いまや新車では買えなくなってしまった国産のリアミドシップモデル。MR2の復活も噂されてはいるけれど、まだ先の話だろうし価格も高そう……。でも、中古車であれば手に入る個体もあるんだから、諦めるのは早計だ!
文/FK、写真/トヨタ、ホンダ、FavCars.com
■実用性を無視してでもミドシップに乗りたい人は手を挙げて!
ミドシップとは車軸から中央寄り(車体中央付近)にエンジンを搭載する方式。
その方式はエンジンを前輪の車軸と運転席との間に配置するフロントミドシップと運転席や助手席の後方にエンジンを搭載するリアミドシップのふたつに大別されるが、一般的にミドシップと聞いてイメージするのはフォーミュラカーをはじめ、名立たるスーパースポーツモデルが採用するリアミドシップだろう。
その特徴は、優れた重量配分によって得られる回頭性・旋回性・ハンドリング特性・加速性能の高さなど枚挙に暇がない。
それゆえにクルマ好き・スポーツカー好きなら一度は乗ってみたいと思うのは誰でも同じだが、そんなメリットと引き換えに居住空間が狭い・収納スペースが少ないなどのデメリットもある。それだけに独り者ならいざ知らず、家族もちだったらおいそれと手が出せるような類のクルマではないというのが実情だ。
加えて、近年ではフロントミドシップのモデルこそ存在するものの、その代名詞といえるリアミドシップを採用する国産乗用車は絶滅……。だからこそ、「一生に一度は乗ってみたい」と思う人もきっといることだろう。
そこで、ここでは高嶺の花ともいえるスーパースポーツから庶民的な軽自動車まで、リアミドシップを採用する4モデルを紹介していきたい。
■トヨタのMR2は今なお国産車史に名を刻む国産小型乗用車初のミドシップ
国産小型乗用車初のミドシップとしてその名を刻むMR2は1984年6月にデビュー。
Midship Runabout 2 Seaterのネーミングが与えられたMR2はスポーツカー然とした見た目とは裏腹に乗降性、シート高、ラゲッジスペースなど使い勝手の良さにも配慮した1台だった。
エンジンは1.5リッター直4 SOHCの3A-LU型と1.6リッター直4 DOHCの4A-GELU型の2種類を設定。トランスミッションは5速MTと電子制御4速ATが組み合わせられた。
1986年に行われたマイナーチェンジでは4A-GELU型にスーパーチャージャーを組み合わせたモデルを追加したほか、Tバールーフ仕様もオプションで設定。
それまでは、いわゆるスーパーカーでしか味わうことができなかったミドシップを量産の小型乗用車に採用して大きな衝撃を与えた。
1989年10月には初代モデルの基本コンセプトを踏襲しながらもスポーツ要素を高めた2代目が登場。初代からサイズがひと回り大きくなり、パワーユニットも2.0リッター直4 DOHC16バルブと225psを発生する2.0リッター直4 DOHC16バルブ+ターボの2本立てに進化を果たす。
その後、 約10年間に及んだモデルライフでは細かな性能向上を図るとともに、末期にはトヨタテクノクラフトがオープンモデルのMRスパイダーを限定販売するなど話題を呼んだ。
そんなMR2は1999年8月に生産終了となったが、3代目に相当するMR-Sが同年10月に登場(海外ではMR2として販売が継続された)。
車重が1トンを切る軽量スポーツカーとして生まれ変わったMR-Sは、パワーよりも軽快なハンドリングを優先して開発。その結果、最高出力140psの1.8リッター直4 DOHC16バルブVVT-iエンジンでもキビキビとした軽快な走りを披露し、2007年7月まで販売が行われた。
このように、今振り返っても唯一無二の存在だったMR2は現在、GRMN専用の少量生産モデルとして復活が噂されている。その真相は果たして? 今後の続報に期待したい。
■伊・独・英・米のスーパーカーもなんのその! 日本にはホンダのNSXがある!
国産ミドシップの最高峰と聞いて、誰もが思い浮かべるのは1990年9月にデビューしたNSXではないだろうか。
量産車として世界初のオールアルミモノコックボディをはじめ、エンジン・シャシー・足回り・シートの構造部材に至るまでアルミ合金を多用して大幅な軽量化を図るとともに、理想的なフロント42:リア58の前後重量配分を実現したNSX。
自然吸気ながら280psを発生した3.0リッターV6 DOHC 24バルブVTECエンジンはもとより、電動パワーステアリング、トラクションコントロールシステム、4チャンネルデジタル制御アンチロックブレーキシステムといった当時のハイテクデバイスを搭載して安全性と快適性も兼備した。
1992年11月には走りの楽しさを徹底追求するべく、さらに運動性能を際立たせたタイプRが登場。NSXで採用した材料置換による軽量化技術をさらに推進しただけでなく、レーシングカーのチューニング理論を応用したピュアスポーツモデルとして開発。
ホンダのレーシングスピリットが溢れるそのスペックは、世界の名立たるスーパースポーツにも引けを取らない純国産スーパーカーとしていまなお語り継がれている。
そんなNSXは2005年12月にいったん生産終了になったが、約10年の時を経て2016年8月に復活。
初代モデルが提案した卓越した運動性能を持ちながら、誰もが快適に操ることができる人間中心のスーパースポーツというコンセプトを継承した2代目。
その一番の見どころとなったのは高効率・高出力が自慢の3モーターハイブリッドシステム“SPORT HYBRID SH-AWD”。
ミドシップにレイアウトした新開発のV6ツインターボエンジンと高効率モーター、ならびに9速デュアルクラッチトランスミッションやトルクベクタリングを可能とするフロントの左右独立モーターなどの組み合わせにより、リニアで力強い加速やより優れた回頭性能を実現した。
しかし、そんな2代目も2022年末をもって販売が終了となった。
■こんな軽自動車、二度と出てこない!? “買うなら今”なホンダのS660
あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が昂ぶる本格スポーツカーを追求するべく、Heart Beat Sportをキーワードに開発されたS660は2015年4月に登場。
2022年3月に生産終了になったものの、ホンダイズムを感じさせる走りを意識したミドシップのオープン2シーター軽スポーツモデルは、現在の中古車市場においても平均価格が200万円を下らない人気モデルだ。
そんなS660だけに装備も充実という言葉では言い尽くせないほどの充実ぶりを誇る。
例えば、専用ターボチャージャーを採用した直列3気筒DOHCエンジンとワイドレンジ&クロスレシオの6MTやダイレクトな走りが楽しめるスポーツモードに切り替え可能な7速パドルシフト付CVT。
これらは走る楽しさをもたらすだけでなく、ミドシップエンジン&リアドライブレイアウトの採用による最適な前後重量配分や軽自動車初の電子制御システムであるアジャイルハンドリングアシストによって曲がる楽しさも提供。
まさに、Heart Beat Sportを地で行く趣味性が高い2シーターのオープン軽自動車に仕上がっている。
そのいっぽうで、高い走行性能とは裏腹に実用面でやや難があることは否めない。室内空間は想像している以上に狭く、収納スペースも皆無に等しいなど、お買い物やロングドライブなど普段使いのクルマとしては適さないことも事実。
全高も1180mmときわめて低く、かつ着座位置も低いことから乗り降りするのも意外と大変だったりする。そう、S660はバイクに乗るような感覚で楽しむ割り切りが必要だということ。
とはいえ、実用性が低くてもそれを補って余りある魅力が満載のS660。いまや希少な最高の趣味クルマは今後の中古車市場で価格が高騰する可能性も秘めているだけに、欲しいと思っている人がいたら“今が買い”かもしれない。
■ミドシップはスポーツカーの特権ではない! 独創性が光る三菱・アイの個性
軽自動車の課題である“デザインと居住性”、“居住性と衝突安全性”という相反するテーマを克服するため、かつてはミドシップレイアウトを採用した軽乗用車も存在した。
その軽自動車とは、新時代を切り拓く革新的なプレミアムスモールを商品コンセプトとしたアイだ。
2006年1月に発売されたアイはミドシップレイアウトによる良好な前後重量配分を武器に優れた操縦安定性、上質な乗り心地、軽快なハンドリング、安定したブレーキングなど高次元の“走る・曲がる・止まる”を実現。
また、フロント部の効果的な衝撃吸収ゾーンなどによる十分な衝突安全性能とゆとりのある室内空間を両立し、独創的なスタイリングも話題になった。
そんなアイは走りも本格派で、新開発のアルミ製DOHC 12バルブ3気筒エンジンは吸気側連続可変バルブタイミング機構とインタークーラー付ターボチャージャーとの組み合わせによって高性能と低燃費、低排出ガスを両立。シリンダーブロックのアルミ化、インテークマニホールドの樹脂化により軽量コンパクト化も追求されていた。
さらにエンジンの剛性向上、サイレントチェーンの採用などで振動・騒音の低減を図り、クラスを超えた快適性も実現。
新開発のサスペンションも秀逸で、特にフロント側はエンジンがないためサスペンションの適正な配置が可能となり、十分なストローク量を確保。ロングホイールベースと相まって 上質感のあるフラットな乗り心地、優れた直進安定性、素直なハンドリングを高次元でバランス。
大きなタイヤ切れ角も実現し、ロングホイールベースながらも4.5mという最小回転半径を達成した。
三菱がこだわりにこだわったアイは2013年6月に生産終了となったが、現在の中古車市場では平均価格が30万円前後で推移しており、超がつくほどのお買い得な1台となっている。
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