世界初、日本初、クラス初など、新型車のアピールには「初もの」が多い。ただ、かつてそのインパクトで一世を風靡したホンダ・シティは、こんなにあるの?というくらい「初」のものが多かった。多くのクルマファンを虜にした、80年代の名車、ホンダ・シティを振り返る。

文:佐々木 亘/画像:ホンダ、ベストカーweb編集部

■シビックの穴埋めに登場したシティ

ホンダ シティ R。可愛らしい見た目と丸形ヘッドライトはアウトビアンキのような面影を感じる

 ホンダがフルモデルチェンジを機に車格を上げたシビックに代わって、1.2Lクラスのボリュームゾーンを任せたクルマが、シティである。

 1981年に登場したシティは、同時発売された折り畳み式の50㏄バイク、モトコンポを荷室に収納できる驚きのクルマとして登場した。「シティはニュースにあふれてる」のコピーそのままに、新しいことがふんだんに詰め込まれたクルマだったのだ。

 グレード展開は、遊びのアイデアぎっしりのRシリーズ、運動神経ナンバー1のTURBOⅡ、サイフのヒモしっかりのEシリーズの3つに分けられた。機能性も運動性能も経済性も、一手に引き受けるニューモデルがシティである。

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■〇〇初やトップクラスが多すぎる!

ホンダ シティ ターボⅡ。インタークーラーターボ付きで、最高出力110PS/5,500rpmというスペックは、当時の若者から人気を博した

 まずはシティに搭載されたエンジンを見ていこう。COMBAX(コンバックス)エンジンと呼ばれたこのエンジンは、無鉛ガソリンエンジンで世界初の圧縮比10を実現している。高圧縮下でもノッキングを起こさずに、高出力・低燃費を実現した。

 ここに、高性能のターボチャージャーや、2段ブーストコントロールといった新機能を搭載し、国産小型車トップクラスの超低燃費を実現している。さらに、日本初のFEインジケーターを搭載したのも話題になった。

 燃費向上の名アドバイザーと称されたFEインジケーターは、最適ギアで走行しているか、シフトアップやダウンをすべきなのかを教えてくれるものだ。つまり、経済的な運転かどうかを、コンピューターがエンジン回転数や負荷、速度をチェックして、的確に指示してくれる。今では当たり前の装備だが、ECOドライブインジケーターの先駆けは、シティだったのだ。

 また、量産車で世界初のF.R.M(Fiber Reinforced Metalの略で、繊維強化金属)アルミコンロッドを採用した、低燃費使用のEⅢグレードを1985年に追加した。一部改良でも、しれっと世界初を追加してくるシティは、まさに初ものづくしのクルマなのである。

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■オーディオにも世界初?それってもうオートサロンとかに出てくるクルマでしょ!

ホンダ シティ カブリオレ。国産車では同社のS800以来14年ぶりとなるオープンカー。当時国産オープンカーの中でトップクラスの販売台数であった。

 エンジンメーカーのホンダだからこそ、初の技術が数多く搭載されたエンジンをシティに投入できたわけだが、シティの初はこれで終わらない。

 モトコンポを搭載できるだけでも十分に遊びなのだが、オーディオでも思いっきり遊んできた。それが、想像を超えたハイフィディリティサウンドの「マンハッタンHi-Fi」だ。

 カーオーディオとして採用するのは世界初。ハイルーフ仕様のトランクルームに、外向きにスピーカーボードが設置されているオーディオシステムだ。その姿は、イケイケなオーディオフルカスタムのカスタマイズカーである。

 もちろん見た目だけでなく、サウンドシステムとしても優秀だ。パワフルな20W×20Wの高出力アンプと、左右のドアに2本、ルーフスピーカーボックスには4本のスピーカーが備わり、ライブサウンドが思いのままに楽しめる。

 エンジンからオーディオまで、様々な「初」が詰め込まれたシティ。これを今から40年以上も前にやっていたのだから、ホンダあくなき探求心との遊び心には、頭が下がるばかりだ。

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