お盆休みや行楽のシーズン、クルマで出かけている時に、「また工事か!」とか「ここはいつも混むんだよな……」とか、イライラしがちなそこのアナタ。そのイライラ、道路について知れば納得に変わるかも!? ちょっと真面目に、道路についてお勉強してみませんか?

※本稿は2024年7月のものです
文:ベストカー編集部/写真:NEXCO東日本、AdobeStock(トップ画像=naka@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年8月10日号

■そもそも道路ってどんな構造なのか?

地面を舗装するだけでは道路にならない。写真は上信越道あらい高架橋建設の様子

 クルマに乗っている以上、誰もがお世話になる道路。しかしその道路の構造について、知っているという人は少ないはず。そこで今回は道路について、高速道路を例に解説していく。

 言うまでもないが、原則として道路の土台となるのは地面だ。

 舗装を支持する地盤のうち、表面から厚さ1mを特に路床(ろしょう)と呼ぶ。土地を切り下げていく切土、逆に盛り上げていく盛土などの土木工法、また橋やトンネルを整備することで、自然由来の地形に道路の基礎を造っていく。

 工事では、切り取られる土と盛り上げる土の量がなるべく同量になるよう計画するのも、重要なポイントだ。

 次に、路床の上に路盤(ろばん)と呼ばれる部分を造る。車両などの重さを受け止めて分散するクッションの役割があり、砕石などを敷き詰めて建造する。

 路盤ができたらようやく路面部分の舗装工事。下地となる基層と、仕上げ面である表層の2層構成が一般的だ。

 種類は走行性が高く補修がしやすいアスファルト舗装と、耐久性が高いコンクリート舗装の2つに大別される。高速道路の舗装では、鉄筋コンクリート版の上からアスファルト舗装を重ねることで長所を両立した「コンポジット舗装」が使われることも多い。

 また、雨天時のハイドロプレーニング現象や騒音の大きさも高速道路ならではの問題。従来よりも材料の隙間を大きく取り、雨水や音を吸収しやすくした高機能舗装は、有効な解決策のひとつだ。

■計画、協議、施工……道路ができるまで

実際に工事に着手するまでには、膨大な検討と協議が積み重ねられているのだ(So Takinoiri@AdobeStock)

 次に、道路の整備がどのようなプロセスを経て進んでいくのか解説しよう。

 整備事業が立ち上がると、まず行われるのが関係者への説明だ。路線が通る自治体や沿線地域の住民などに内容と今後のスケジュールなどを説明し、事業への理解を得る。

 次に建設予定地の調査を実施する。地権者の了解のもと土地に立ち入り、測量や土質の調査などを行って必要なデータを収集する。

 データを踏まえ、設計に取りかかる。といっても、この段階では詳細に内容を固めない。道路線形や総延長など、下地となる大まかなプランを練るのだ。

 プランがある程度形になれば、再び関係者との話し合い。既存の道路や水路の切り替え、建物の移転などについて検討する。協議結果を反映して、詳細な設計プランや必要な用地の範囲を確定させる。

 いよいよ工事に向けた準備に着手する。用地の境界に杭を打ち、再度測量と調査を行う。土地取得に当たる補償などを地権者と交渉し、合意の上で用地を取得する。また、用地内に埋蔵文化財がある場合は発掘調査を実施する。

 設計、用地、関係者との合意が揃い、工事が始まる。道路建設は時間も予算もかさむため、工程や実施年度で分割しながら進める。併せて、品質管理や完成検査も順を追って実施。基準を満たし完成すると、晴れて開通を迎えるのだ。

●事業進行のプロセス

1.事業計画の説明
・周辺自治体、住民などに路線概要や事業予定を説明する

2.測量・土質調査・設計
・権利者の了解の上で建設予定地のデータを収集する
・データをもとに大まかな設計プランを立てる

3.設計協議
・住民をはじめ関係者と話し合いながら道路の構造を決める
・協議を踏まえて設計内容をまとめ、買収する用地を定める

4.用地の取得
・用地の境界を確認するなど手続きを進める
・地権者と合意の上、用地を取得する
・埋蔵文化財などがある場合は発掘調査を行う

5.工事実施
・期間や内容ごとに工事を進めていく
・工事が完了したら検査を行う

6.開通!!

■造って終わり……じゃない! メンテナンスの話

破損したガードレールの交換工事。事故による通行止めは、ドライバーも管理者も避けたい事態

 道路事業は開通がゴールではない。日々おびただしい数の車両が通行するのだから、メンテナンスは必須の作業だ。

 壊れたり傷んだりした箇所を素早く見つけるため、日々の点検・清掃は欠かせない。道路本体だけでなく、ガードレールや標識、トンネルや橋の構造部分、受配電設備など、対象は幅広い。

 破損や劣化が見つかれば緊急性に応じて補修が順次実施される。また、事故で道路施設が壊れた際は、一刻も早い通行再開のため緊急的に復旧作業が行われる。

 災害で道路が破損する場合もある。2011年の東日本大震災では、NEXCO東日本管内の各路線も大きな被害を受けた。

 直後は約2300kmにわたり通行止めを行ったが、迅速な対応によって翌日には緊急交通を確保、発災から13日後にはほぼ全ての通行止めを解除している。こういった災害での被害を小さくしていくため、施設の耐震化なども重要な取り組みだ。

 加えて、施設の更新も計画的に進めていかなければならない。NEXCO3社が2023年1月にまとめた路線更新計画の概略では、新たに更新が必要な箇所として約500km、約1兆円規模の対策費が想定されている。道路を守り、より便利にしていくのは、地道で終わりなき仕事なのだ。

■「へぇ~」と言いたくなる? 高速道路のトリビア

●1日に高速道路を走るクルマの台数は?

 2023年度、NEXCO東日本管内の高速道路を通行したクルマの台数は1日当たり約173万台! 道路も傷むわけですね……。

●雪のシーズン、除雪車はどれくらい走る?

 2022年度、高速道路の除雪作業に関わった車両の総走行距離はNEXCO東日本管内だけでも約40万km。地球約10周半も走っている!

●トンネル照明LED化の省エネ効果は?

 NEXCO東日本管内では、トンネル照明のLED化で使用電力量が年間約4000kWh、CO2排出量は同2.2万トン削減できたという! インフラ長寿命化とエコのまさに一挙両得だ。

■より高効率で安全な道路工事への取り組み

交通規制が必要な箇所も目視で行っていた従来の点検。当然渋滞の原因にもなる

 日本における高速道路の整備は1960年代に始まった。完成から半世紀近い月日が流れた路線も、今や珍しくない。道路を将来も継続して利用していくには、施設の改修・更新をさらに加速させていく必要がある。

 NEXCO東日本が推進している「スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)計画」は、こうした取り組みのひとつ。ICTやAI、ロボティクス技術をフルに活用し、道路の管理を高度化・効率化していくのが狙いだ。

 例えば、点検作業へのドローンの導入はすでに一定の成果を挙げている。従来は交通規制を行いながら目視点検していた箇所をドローンで確認することで、省力化や時短化を実現した。交通規制も不要となるから混雑も抑制される。

 また、災害発生時などにもドローンは有効性を発揮している。危険な作業現場に用いることで、安全確保に一役買っているのだ。

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