ヤリスが人気なのはクルマ好きなら周知の事実。一般社団法人日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別販売台数でも直近4年で年間1位を獲得している。では、2位のクルマは? 覚えている人、手を挙げて!?

文/FK、写真/トヨタ、日産

■クルマは2位でもダメじゃないんです!

 自動車の健全な普及と流通・環境面などの諸問題の改善、整備を図る目的を達成するために昭和34年に設立された自動車ディーラーの全国組織である一般社団法人日本自動車販売協会連合会。

 同法人では月別・上半期・下半期・年別(1~12月)で「乗用車ブランド通称名別販売台数」(軽自動車と輸入車は除く)を発表しており、これを見ればどこのメーカーのどんなクルマが売れているのかが一目瞭然となっている。

 過去5年の年別ランキングを見てみると、そのうちヤリスが4回もNo.1を獲得(2019年のみプリウスがNo.1を獲得)しており、圧倒的な強さを見せている。

 そう、ヤリスはベストジーニストに例えるなら木村拓哉さんや草彅 剛さんなどの“殿堂入り”に相応しい1台なのである!

 いっぽう、過去5年の年別ランキングで2位を獲得したクルマは何だったのか? という問いに即答できる人は少ないハズ。でも……某氏のあまりに有名な名セリフ「2位じゃダメなんですか?」にもあるように、2位でもダメじゃないんです! 

 というわけで、ここでは過去5年間で2位に甘んじた“ダメじゃないクルマ”たちを紹介していきたい。

■【2019年】晩年を迎えていた日産のノートがトヨタのプリウスに肉迫する大健闘!

その当時、エンジン進化型エコカー“PURE DRIVE”によってCO2排出量の削減に取り組んでいた日産。HR12DDRとHR12DEという2種類のエンジンを搭載した2代目ノートも“PURE DRIVE”のモデルとしてその役割を担った

 ヤリスのデビュー前年となる2019年の乗用車ブランド通称名別販売台数でNo.1を獲得したのはプリウス。その販売台数が12万5587台だったのに対し、2位になったノートは11万8472台でその差は7000台強であった。

 この年以降の乗用車ブランド通称名別販売台数において1位のヤリスと2位のクルマとの差が大きく開いていることを考えると、この時すでに晩年を迎えていたノートの健闘ぶりは拍手ものだったのかもしれない。

 2020年12月にデビューし、マイナーチェンジモデルが2024年1月に発売された3代目のセールスも好調なノートだが、2019年当時発売していた2代目も2017年から3年連続でコンパクトカー販売台数No.1を獲得した人気の1台であった。

 その2代目のデビューは2012年9月。

 日本の自動車メーカーとして初めて女性の開発責任者(水口美絵氏)を起用したことでも話題を呼んだが、躍動感のあるエクステリアと上質なインテリアに加え、新開発の直噴ミラーサイクルエンジンに高効率スーパーチャージャーを搭載して平成27年度燃費基準+20%を達成したHR12DDRエンジン搭載車の自動車取得税と自動車重量税が免税となることなども高い評価を獲得し、発売から2週間で約2万2000台を受注。

 その後、2016年11月にはガソリンエンジンで発電し、その電力を利用してモーターの力で走行する新パワートレインの“e-POWER”を搭載したモデルをラインナップに追加。

 すると、ノートの人気はさらに拍車がかかり、マイナーチェンジ後からわずか7カ月で10万台の販売を達成するとともに、7カ月連続でコンパクトセグメントのランキングでも販売台数1位を記録。

 2019年は乗用車ブランド通称名別販売台数ではプリウスの後塵を拝したものの、ノートは日産の屋台骨を支えた1台となったことは間違いない。

■【2020年】トヨタのライズがSUVブームの波にのってヤリスに次ぐセールスを記録

ライズは、トヨタとダイハツが両ブランドの商品展開を見据えて新世代に向けたクルマづくり(DNGA)をコンパクトカーに取り入れた初の商品としてデビュー

 ヤリスのデビューイヤーとなった2020年。乗用車ブランド通称名別販売台数で15万1766台を記録してNo.1を獲得したヤリスはその後、2023年までNo.1を維持し続けているが、2020年にヤリスに次ぐ2位を奪ったのはライズだった(12万6038台)。

 全長4m以下でかつ全幅1.7m以下の5ナンバーサイズながら、普段使いからレジャーまで使えて楽しめるコンパクトSUVとして2019年11月に登場したライズ。その魅力として真っ先にあげられるのは、「力強く! 新しい! アクティブスタイル」をコンセプトとしたSUVらしいデザインではないだろうか。

 角張ったバンパーコーナー形状&台形ロワグリルによる力強さとワイド感を表現したフロントビューと大径17インチタイヤ&張り出したフェンダーでSUVらしい踏ん張り感のあるシルエットは老若男女にも抵抗なく受け入れられている。

 また、幅1000mm、高さ865mm、長さ755mmを確保した荷室も可動式デッキボードの採用で高い利便性を実現。デッキボードを下段に配置すればコンパクトSUVトップレベルの369Lという大容量を確保するなど、その優れたスペースユーティリティも特筆すべきポイントといえる。

 エンジンは1.2リッターハイブリッド、1.2リッター自然吸気、1.0リッターターボの3種類から、駆動方式も2WD(1.2リッターハイブリッドと1.2リッター自然吸気)と4WD(1.0リッターターボ)から選べるため、使用用途に応じたチョイスも可能。

 しかも、ガソリンエンジン&2WDの最廉価グレード“X”なら171万7000円というお手頃な車両本体価格もその人気の大きな要因となっている。

 いずれにしてもアウトドアとの親和性も高いことから、まだまだ売れそうな5ナンバー車の代表格であることは間違いない。

■【2021年】トヨタのルーミーが上位常連モデルとは意外? それとも順当? 

 2021年の乗用車ブランド通称名別販売台数で1位のヤリス(21万2927台)に約7万8000台の大差は付けられたものの2位となったのがルーミー(13万4801台)。

 過去5年の年別ランキングを見ると、ルーミーは2019年が7位(9万1650台)、2020年が6位(8万7242台)、2022年が4位(10万9236台)、2023年が5位(10万800台)と毎年のよう上位に名を連ねており、流行に左右されることなく安定した人気を保っている。

 そんなルーミーは、広々とした空間“Living”と余裕の走り“Driving”を掛け合わせた“1LD-CAR”をコンセプトとし、子育てファミリーをはじめ幅広いユーザーの日常にジャストフィットする、新しいタイプのトール2BOXとして2016年11月にデビュー。

 その堂々たる迫力のデザイン性に加え、コンパクトながら広い室内空間、広くて使い勝手のよい荷室、衝突回避支援システムの搭載、1.5リッタークラス相当のトルクを発揮する新開発1.0リッターターボエンジンによる快適な加速性能とゆとりある走りなどが好評を博し、発売1カ月後の受注台数は約1万8300台を記録した。

 また、ボディとサスペンションの高剛性化を図ることでステアリング操作に対して車体姿勢がスムーズに連動し、運転時のストレス軽減に寄与するとともに快適な乗り心地を実現。街中はもちろん、高速道路における安心感の高さも大きな魅力となっている。

 2020年9月にはマイナーチェンジを実施。進化した予防安全機能スマートアシストを全車標準装備するとともに、内外装をデザインも変更された。

 156万6500円から210万円という比較リーズナブルな車両本体価格も子育て世代に支持されている要因のひとつだろう。

■【2022年&2023年】トヨタ・カローラシリーズでも崩せないヤリスの牙城だが、2024年は…

2022年10月にパワートレーンの刷新、最新の安全機能導入、より進化したコネクティッドサービスの提供を柱とする一部改良が行われたカローラ、カローラ ツーリング、カローラ スポーツの3モデル

 1966年の発売以降、トヨタを長年支えてきたカローラ。

 トヨタのモータースポーツ黎明期にWRC初優勝を飾ったTE25カローラや1000湖ラリーを制したカローラレビンなどが活躍した輝かしい歴史はあるものの、カローラのイメージは“近所のオジサンが乗るちょいダサの大衆車”というオールドファンが少なくないこともまた事実。

 しかし! カローラはいまやスタンダードの4セダン、5ドアハッチバックのスポーツ、5ドアワゴンのツーリング、SUVのクロスまで多彩なラインナップを誇る。

 加えて、2022年4月にはレースで勝つために鍛えたクルマを市販化するというモータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりを実践するべく304psの最高出力と37.7㎏f・mの最大出力を発生する1.6リッター直列3気筒インタークーラーターボエンジンを搭載するGRカローラを発表。

 このように、カローラはいまや若者からも人気を集めるトヨタきってのイケメンモデルに大きく様変わりしたのだ。

 加えて、2012年5月のデビュー以来、5ナンバーサイズのボディで販売が継続されている4ドアセダンのカローラアクシオと5ドアワゴンのカローラフィールダーもいまなお健在(2024年7月現在は出荷・販売停止中)。

 それだけにカローラシリーズの累計販売台数はかなりの数にのぼり、乗用車ブランド通称名別販売台数では2022年が13万1548台、2023年が15万4870台という数値を記録している。

 しかし……。それをもってしても崩せないのがヤリスの牙城。2022年が16万8557台で2023年が19万4364台とそれぞれ3万5000台以上の大差をつけられているのが実情だ。

 ちなみに2024年の1月から6月における乗用車ブランド通称名別販売台数では、1位がカローラ(8万5201台)で2位がヤリス(8万1715台)とカローラが若干リード。

 2024年はカローラがこのままNo.1を突っ走るのか? 今後の展開にも注目あれ。

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