1976年に初代が登場して以来、2024年で48年目、11代を数える由緒正しいセダン、ホンダ アコード。流行に惑わされず「いつものセダンの姿」で登場してテリー伊藤氏を喜ばせたが、そのテリーさんが気になった「アコードに足りない部分」とは!?
※本稿は2024年6月のものです
文:テリー伊藤/写真:茂呂幸正、ホンダ
初出:『ベストカー』2024年7月26日号
■「オールドマネー」の匂いがするセダン
11代目だそうである。1976年に初代が登場して以来、今年で48年目。老舗と呼べるのは100年以上の歴史を持つお店という説もあるが(明確な定義はない)、クルマで48年の歴史は立派なものだ。
ホンダ アコードの話である。11代目の最新モデルは2024年3月に発売開始。2Lハイブリッドのe:HEVワングレードで、価格は544万9400円だ。
50代以上のクルマ好きならアコードをよく知っているし、なじみ深いとも思うが、若い世代は「アコードの新型が出た」と聞いてもピンとこないのではないだろうか。しかも人気のないセダンだから、なおさらである。
しかし、だからと言って、安易にクロスオーバーやSUVに生まれ変わる必要はないと思う。アコードが黒いオーバーフェンダーを付けただけの「なんちゃってSUV」になってしまうなんて、あってはならない。新型が気負うことなく「いつものセダン」で登場したのは嬉しいことなのだ。
新型アコードは、この気負いのなさがいいところだ。「主張しすぎない」と言い換えてもいいだろう。最近のクルマはどれも主張が激しいが、アコードにはそういう感じがあまりない。だからセンスのいい人が作ったクルマという印象を抱かせる。
ニューマネーとオールドマネーという言葉をご存知だろうか?
ニューマネーは一代で富を築き上げた若い富裕層、オールドマネーは数世代に渡って富を引き継いでいる昔からの資産家というイメージで、ニューマネーは派手なバレンチノ、グッチを好み、都心のタワーマンションの上層階に住む。オールドマネーはラルフローレンを好み、落ち着いた豪邸に住む。
対照的なお金持ちというわけだが、アコードはオールドマネーの匂いがする。クルマに詳しく、自分が買うクルマに対してポリシーのある人が好むイメージだ。いっときの流行に踊らされない芯の強さと品がある。
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■アコードにある決定的な弱点
安易にSUVやクロスオーバーに変わらなかったのはよかったのだが、もう少し華やかさが欲しいのも事実だ。特にインテリアカラーがブラックしかないのは残念。インテリアのデザイン自体はいいのだから、もっと明るい色を選べるようにしてほしいところだ。
走りは文句なしの出来だった。スムーズだしパワーもあるし、いかにも長距離ドライブが得意そうなタイプ。今回の取材での実用燃費も20km/Lを超えていたのだから言うことなしである。
どうやら私は、新型アコードと肌が合うようだ。ここまで述べてきたとおり、アコードのいろんなところが肯定的に受け取れる。
しかし、このクルマの決定的な弱点もわかっている。まず女性に受けないこと、そして、説明しないと魅力が伝わりにくいことである。
どちらも「本能に訴えかけてこない」ということだ。誰しも理屈よりも本能でモノを選びがちだし、本能に訴えないから説明しないと魅力が伝わらない。
品がよくて都会的という魅力はあるのだが、多少高くても、無理してでも買いたい! というような熱い気持ちになりにくいのだ。競合車と細かく比較して、冷静に選ぶというイメージ。約545万円の高級車なのに、大衆車のような買い方になるのは夢がない。
私がもし購入したら、シャンパンゴールドのボディカラーに明るい内装色、それにリボンタイヤなどで雰囲気を変えるだろう。色味を変えるだけで華やかさが増すはず。アコードは基本的にオシャレなデザインのクルマだからで、それは大きな武器なのである。
●ホンダ アコードe:HEV 544万9400円(CVT)
タイで生産される11代目アコード。全長4975×全幅1860×全高1450mm、ホイールベース2830mm、車重1580kgで、147psの直4、2Lエンジンと184psのモーターを搭載するe:HEVを搭載。
駆動方式はFFでWLTCモードは23.8km/L。5基のミリ波レーダー、12基のソナーセンサーで構成するホンダセンシング360を国内モデルで初めて搭載している。
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