令和になっても人気の衰えを知らないミニバン。広くて使いやすくて快適で……といいことずくめのことは百も承知だが、週末の高速道路やレジャースポットなどで周りを見渡せばミニバンばかり。そんな状況にウンザリする人も少なくないだろう。そこで今回は、他人とカブりたくない人向けの少数派ミニバンを紹介しよう。
文/木内一行、写真/日産、ホンダ、マツダ、三菱
■ホンダ・エリシオン「300psを発揮する快速ビッグクルーザー」
ホンダのミニバンというとオデッセイやステップワゴンを思い浮かべるが、2004年デビューのエリシオンも忘れてはいけない存在だ。
広さをウリにしたステップワゴン、3代目以降は走りをアピールしてきたオデッセイと異なり、エリシオンはホンダのミニバンらしさを踏襲しながら上級車としての「質」を付与。「新世代プレミアム8シーター」をコンセプトに開発された。
大型クルーザーをモチーフにしたスタイリングのボディは、アルファード/ヴェルファイアやエルグランドと同等のサイズ。
室内は3列すべてでくつろげる空間を追求し、大きなグラスエリアが開放感を感じさせ、ソファ感覚の大型シートが心地よさを提供。低床フロアや着座位置の工夫により、頭上空間も余裕たっぷりだ。
そして、独自のプラットフォーム技術により、安心感のある上質な走りや乗り心地を実現したのである。
エリシオンの魅力をさらに高めたのが、2006年に追加されたプレステージ。
外観は大型グリルを持つマスクが存在感抜群で、リアにもパネルガーニッシュを追加して差別化。室内はインパネと一体化した大型センターコンソールを装備し、2列目にキャプテンシートも設定した。
そして、最大のポイントがエンジンで、3.5リッターV6は300psを発揮し(4WDは279ps)、ミニバンらしからぬ走りを披露したのだ。
迫力満点のルックスと豪華なインテリア、そして優れた走りと、まさにハイウェイクルーザーのような存在に仕立てられている。
■マツダ・ビアンテ「超ゆったりの2列目でソファ感覚を味わう」
ノア/ヴォクシーやセレナなどの強豪が揃う激戦区へ、2006年に投入されたビアンテ。
トールボディのミドルサイズながら、見た目のカッコよさや軽快な走りを目指したビアンテは、なんといってもエクステリアデザインが特徴だ。
切れ長でシャープなヘッドライトを採用したフロントマスクにはファミリーフェイスである5ポイントグリルを配し、個性的でありながらひと目でマツダ車とわかる表情を構築。
加えて、特徴的なライトからつながる大型の三角窓や動きのあるサイドウィンドウの造形、張りのあるブリスターフェンダーなどが個性を際立たせ、既存のミニバンとは一線を画す存在感を放っているのだ。
もちろん、マツダの意欲作ゆえ見た目だけでなく広い居住空間と多彩なシートアレンジを実現し、扱いやすさを徹底追求。
3ナンバー専用ボディを生かしてクラスNo.1の室内空間を確保し、大きなグラスエリアで開放感を演出している。
そして、多彩なシートアレンジのなかで、イチ押し機能がリビングモード。圧倒的なスライド量の2、3列目を最後端へ移動させれば、最大863mmという2列目足もとスペースを確保。リビングのソファにいるようなくつろぎ感を味わえるのだ。
販売台数ではライバルたちに遠く及ばなかったが、斬新なルックスと快適な居住空間を持つビアンテの魅力は計り知れない。
■日産・ラフェスタ(2代目) 「OEMと侮るなかれ、その違いは一目瞭然」
ラフェスタは、ロールーフタイプながら広々とした空間と高い開放感を確保し、ファミリー層から支持されたミドルサイズミニバン。初代は日産の独自開発だったが、2011年に「ラフェスタ・ハイウェイスター」として登場した2代目は、マツダ・プレマシーのOEMモデルとなった。
そのため、基本的なメカニズムはプレマシーと同じ。全車2リッター直4で、グレードによってアイドリングストップ機構が備わる。また、FFのほかに4WDをラインナップすることも同じだ。
インテリアもバッジ類の変更こそあるものの、基本的にはプレマシーからの変更はなし。多彩なシートアレンジや使いやすい機能を踏襲している。
ただし、エクステリアは似て非なる部分が多い。
フロントまわりはヘッドライトやフェンダーこそプレマシーと共通だが、グリルやバンパー、ボンネットを専用品として独自の表情を作り出している。
さらに、プレマシーではボディサイドに独特なデザインの「NAGARE」ラインが入っているが、それを排すために専用パネルへ変更。リアについても、メッキパーツを効果的に配してオリジナリティを高めているのだ。
初代ほどの人気はなかったものの、ベース車の完成度の高さもあり、ミニバンとしての実力は間違いない2代目ラフェスタ。他人とカブりたくないという人にお薦めの1台だ。
■三菱・グランディス 「SUV風にアレンジしたクロスオーバーモデルも」
ミニバンの先駆者として知られる初代シャリオを始祖に持つグランディス。
シャリオグランディス時代を経て2003年に改名して最終発したが、残念ながら約6年で姿を消してしまったモデルだ。
とはいえ、随所に三菱の意気込みが感じられ、スポーティ&エレガンスな造形を基調に「ジャパニーズ・モダン」な美しさを盛り込んだというデザインは、コンセプトカーのそれを落とし込んだもの。多くのミニバンがスライドドアを採用するなかで、ヒンジ式ドアとしたこともある種の特徴だった。
また、「くつろぎを与えるリビング」を目指した室内は、空間の広がり感と心地良いリラックス感を演出する造形とし、クラス最長のホイールベースを生かして多彩なシートアレンジも実現。2列目キャプテンシートの6人乗りとベンチシートの7人乗りが設定された。
そして、内外装色やシート仕様など、ユーザーの好みで組み合わせることが可能なカスタマーフリーチョイスも注目されたポイント。「スタンダード」をベースに、エレガンスやスポーツといった4つの推奨パッケージを設定したのである。
ただ、2005年の改良時にはグレード体形を見直し、カスタマーフリーチョイスに替えてコンセプトを明確にした新グレードを設定。さらに、SUVテイストを注入したスポーツギアを追加し、新たなスタイルを提案したのだ。
販売期間は決して長くなかったものの、新たなスタイルで注目を集めたグランディス。実にユニークなミニバンだ。
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