弱アンダーながらステアリングインフォメーションもしっかり伝わってきてリニアなハンドリング。路面のギャップをしなやかにいなす、上屋の重さを感じさせないしなやかな乗り心地で、まさにフラットライドである。これは自動車評論家が書いたインプレの一例である。なにこれ? ほんとにこの用語を100%理解している人はいるのだろうか? ということで、自動車評論家、自動車専門誌がよく使っている自動車専門用語を紹介していこう。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部

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■クルマ初心者のためにまずは簡単なクルマ用語から

 これを書いている筆者はクルマ好き歴が40年以上のため、初心者向けのこの企画を上手に説明できるか自信はないことをあらかじめお伝えしておきたい。郷に入っていると当然のように使ってしまっているからだ。

 まずは、ちょいかじった程度のクルマ好きでもこれは知っているだろうという初心者向けのクルマ用語を改めて下記に書いておこう。

●馬力(ps)とトルク(kgm、Nm)

 さすがに馬力とトルクくらいは知っているよという人は多いはず。改めて説明しておくと、トルクはエンジンが発生する回転力を示し、kgm(キログラムエム)で表す。数値が大きいほど力強い加速性能を持っていることになる。

 馬力はトルクに回転数をかけたもので、単位はpsで表す。psはドイツ語で馬の力を意味する「Pferdestarke」。馬力の数値が大きければ大きいほど最高速度の数値に比例する。ちなみに1馬力は馬一頭が引っ張る力ではなく、75㎏の重りを1秒間に1m持ち上げる力。

 最近、自動車メーカーでは、JIS規格のps、kgmではなく、SI国際規格、psをkW、トルクをkgm→Nmを表わしている。自動車専門誌では馬力はps、トルクをNmと表わしていることが多い。

●フルモデルチェンジ、マイナーチェンジ、ビッグマイナーチェンジ、フェイスリフト

 これわかる人は100%? フルモデルチェンジはプラットフォームなどクルマの構造やエンジン、外装、内装まで変更し、型式まで変更すること。

 いっぽう、マイナーチェンジはエクステリアのデザイン変更や装備の変更など。ビッグマイナーチェンジは、フルモデルチェンジと遜色のないほど大掛かりな変更をいう。

 最近はレクサスIS、フェアレディZ、セレナなどのように、フルモデルチェンジのように見える、ビッグマイナーチェンジが行われている。

 昔はフルモデルチェンジは4年、マイナーチェンジはその間の2年あまりで行われていたが、最近ではフルモデルチェンジは4~6年、マイナーチェンジは2~4年と長くなっている。

 フェイスリフトは、フルモデルチェンジ、ビッグマイナーチェンジ、ヘッドライトやグリル、バンパーの形状を大幅に変更し、フロント回りのイメージが大きく変わったことをいう。

●Aピラー、Bピラー、Cピラー

 Cピラーのメッキ加飾が……というふうに、クルマ用語としてよく使われる。直訳するとピラーは柱を意味する。フロントウインドウの左右のピラーはAピラー、次にフロントドアサイドウインドウの後端、リアドアサイドウインドウ前端のピラーをBピラー、リアドアサイドウインドウ後端をCピラーと呼ぶ。

 う~ん、ほかにわからないかも……という用語はあるかなあ。もしわからない用語がありましたらコメント欄にお願い致します。

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■走りの評価(インプレッション)記事に使われているクルマ用語わかりますか?

 自動車評論家や自動車専門誌のクルマのインプレッション記事を読んでいると「何言ってんのコレ? 意味わかんない」というクルマ用語が少なくない。

 「リニアなハンドリングで、コーナリング中はアンダーでもなくオーバーでもないニュートラルステア。乗り心地は上質で路面の凸凹を上手にいなし、軽い上屋と相まってフラットライド。ステアリングインフォメーションもよく伝わってくるので運転していて実に楽しい」。

 という例文の内容を、みなさん理解できましたか? ということで、クルマ用語をできるだけわかりやすく解説していきましょう。

リニアなハンドリングのクルマは運転していて実に楽しい

●リニアなハンドリング

 リニアはハンドリング、リニアなアクセルレスポンス、という形で使われている。リニアはハンドリングとは、ハンドリングの操作に対して正確にクルマが動いてくれることを表わし、意のままに操れるとも言われる。

●ステアリングインフォメーション

 タイヤを通して路面状況が手に取るようにわかる、秀逸なステアリングインフォメーション……いう感じで使われる。つまりステアリングインフォメーションというのは、ステアリングから伝わる情報のことで、路面の状態、路面との接地感などがドライバーに伝わるさまを言う。往年の北野元選手や長谷見昌弘選手などレーシングドライバーが特に重視されていたのがこのステアリングインフォメーションであったのを思い出す。

●上屋(うわや)

 鋼板プレス製などのシャシー骨格部を車台、ここにエンジンや駆動系部品など走行に必要な部品が組み付けられた後、実際の車体は完成するが、上屋とは窓部分や屋根を含んだ車体の上部構造のこと。上屋の動きとか、上屋が軽いとか表現される。

●しなやかな乗り心地

 ラグジュアリーセダンや高級SUVのみならず、乗り心地に関する最大の誉め言葉が「しなやかな乗り心地」。路面の凸凹からの衝撃を上手にあしらう快適な乗り心地のこと。また、しなやかな乗り心地と、スポーティなハンドリングを両立する、ともよく言われる。

重量配分50:50のクルマは走行中の荷重移動もさせやすく、しなやかな乗り心地でフラットライド

●フラットライド

 R35GT-Rの開発責任者の水野和敏氏は、V35スカイライン開発時にこのフラットライドをウリにしていた。フラットライドとは路面に凹凸があっても車体の揺れが少なく、路面の変化に対しても車体の揺れ、挙動変化が少なくストレスのない快適な乗り心地。

 V35スカイラインは、新世代のプレミアムセダンを目指すため、V6エンジン専用のフロントミドシップのプラットフォーム、FMパッケージを採用し、フラットライドの実現や、高速走行時にも空気抵抗による車両の揚力(リフト)をなくすゼロリフトを実現。

●アンジュレーション
 端的にいうと路面のうねりである。アンジュレーションはタイヤのサイドウォールの凸凹をことも表わす。

●ワンダリング

 クルマが直進中、タイヤが路面勾配などの影響を受けてふらつく現象。発生する原因として、タイヤの劣化や寿命が考えられる。それ以外にもサスペンションの劣化も考えられるのでワンダリングが出たら整備工場で診てもらうことをお勧めする。

●路面のギャップ

 路面の段差、轍、高速道路の繋ぎ目、橋げたのジョイント部のことを表わす。路面のギャップを乗り越える際のクルマ(サスペンション)の挙動を書く場合が多い。

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■アンダー、オーバー、ニュートラルステア、知らなくても損じゃない?

 まだまだあります。カタカナばかり(和製英語もあり)で嫌になっちゃうと言う人も出てくるだろう。でもこのカタカナ語を日本語に直すとこれまた逆に難しくなっちゃいそうで考えたくない。ということで、一気にいきましょう!

出典:ホンダNSXタイプRのプレスリリースより

●アンダーステア

 コーナリングでの走りに関して一丁目一番地ともいえるのがステアリング特性で、アンダーステアはFF車、4WDに起きる現象。コーナーにおいて、一定速度での旋回状況から速度を上げていくと、クルマの向きが外側に膨らんでいくことをアンダーステアを呼ぶ。

 高速でコーナーを曲がろうとすると、進行方向と逆方向に進もうとする遠心力が加わるが、タイヤのグリップを超えた遠心力が加わり続けると、アンダーステアになってしまい、ハンドルをいくら切り続けてもクルマは外側に進んでしまう。そのため、前輪がグリップを取り戻すまでは速度を戻す必要がある。

アンダーステアが強いクルマといえばR32GT-R。フロントヘビーで限界域に近づくとアンダーが出た

●オーバーステア

 アンダーステアがいくらハンドルを切っても曲がらないで外側に膨らんでいくのに対し、オーバーステアはその逆で、ハンドルを一定の角度に保ったままでも、クルマが内側に回りこんでしまい、リアタイヤのグリップ力が遠心力に負けて横滑りを起こしてしまう。つまり曲がり過ぎてしまう現象。

 オーバーステアは、フロントに重量物のあるFR車に出やすく、ブレーキをかけるとどうしても前輪にかかる負担が大きくなるため、リアの荷重不足によるテールスライドが発生し、オーバーステアとなってしまう。なお、オーバーステアのコントロールは、アクセルをオフにし、エンジンブレーキを利用して行う。

●ニュートラルステア

 アンダーステアとオーバーステアの中間にあたるのがニュートラルステア。前述したように、FF車がアンダーステア傾向、FRがオーバーステア傾向にあるが、最近のクルマはニュートラルステアに近い弱アンダーステアのクルマが多くなっている。

 それはコントロールが難しいオーバーステアに対し、アンダーステアはアクセルやステアリング操作のコントロールがしやすいためといわれている。もちろん、さまざまな電子制御デバイスによって年々進化しているので、個々のクルマの特性も違ってきている。

右足のつま先でブレーキペダルを踏んで踏力を維持したまま、右足のかかとでアクセルペダルを踏んでエンジン回転数を上げるヒールアンドトゥ

●ヒールアンドトゥ

 走り屋さんだったら実践しているのでわかると思うが、普通の人はヒールアンドトゥは使う必要がないので、聞いたこともないという人が多いかもしれない。

 ヒールアンドトゥは、コーナー入口での減速時に使うドライビングテクニック。シフトダウンのタイミングで右足のつま先(トゥ)のブレーキペダルの踏力をキープしたまま右足のかかと(トゥ)でアクセルをあおる。こうすることによってエンジンの回転数を落とさず、減速後、コーナー出口ですぐに再加速できる。

FFスポーツ全盛時代、タックインは当たり前のドラテクだった

●タックイン

 FF車特有のドラテクで、コーナーの進入速度が速すぎてアンダーステアが出そうな時に、アクセルを抜いて、または軽くブレーキを踏んで、フロントタイヤのグリップ力を回復させてコーナーを抜けること。

●プッシングアンダー

 プッシングアンダーとは、前輪が後輪の力にプッシュされることで起きてしまうアンダーステアのことで、FR車や4WDのコーナリング中に起きる現象。前輪が曲がろうとする力に対して後輪の駆動力が強すぎてクルマをまっすぐ走らせようとするために、ドライバーが意図したラインよりも実際の旋回が小さくなり、思うように曲がらない状態。

●アジリティ

 アジリティとは敏捷性、機敏、軽快という意味で、欧州車によく使われる用語。アジリティを感じさせる、アジリティが足りないなどと使われる。

 2015年頃からメルセデスベンツが走行状況に応じてダンパー内のオイル流量を変化させ、減衰力を調整するアジリティコントロールサスペンションを採用し、操る楽しさにおいてアジリティを重要視している。

●スタビリティ

 スタビリティに優れている、スタビリティが高い、などと言われる。直訳すると安定性となるが、ボディ剛性、サスペンションやタイヤの性能によって変わってくる。

フルモデルチェンジすると、車体剛性が何%向上しましたと自慢げに書かれていた。図はスバルの新世代プラットフォームSGPが初めてインプレッサに搭載された時の資料。100%向上とは驚き

●剛性感がある、剛性感が高い

 メーカーの新車開発者から「車体剛性が高いというならわかるが剛性“感”とは何ですか? 剛性感があるというのはあいまいな言葉ではないですか?」とよく言われた。

 剛性の高いクルマに使われる高張力鋼板は、その名の通り引っ張り強度に優れた合金鋼の鉄板で、通常の鋼板から置き換えることで薄肉化できるため、軽量化が達成できる。Bピラーやスカットルなど強度が必要な部分には特に硬いスーパーハイテン(超高張力鋼)を使うことで、剛性を高めながら重量増を抑えている。

 新車が登場する度にねじり剛性40%向上とか剛性についてプレスリリースに書かれているケースが多い。ボディのねじり剛性を上げると、変形が少なくなり、ボディ剛性が高いといわれるが、ガチガチに固くすればいいわけではない。ある程度ボディのしなりも必要で、それがしなやかな走りを生んで、乗り心地やハンドリング性能にいい影響を与えることもある。

 ということで、例えば剛性感がある乗り心地という用語は、正確にはボディ剛性が高いという意味ではなく、ガッチリした印象の乗り心地という解釈のほうがいいだろう。

●力感

 直訳するとエンジンの力強さを感じること。例文としては、実際の走りはスペック以上の力感を感じることができる。

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