かつては「10年10km」と言われたクルマの寿命は、完成度の高まった今ではかなり長くなったと感じる。しかし気をつけていないとその寿命も一気に短縮……。そこで今回は、うっかりやってしまいがちな「クルマの寿命を縮める行為」について解説する。

文/山口卓也、写真/写真AC

■クルマの寿命を決めるのはオーナー自身

ペダルワークを丁寧にすることも愛車の寿命を延ばすうえで非常に重要。急のつく運転はエンジン、ブレーキなど、多くの箇所に負担がかかる

 もともとクルマには“寿命”というものは存在しない。不調になった箇所の修理、壊れたパーツの交換をすれば、いつまでも走り続けてくれるもの。

 つまり、寿命を決めているのはオーナーであり、“寿命”と判断した理由はさまざま。

 「飽きた」「至るところにガタやサビが出はじめた」「高額な修理費がかかるようになった」「メーカーにパーツの在庫がなくなった」などで“寿命”と言われ、手放していく。

 逆に言えば、「飽きた」はさておき、「ガタがなるべく出ないような走り方をする」「高額な修理費がかかるようなことをしない」などで“寿命”は飛躍的に長くなるのだ。

 例えば、「“急”のつく運転をしない」「駐車場のタイヤ止めにぴったりつけたまま駐車しない」「オイル交換は取り扱い説明書どおりの粘度・頻度で行う」などはよく知られていること。

 そこで次では「え? こんなことでも寿命って縮むの?」といった例を紹介する。

■洗車はタイミングの見極めが大切

●過ぎたるは及ばざるがごとし

 昔は家の近所で休日に洗車をする姿をよく見かけた。しかし、現代のクルマは塗装の質もよくなり、キズや汚れを防止するコーティングが行われているクルマも多く、さらにマンションなどの住宅事情で洗車をする姿もあまり見かけなくなった。

 現代のクルマの洗車頻度の平均は月に1度程度が一番多いと言われるが、洗車頻度は「汚れてきた……」というタイミングで問題はない。

 むしろ、頻繁に洗車するとせっかく施したコーティングが剥がれたり、ボディに細かなキズがつくようになる。

●鳥のフンや虫の死骸に要注意!

 ただし、鳥のフンや虫の死骸などがついている場合は、できるだけ早めに洗車することをお薦めする。鳥のフンや虫の死骸に含まれる酸性やアルカリ性の油分は、塗装面にシミや変色を作り、塗装剥がれなどを起こす場合があるからだ。

 鳥のフンや虫の死骸を除去する場合は決して擦り落とさず、水をかけて柔らかくしてから落とすか専用の除去剤などを使って落とすほうがいい。専用の除去剤を使う場合はその後にしっかりと洗車すること。

 鳥のフンや虫の死骸をつきにくくしたいなら、コーティングやワックス施工を行うといい。コーティングやワックス施工をすると防汚性や水弾き力が上がり、鳥のフンや虫の死骸も簡単に落とせるようになる。

■長期放置&あまり乗らないとクルマの寿命が縮む

●乗らないほうがゴム製パーツの劣化は激しい

 「クルマにはあまり乗らないほうが寿命は長くなる」と思う人もいるだろうが、クルマには金属パーツ以外にタイヤやパッキン、モールなどのゴム製パーツやオイルなども使われている。

 ゴム製パーツは柔軟性を保つために油分を含んでいるが、紫外線を浴び続けることで硬化していく。

 また、人間と同じようにまったく動かさない状態から急に動かすと、硬化したゴムパーツにひび割れが生じたりもする。

●乗らないとパーツがカラカラに

 エンジン内パーツやデファレンシャルギヤなどはオイルに浸かっているが、長く動かさない状態が続くと、各部に張りつくように浸透していたオイルは重力によってパーツから離れてしまう。

 その状態でエンジンをかけると、パーツにオイルがほとんどない状態からエンジンを動かすことになりパーツの摩耗を早めてしまうのだ。

 よって、クルマにあまり乗らない状態が長く続くと、見た目には新しいクルマなのに壊れたり不調になることがある。せめて週に1回はエンジンをかけ、短い距離でもいいので走らせてあげたい。

 また、あまり乗らないからといってカバーをかけ、長期に渡って土や砂利の駐車場にクルマを置いておくと、地面からの湿気をカバー内に閉じ込めることになる。

 「紫外線から愛車を守る」という意味ではカバーは有効だが、金属パーツのサビを進行させてしまうことになるので注意! 

■オイル交換はオーナーズマニュアルどおりの頻度・粘度で

エンジンオイルの交換時期はオーナーズマニュアルに必ず記載がある。意外と頻繁に交換しなくてはならないということは肝に銘じておこう

 現代のクルマはエンジンオイルさえオーナーズマニュアルどおりに交換しておけば、そう簡単にエンジン不調をきたすことはない。

 逆に言えば、オイル交換を怠るととたんにエンジン不調をきたしてしまうのも事実。

 エンジンオイルには潤滑・密封・冷却・清浄・防錆の役割があり、エンジンオイルを交換しないとこれらの作用が著しく低下する。

 具体的には、燃費の悪化、エンジン内パーツの摩耗によるエンジン性能の低下、冷却作用が低下することによるオーバーヒートなど。

 エンジンオイルは「5000kmか1年で交換すればいい」などとも言われるが、高回転域を多用する軽自動車やターボ車などは普通乗用車よりも高い頻度で交換するべき。適切な交換時期は必ずオーナーズマニュアルに書いてあり、推奨する粘度も記載されている。

 高価なオイルは性能も高い傾向にあるが、高価であるゆえに「なかなかオイル交換できない……」となるなら本末転倒。サーキット走行などを行わないなら、オーナーズマニュアルどおりのメーカー純正オイルを使ってなんら問題ない。

 「オイル交換」と聞くと、クルマをジャッキで持ち上げ、ウマをかませてドレンボルトを抜いて……とちょっと大変そうだが、クルマの種類(ドレンボルトの位置)によっては、上抜き(専用のポンプで吸い出す)のほうがきっちり抜ける場合もある。

 上抜きが可能な車種であればジャッキでクルマを持ち上げる必要はなく、DIYレベルでも数分で作業は終わるため、ぜひ一度、愛車のオイル交換を行ってみることをお薦めする。

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