2024年6月3日、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキから「認証検査において不正があった」との報告があった。ダイハツの件から国交省がメーカー各社に調査を指示したことで発覚したこの不正。各社「ただちに使用を控えていただく必要はない」と言っているが、はたしてこの問題、誰がどう悪いのか。ここではホンダの不正について掘り下げる。

※本稿は2024年6月のものです
文:国沢光宏/写真:ホンダ
初出:『ベストカー』2024年7月26日号

■規定より重い車両で騒音試験と、同エンジン同出力と解釈

大ヒット車である初代N-BOXでも認証不正が判明。ただしホンダは現行車では不正なしと回答

 ホンダの不正内容は2点。

 1.騒音データと、2.出力の補正。

 騒音データだけれど、結論から書くと「売っているクルマが規制値を超える心配なし」。具体的に説明しよう。

 クルマの騒音データは、実際に販売するクルマで最も重いグレードと、軽いグレードで行う。騒音テストの提出時期は市販モデルでなく開発中のモデル。早いタイミングで提出しないと認証が遅れるためだ。

 当然ながら、市販車は計画重量より重くなったり軽くなったりする可能性がある。時間があれば再試験するのだろうけど、難しかったのだろう。

 一番重いグレードより少し重い車重と一番軽い車重より少し軽い車両でデータを取り、そいつを認証に使った。

 メーカーからすれば「重くなれば騒音レベルは大きくなる。重い車重でクリアできていれば問題ない」と判断してしまった。

 出力だけれど、ホンダからすれば「同じエンジンならパワーも同じ」として、個別に計測したエンジン出力でなく、同じデータを多くの車種に使ったという。

 実際、エンジンを構成している部品は同じ。パワーをコントロールしているCPUも同じ。共通プラットフォームであれば、エキパイの取り回しや触媒の位置だって共通になる。

 違うとすればセンターパイプから後ろくらい。

 それだって騒音規制など考えたらパワーの違い=個体差くらいになると考え、同じ出力表示にしたということ。

ホンダ公表資料。下振れだけでなく上振れの数値もカタログ値どおりに修正していた

 ホンダによれば前述のとおり「個体差があり、なかには申請値より高いモノもあり調整が難しかった。同じエンジンなら同じ出力でいいだろうという甘えが出た」。

 ここは難しい問題かもしれない。メーカーによってFFと4WDで2psくらい違うスペックを使うケースがある。2psくらいの個体差が出ることもあるだろう。

 ホンダについていえば、国交省の認証基準が厳しく、しかも申請を出してから認証が出る間のタイムラグの長さに起因していると考える。国交省の対応改善の余地は大いにある。

 特に騒音は、不利な条件なら問題ないといった解釈ができないと、発売直前の装備変更すらできない。

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