日本では映画ぐらいしか馴染みのない「防弾仕様車」という言葉。しかし世界に目を向けると決して珍しい訳ではない。しかもブラジルではトヨタの大衆車でもこの仕様を手に入れることができるという。しかも保証もついた万全の内容というのだから…驚きである。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部

■日本では縁遠い防弾仕様という言葉

こちらが防弾仕様専用ページ。ページの英語がなんとも物悲しい…。

 日本で防弾仕様の車両を見かける機会はほとんどない。総理大臣専用車、警護するSP車両(予備車)、一部の機動隊車両、そしてごく一部の怖い人達が乗っているくらいだ。少なくともどんな富裕層でも、日本で防弾仕様車に乗っている話は耳にしたことがない。

 防弾仕様車は世界的に見て”VIP”送迎車両となるため、カテゴリーを問わず高級車がベースになりがちだ。実際、ドイツの高級車メーカー御三家は本国ではいわゆる”上級”モデルに防弾仕様車をラインナップしている。そんななか、ブラジルから気になる話題が入ってきた。

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■世界的にも珍しい大衆車の防弾仕様

施工された車両を見ると、何やら不審な穴が…。確かに窓ガラスは割れず、被害は最小に止められている。

 トヨタ・ブラジルが「カローラセダン」、「カローラクロス」、「ハイラックス」、そして「SW4」(諸外国では“フォーチュナー”の名称も用いられている)の防弾仕様車の提供を始めたという。もちろん、トヨタが自前で防弾仕様化するのではなく、現地の提携防弾仕様加工業者に委託するオプションとなる。

 そして新車のみならず、2020年以降の中古車でも事前チェックで適合するものは防弾仕様化することができるそうだ。VIPでなくとも極悪な犯罪に巻き込まれる可能性がある、あるいは高級車に乗らず目立たぬようにするVIPが居る、といった理由が考えられるが…、どちらが正解なのかは分からない。

 いずれにせよ”非”高級車で防弾仕様オプションが提供されるのは世界的にも珍しいことである。

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■大衆車にも防弾仕様の需要があるブラジル

ご覧のように内装を剥がしてケブラーなどを追加装備。この作業は各所に行われるそうだ。

 防弾仕様にする流れは大まかに言って内装をバラし、ケブラーなどの補強材をボディ随所に接着し、防弾ガラスの装着する、というもの。ぱっと見、防弾仕様を見分ける方法は窓の縁の”黒い部分”が多めか否かで判断できる。それにしても、まさかカローラが防弾仕様になっているとは普通思わないだろう。

 防弾仕様化オプションの価格は明らかになっていない。なお、防弾仕様の施行には5年、防弾仕様化に用いられた素材には10年の保証が付帯されるそうだ。

 昨年、警視庁が認知した日本における殺人は912件、対するブラジルは3万9500件だった。

 ブラジルの人口は日本の約2倍だが、殺人件数は実に43倍。「防弾仕様オプション、凄い!」と軽々しく思ってしまったが、この数字を聞くと胸が痛む。こういった状況下で、人々が安全を求めるのも無理はない。

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