WR-Vにヴェゼル、ZR-Vと複数のクロスオーバーモデルをラインナップするホンダ。しかしクロスオーバーSUVが飽和状態となっている今こそ、過去に存在していた「シビックシャトル」のテイストを復活させてみてはどうだろうか?

文/小鮒康一:写真/ホンダ

■シビックのステーションワゴンモデルとして登場したシビックシャトル

1983年登場のホンダ シビックシャトル。クロスオーバーとは元々「異なる要素が混ざり合う」という意味。シビックシャトルは「シビック」と「ステーションワゴン」のクロスオーバーだ

 シビックシャトルが登場したのは1983年のことで、3代目シビックをベースとしたステーションワゴンモデルとしてリリースされた。いわばスポーティなシビックとステーションワゴンをクロスオーバーさせたモデルというワケである。

 そんなシビックシャトルは、シビックのリア部分をステーションワゴン型にしただけのお手軽仕様ではなく、室内空間を稼ぐために全高が高められており、現在のトールワゴンに近いスタイルとなっていたのだ。

 またデビュー翌年には他のシビックシリーズに先駆けて4WDモデルを追加しており、レジャービークルとしてのポテンシャルを磨いていたことも先見の明があったと言えるだろう。

 1987年にはシビックのフルモデルチェンジに合わせてシビックシャトルも2代目へと進化。シビック譲りの4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションはそのままに、引き続きトールワゴンスタイルを継続しただけでなく、一部グレードにルーフレールを採用するなど、遊び心をさらにプラスしていた。

 そしてモデル末期の1994年には、4WDグレードをベースに高められた車高とフロントバンパーガードや大型フォグランプ、前後マッドガードに専用ツートンカラーを纏った「ビーグル」を追加。

 これは当時巻き起こっていたRVブームの波に乗るために投入されたもので、こちらは現在のクロスオーバーSUVに近いモデルとなっていたが、うまく時流に乗ったことも相まってシビックシャトルの販売台数をV字回復させる立役者となったのだった。

 このようにシビックシャトルは時代の流れにうまく乗りながら幅広いバリエーションを誇り(シビックシャトルのボディを使った商用モデルのシビックプロなどもあった)人気を博したモデルとなっていた。

 現在もシビックのメカニズムを使ったクロスオーバーSUVのZR-Vが存在しているが、ホンダはもっとシビックブランドを上手く活用して、ワクワクするようなモデルを量産してもらいたいところである。

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