最近では国内販売ランキングのトップが定位置だったホンダ N-BOX。だが2024年5月、販売ランキングの首位に躍り出たのはスズキ スペーシア!! そこで、N-BOXとスペーシアを徹底比較し、首位交代の理由を探ってみよう。

※本稿は2024年7月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:平野 陽
初出:『ベストカー』2024年8月10日号

■2022年5月以来の首位交代劇

スズキ スペーシア(左・153万100~219万3400円)と、ホンダ N-BOX(右・164万8900~236万2800円)

 国内販売ランキングの1位は、最近は常にN-BOXだったが2024年5月は違った。スペーシアが1位で、N-BOXは2位だ。この順位は2022年5月以来になる。

 そして2024年1~5月の累計では、スペーシアは前年の141%売れたが、N-BOXは13%減少した。N-BOXは2023年10月、スペーシアも同年11月にフルモデルチェンジしたから、前年の1~5月は先代型のモデル末期だった。

 フルモデルチェンジの直後だから今は売れゆきが増えて当然だが、N-BOXは先代型を下まわっている。

 そんな今、販売が拮抗しているスペーシアとN-BOXをカスタム同士で乗り比べた。エンジンは両方ともターボになる。

 まずは外観だが、スペーシアカスタムのフロントマスクは、従来型と同じく存在感が強い。対するN-BOXカスタムは、グリルを緻密に仕上げて、存在感や目立ち度よりも上質感を追求した。

 インパネの周辺も、スペーシアは現行型になって上下に厚みを持たせた。N-BOXは先代型よりもシンプルで、インパネの上端を約70mm下げることにより、前方視界を向上させた。

 ステアリングホイールのスポークも、N-BOXは従来型の3本から2本に減り、メーターの視認性を高めてシンプルな印象も強めている。

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■スペーシアのわかりやすい充実装備

スペーシアのインパネは立体的な形状で、助手席の前側にはコンビニ弁当を置けるトレイも備わる。収納設備も豊富だ

 装備は、スペーシアが収納ボックスやトレイを豊富に装着する。助手席の前側を見ると、上側には大型トレイ、中段はボックスティッシュが収まる引き出し式の収納設備とカップホルダー、下段にはグローブボックスが並ぶ。助手席の座面の下にも大容量の収納ボックスがあり、ハンドルを付けたから車外に持ち出せる。

 その一方でN-BOXは、先代型に比べると、グローブボックスの容量を2倍に増やす代わりにトレイなどを減らした。

 またスペーシアの売れ筋グレードには、後席のマルチユースフラップが備わり、オットマンのようにふくらはぎを支える。反転させるとストッパーになり後席の上に置いた荷物が床に落ちにくい。エアコンの冷気を後席へ循環させるスリムサーキュレーターも用意する。

 このようにスペーシアには、ウェブサイトなどを見て即座にわかる魅力が多い。N-BOXは、標準ボディを筆頭にデザインや各種の機能がシンプルだ。

 WLTCモード燃費も異なる。売れ筋のノンターボエンジンを搭載する標準ボディでは、N-BOXは21.6km/Lで、スペーシアの(マイルド)ハイブリッドXは23.9km/Lだ。スペーシアはN-BOXに比べて燃料代を10%節約できる。これらの違いが人気の明暗を分けた。

 ただしN-BOXは、スペーシアよりも基本性能が優れている。ノンターボエンジンは実用回転域の駆動力が高く扱いやすい。ターボの動力性能は同程度だが、アクセル操作に対する反応はN-BOXが正確だ。

 さらにスペーシアに比べると、ステアリング操作に対して車両の進行方向が忠実に変わり、車線変更を行った後の揺り返しも小さい。乗り心地は、スペーシアは路上の細かなデコボコを伝えやすく、段差で突き上げ感も生じるが、N-BOXは快適だ。

 前席の座り心地は、N-BOXはスペーシアよりも少し硬いが、腰から大腿部をしっかりと支えるため、着座姿勢が安定して運転操作をしやすい。

 N-BOXは走り、乗り心地、座り心地などの基本性能が優れる。しかしスペーシアは内外装の質感、収納、快適装備に力を入れて魅力がわかりやすい。そこが好調の理由だ。

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