20世紀末に誕生した2シーターピュアスポーツオープン、ホンダ「S2000」。いまも大切に乗っているオーナーも多く、その後継モデルの登場も期待したいところだが、昨今の電動化への流れのほか、ホンダ自身も「2040年にEV/FCEV販売比率を100%」を目指すとしており、従来型どおりのS2000は望めそうにもない。

 しかしながら、電動スポーツであれば、ひょっとすると叶うかもしれない!! ということで、「e-S2000(仮)」プロジェクトを考えてみた。

文:吉川賢一/写真:HONDA

Honda eのプラットフォームを流用すれば、S2000並みのコンパクトスポーツはできる!!

 突き抜ける加速と超高回転サウンドが特徴のVTECエンジン「F20C」やオープンボディなのに超高剛性なハイXボーンフレーム構造、6速マニュアルトランスミッション、4輪ダブルウイッシュボーン、前後重量配分50:50など、クルマ好きが好む要素がてんこ盛りされていたS2000。低い視界とVTECエンジンの加速は痛快で、コクピットへ着座するだけで感じられたクルマの四隅に手が届くようなクルマとの一体感に、ワクワクさせられたクルマ好きは少なくないだろう。

 このワクワクを後継モデルへ引き継ぐためにも、e-S2000(仮)のパッケージングはできる限りS2000に近づけたいところ。現実的にもっとも適しているのが、「Honda e」で使った後輪駆動のEV専用プラットフォームだ。車両中心に配置したバッテリーを保護するために、フロア剛性は十分高く、しかも、前後重量配分50対50、ホイールベースは短めの2530mm(S2000は2400mm)と、シャシーのディメンジョンもS2000に近い。ホイールベースを短縮すれば、2ドア車としてデザインバランスもよくなるはずだ。

1999年に登場したS2000。レッドゾーンが8000回転からという超高回転型エンジンは、このクルマの最大の魅力といってよい
Honda eはシティコミューターのようなコミカルなデザインが影響し、シャシーの素性の良さが目立たなかったが、中身は前後重量配分50対50、リアモーターの後輪駆動車という粋な内容だった
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軽量化のため、後席廃止かつ2ドア化、さらにボディサイズも小さくする

 気になるのは車両重量だ。Honda eは1540kgもあり、S2000の1260kgと比べると、300kg近く重たい。e-S2000(仮)では、軽量化のため、後席廃止かつ2ドア化するほか、ボディサイズも縮小(S2000並みの全高1285mmまで下げる)などをした上で、バッテリー容量も見直し、1400kg未満程度にはしたいところ。ただ航続距離は、WLTCモードで航続距離300kmは確保したい。

 そこに、レスポンスのいい電動パワーユニットを採用し、マニュアルトランスミッションを組み合わせ、四輪独立サスペンション(Honda eも4独サス)によるしなやかな足周りも組み合わせれば、優れた運動性能を発揮する2シータースポーツBEVとなるのではないだろうか。その姿は、2017年の東京モーターショーに登場した「ホンダスポーツEVコンセプト」に近いかもしれない(もっと現代風のスタイルにカッコよくしたいところだが)。

ホンダが2017年の東京モーターショーに出展した「Honda Sports EV Concept」。愛着を感じるデザインが魅力的

S2000との「絆」も不可欠!!

 ただ、e-S2000(仮)にとって、こうしたスペック的な要素よりも重要なのが、「S2000との絆」だ。ホンダとしては、スポーツカーならば、前型よりもパワーアップさせなければならないと考えるかもしれないが、筆者は新型が必ずしも先代モデルよりも性能が上がっていなければならないとは思わない。

 理想に近いのがマツダロードスターだ。4世代とも細部は違なるが、フィーリングや乗り味はどれも似ていて、どれに乗っても面白い。また大きくパワーアップをしないため、タイヤやシャシーもそれほど大回改良する必要がなく、コストもかからない(=価格が必要以上に高くならない)ことは、ユーザーにとってうれしいこと。もちろん未来を予測したチャレンジも大切だが、「変えない」というチャレンジもよい場合があると思うのだ。

 たとえば、S2000のVTECエンジンのサウンドをサンプリングし、e-S2000(仮)が加速した際に、S2000のエンジン音を再現しながら、高回転領域で加速がもうひと伸びするVTECのフィーリングを電気モーターで再現する。加速音や加速は疑似的演出のひとつだが、乗ってみたいと思う人は少なくないのではないだろうか。S2000との絆のひとつとして、ぜひ採用してほしいと思う。

 また、e-S2000(仮)のエクステリアは、昨今のホンダ車が採用しているプレーンな顔付きよりも、S2000時代のような「灰汁の強いフェイス」のほうがいいと思う。S2000タイプSのような下品さも取り入れて欲しい。インテリアも、コクピット周りのデザインを継承したり、ステアリングホイールやアウタードアハンドル、といった細部を真似るのでもいい。S2000オーナーが、2台をガレージに並べたいと思ってくれるような、そんなモデルに仕上げたい。

歴代モデルの絆をうまく表現しているのがマツダロードスターだ。初代から4代目まで細部は違なるが、フィーリングや乗り味が似ていて、どれに乗っても面白い!!
突き抜ける加速と超高回転サウンドが特徴的だった、S2000用のVTECエンジン「F20C」。あの加速時サウンドと、高回転域のひと延びを電気モーターで再現したい

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 趣味性の高いスポーツカーは、「サーキットで速いこと」だけを求めるのではなく、そのモデルでしか味わえないなにかを入れ込むことが必要。e-S2000(仮)であれば、「e-S2000」という名前だけではなく、前述したような、当時S2000を所有していたユーザーとの思い出とリンクするような仕掛けがあるなど、e-S2000(仮)を買いたくなる要素が絶対に必要だ。

 実際に、S2000の後継車が誕生する可能性は低いだろうが、限定でもいいので、なんとか実現できないものだろうか…!??

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