2024年7月31日、国土交通省は、先般からトヨタ自動車へ実施していた認証不正問題に関する立入り検査の結果を報告した。それによると、(1)先般よりトヨタから報告のあった7車種(うち現行車3車種)に加えて新たに7車種(現行車4車種)に不正があった。(2)トヨタ自動車に対し、道路運送車両法の規定に基づき是正命令を発出。また1ヶ月以内に再発防止策を報告し、その後四半期ごとに再発防止策の実施状況を報告するよう求めた。(3)先ごろ(7月5日)報告のあった7車種については基準適合が認められ、現行車3車種について出ていた出荷停止指示を解除する。…といった内容。以下、それぞれの項目について、ざっと説明する。
文:ベストカーWeb編集部、写真:TOYOTA、AdobeStock、ベストカー編集部
■新たにRAV4、ハリアー、LMで不正発覚
先般(2024年6月3日)発覚した、大規模な認証試験不正問題。トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ各社で過去10年のあいだ複数の車種にて認証試験で不正があったと報告され、国土交通省により立入り検査と基準適合確認が続いていた。
トヨタ自動車はこの認証不正報告を受けて、7月5日に自社による社内確認結果を発表。クラウン(過去生産車)、アイシス(過去生産車)、シエンタ(過去生産車)、レクサスRX(過去生産車)、カローラアクシオ(現行車)、カローラフィールダー(現行車)、ヤリスクロス(現行車)に関して、それぞれ認証試験に不正があったとし、基準適合確認を進めるとともに、現行車3車種については国交省からの出荷停止指示に従い、出荷を止めていた。
トヨタとしては、7月5日の時点で(上記7車種以外は)「過去10年分の国内向けモデルの全ての認証プロセスの調査を完了し、その結果、新たな事案は確認されませんでした。」と発表していたのだが……このたび国交省の立入検査結果によると、新たに7車種の不正が発覚した。ちょっと…頼むよ……。
■新たに不正が発覚した7車種
今回新たに認証試験不正が発覚した車種は以下のとおり。
・プリウスα(時期:2014年/過去生産車)…歩行者脚部保護試験において別の試験で使用済みのFrバンパーを再利用
・レクサスRX(時期:2015年/過去生産車)…歩行者脚部保護試験において衝突速度を規定に収まるよう数値処理(小数点第2位の切り捨て)
・RAV4(時期:2017年/現行車)…積荷移動防止試験において規定と異なる積荷ブロック、量産と異なるシートのロック機構部品で試験
・カムリ/アルティス(ダイハツ)(時期:2018年/過去生産車)…ステアリング衝撃試験において申告と異なるステアリングで試験したが、申告時の仕様の写真を成績書に添付
・ノア/ヴォクシー/ランディ(スズキ)(時期:2021年/現行車)…内装の乗員保護装置試験において量産と異なる部品(ナビディスプレイ)で試験
・ハリアー(時期:2022年/現行車)…ポール側面衝突試験において量産と異なる部品(Frドア内部ブラケット)で試験
・レクサスLM(時期:2023年/現行車)…ポール側面衝突試験および側突衝突にて量産と異なる部品(Rrドア内張り)で試験
なお、先般より国交省から出荷停止指示を受けていたカローラフィールダー/アクシオ、ヤリスクロスについては、基準適合の確認がとれたため、2024年9月初めから生産を再開するとのこと。また、追加事案となったノア/ヴォクシー/ランディについては、上記の報告を受けて7月29日から出荷を停止していたが、こちらも準備でき次第、再開予定だという。
そうなると気になるのが、そのほかの現行車。RAV4、ハリアー、レクサスLMの生産、出荷、販売はどうなるか。
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現時点では特に発表も動きもないが(つまり生産も出荷もされている)、トヨタによるとこれらの車種については「国土交通省を含む関係当局にご報告した上で、基準適合性を順次確認中です。」とのことなので、しかるべき時期にいったん出荷が止まる可能性がある。
ヤリスクロスやカローラフィールダーというヒット車種の生産が再開されたのは嬉しい話だが、今度はRAV4やハリアー、レクサスLMという、トヨタのドル箱といっていい車種の生産・出荷が止まる可能性が出てきた。
そのうえで、過去生産車も含めた、今回認証不正が発覚した14車種すべての車種にお乗りのユーザーに関しては、「なお、お客様には直ちに使用をとめていただく必要はありません。」とのこと。
「使用に問題がない」のに「不正」となるこの問題、いやそういう簡単な話じゃないのは重々承知のうえで、さすがに正直そろそろ多くのクルマ好き、一般ユーザーも、うんざりしているはず。ちゃんとしてくれ。本当に。
■「経営/幹部の認証業務全体における理解と関与が不十分」
今回の(追加発覚ぶんも含めた)認証不正問題を受けて、国交省はトヨタ自動車に宛てて「是正命令」を出した。トヨタが是正命令を受けるのは初めて(過去、日野自動車、豊田自動織機、ダイハツ工業が受けている)。
国交省によると、
「トヨタ自動車が講ずるべき措置を含めた抜本的な再発防止策を策定し、型式指定申請に係る違反を是正すること。 また、上記再発防止策を1ヶ月以内に報告するとともに、その後の実施状況について、当面四半期毎に報告すること。」
とのこと。
トヨタ自動車はこれを受けて、公式リリースで以下のとおり説明。
「認証業務を正しく行えていなかったことを深く反省し、ステークホルダーの皆さまに、ご心配、ご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
一連のご指摘や社内調査を通じて、弊社としてはこのたびの事案の原因が、現場と経営の両面にあったと捉えております。
(1)現場における原因
認証申請に必要な書類を作成する際の社内の運用ルールが不明確
認証業務における必要なリソーセスの明確化と管理が不十分
認証業務の重要性に対する認識が不足
(2)経営面における原因
経営/幹部の認証業務全体における理解と関与が不十分
これらの認識をもとに正しい認証業務を実施するための仕組み・体制に見直すとともに、認証プロセスの責任と権限をあらためて明確化し、正確なデータ管理など基盤の整備を進めてまいります。これらを再発防止策としてすみやかにまとめ、国土交通省にご報告いたします。」
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■「撲滅は無理」なら早期発見、対処を
2022年3月、日野自動車のエンジン認証に関する不正が発覚してから2年半、「認証不正問題」は日本の自動車界を揺るがし続けている。
本年6月、トヨタの豊田章男会長は「責任者は自分」としつつ、「不正の撲滅は無理だと思う」と語った。実際、トヨタが全力で調査してもなお、あとからぽろぽろと追加で認証不正が発覚している。要因としては、今回トヨタが明言しているように「経営/幹部の認証業務全体における理解と関与が不十分」が根底にあるわけだ。
豊田会長自身が何度も繰り返しているとおり、国の認証制度は日本における自動車産業の(生産や出荷、販売についての)「根幹に関わる問題」。不正は許されない。国際協調もあり、認証検査は守るべきルールだ。
こうした(「通常の利用に問題はない」としても)不正が発覚することによる問題はたくさんあるが、認証制度そのものへの信頼感が損なわれることにもなるし、「百年に一度の自動車革命期」において、よりよい認証制度のありかたへの議論も止まる。なにより当該車種に乗っているユーザーは不安にかられ、納車を待つユーザーはさらに納車待ちが長期化するおそれがある。
今回は、先般から続いていた認証不正問題を受けて、各メーカーによる過去10年間ぶんの調査と報告、そこから国交省の立入り検査結果があっての発表…ということなので、ここでひとつの区切りを迎えたとも言えるわけだが、それはつまりトヨタグループ全体、自動車産業全体での、認証不正対策の始まりでもある。
現在、トヨタ自動車ではグループ内で、「撲滅」が無理だとしても、早期発見、対応の方法を検討、協議、実施している。
これを最後にしてほしいが…せめて見つかったら早急に対処し、影響を最小限に留めていただきたい。頼むよ…。
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