乗用車の運転で特に狭い道路に向かい左折するときに車体を右に振ってから左折し始めるのをたまに見かける。そこまでしなくても曲がれるし、教習所でそんな危険な運転方法は教えていないはずだが、大型車であるバスはどんな運転をしているのだろうか。
文/運転:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:信州駒ケ根自動車学校
■なぜ右に振る?
左折時に右にハンドルを切ってから改めて左にハンドルを切る行為を俗に「あおりハンドル」と呼び、危険な運転方法であるとともに、実は法令違反でもある。誰もそんなことは教えていないはずだが、無意識なのか意識的にやっているのかはともかく即刻やめるべきだ。そういう車に限って直前で左ウインカーを出して、車体は右に折れていくので危険極まりない。
そもそもなぜそんな運転をしてしまうのかというと、もっとも大きい要因は内輪差により「曲がり切れない」や「後輪が乗り上げる」という恐怖感だろう。
だからと言って右に振っても良いわけではない。法令では交差点の30m手前でウインカーを出して、あらかじめ道路の左端に寄ってから小回りすることになっている。たかだか5m前後の乗用車が2車線以上ある交差点で曲がり切れないということはない。
■バスの曲がり方は?
では11m以上ある路線バスはどうやって曲がっているのだろうか。まずは大型バスのタイヤの位置をおさらいしておきたい。前輪は運転席の後ろにあり、後輪は最後尾座席から3番目の席の下というのが一般的だ。
本稿の写真は信州駒ケ根自動車学校のペーパードライバー講習を想定して取材した際に記者が運転した12mハイデッカー車のものである。路線バスよりもさらに1m長いバスで高速バスや観光バスと同じ車両だ。
よって左折時には左折する道路の左車線までバスの前を出してから曲がる。すると曲がった先では少しの距離を反対車線まで使って曲がることになる。だから狭い道でバスが入ってくるような道路では停止線がかなり前の奥まった場所に引かれているのだ。
■停止線は守ろう
話はそれるが、その停止線を大きく過ぎて停車している乗用車があるが、前述の通りバスが来たら曲がれない。理由があってかなり手前に停止線が引かれているのだから信号が変わるまで奥まった場所で待とう。
バスが曲がってきてあわててバックしようとしても後ろに車がいたらどうしようもなく、前に出るしかない。そして結果的にバスが曲がり切れるスペースができるまで交差点に進入している乗用車をまれに見かける。危険でもあり、停止線を守らなかったことがバレバレなのでやめよう。
■心配ならば…
11mを超えるバスでも普通の交差点であればちゃんと曲がれるのに、乗用車くらいの長さで右に振る必要はないのだ。それでも内輪差が心配ならばバスのように左にハンドルを切るのをほんの少しだけ遅らせれば余裕で曲がれる。
ちなみに市街地での右左折が多い路線車では左折時に歩行者がいないかを確認するのは大きな扉や窓が開いているので比較的容易だが、高速バスのようなハイデッカー車ではある程度曲がり切るまでは横断歩道の様子は見えないので、覚えておくとバスの挙動を観察出来て双方にとって安全だ。
■右に振ることの危険性
左にウインカーを出しているのに右側に振るという行為は、大変危険である。まずは左折しようとしているのだから左は確認しているはずだ。内輪差が気になるのであればなおさらだ。しかし右側の確認はしていないことが多いと思われる。であるにも関わらず右側に車を振ると右車線を並走している車にとっては恐怖でしかない。
そして後続車は前の車が左折しようとしているのだから、右に寄ってやり過ごそうとするはずだ。場合によっては右に車線変更してやり過ごそうとするだろう。
それが右に寄ってくればやはり恐怖以外の何物でもない。ウインカー等で意思表示をした車両が反対の動きをすることほど恐怖なものはない。
■バスに乗って再チェック!
以前にかぶりつきのいわゆるヲタ席について記事を書いたが、マニアでなくても座って周囲の自動車や歩行者の動きを見てみよう。
乗用車よりは高い位置から見渡せるので、危険な車両や歩行者が見えてくるはずだ。人の振り見て我が振り直せ、とはよく言ったものでバスに乗っても勉強はできるのだ。自分の運転を再チェックしてみてはいかがだろうか。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。