトダウンレバーを何度か操作しておけば、適切なギアに落とすことができるのだ。
このシフトダウン予約機能は外車のスポーツカーには標準装備なこともある。そもそも、オートマでスポーツというとまだまだ難しいように感じるがレースの世界ではマニュアルミッションは数少ない。
SUPER GTは500クラス、300クラスともに全車が発進と停止時以外は2ペダル操作。F1ももちろん同じく2ペダル。世界的なレーシングカーの規格であるGT3やGT4もいずれも2ペダルなのだ。
そして、日本が誇るスポーツカーである日産『GT-R』も2ペダルだ。こちらはオートマというよりはマニュアルミッションをツインクラッチで使っているが、2ペダルドライブでスポーツ走行まで十分に対応している。
2007年に登場してから基本的な構造は変わらず、サーキット走行を楽しめることは2007年当時としては相当革新的システムであったことは間違いない。残念ながら生産終了となっているが三菱『ランサーエボリューションX』も同様の機構で本格的なスポーツ走行にも対応していた。
◆AT車でスポーツ走行、問題になるのがLSDなのだが…
現在スポーツ走行できるオートマが増えているのは間違いないが問題になのはLSD。リミテッドスリップデファレンシャルの略である。このLSDはスポーツ走行には欠かせない。
ディファレンシャル機構のみだとスポーツ走行時にイン側のタイヤが空転してしまったとき、駆動力が全てイン側のタイヤに伝わってしまう。そこでLSDを装着することで左右のタイヤに均等に駆動力を配分することで、スポーツ走行時にも効率よく加速することができる。
このLSDだが、リア駆動車は装着が比較的簡単。マニュアルミッション車と変わらずリアデフを交換するだけ。 ところがフロント駆動車となると大きな問題が起きる。FFのオートマ車はミッションの内部にデファレンシャルが存在している。そこにLSDを装着すると、LSD内部のプレートが摩耗し、金属粉がオートマ全体に回ることがありトラブルの原因となるとされていた。ところが最近FF車のオートマミッションに対応したLSDが開発され市販されている。
近年のオートマは性能的には十分で、LSDがないことからスポーツ走行には適さなかったが、LSDが発売され始めているので、十分にオートマ車でもサーキット走行を楽しめるようになったのだ。
LSDなどを発売しているATSでは得意とするカーボンプレートを使ったLSDを開発してCVTミッションに対応し、CVT車でスポーツ走行ができるようになっている。また気になる寿命だが、テストの結果全く問題がないという。
また一概には言えないが、86/BRZは特にマニュアルミッションよりもオートマチックミッションの方がパワーに対する許容度が大きい。マニュアルミッションは250ps程度でもトラブルが起きることがあるが、オートマは350psでも大丈夫。意外とオートマの方が許容馬力が大きく、過給器チューンなど大幅なパワーアップに組み合わせたときにトラブルが少ないことがある。ついに市販車でもオートマでスポーツできる時代が来ているのだ。
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