スペック表を見ていて、全幅10mmや室内長100mmなどといった一見「小さな」違いを目にして「そんなに違うもんなのか?」と考える人は多そうだ。今回はベストカーの誇る評論家2人に、一見些細に見えるクルマの数字の違いの実際について指南してもらおう!(本稿は「ベストカー」2013年8月10日号に掲載した記事の再録版となります)

文:渡辺陽一郎、国沢光宏

■全幅10mmの違い

新型ゴルフのドアミラー含む車幅は先代型より狭い

●例えばゴルフは先代が1790mm、新型が1800mmで10mm違うが、その差は大きいか?

 先代ゴルフの全幅は1790mm、現行型は1800mmで10mm広がったが、この数値にドアミラーは入らない。

 これを含むドアミラーの両端で測った車幅は、フォルクスワーゲングループジャパンによると現行型が2027mm、先代型は2048mmだという。

 現行型は全幅の数値を10mm広げながら、ドアミラーで測った車幅は21mm狭いのだ。

 従って狭い道の通行性は現行型がいいともいえるが、「車幅感覚」になると話は変わる。人の鼻が歩く時の目安になるように、意識せずに視野に入るピラー(柱)の間隔で車幅を感じ取る面もあるからだ。

 なので一概に現行型が運転しやすいとはいえないが、取りまわし性にほとんど差はないだろう。(渡辺)

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■最低地上高10mmの違い

レクサスLSFスポーツは車高が下がってなくてもスポーティ

●レクサスLSのFスポーツが120mm、バージョンLが130mmだが、走りの差は大きい?

 市販車で街中やワインディングロードを走った程度だと、まったく同じ車種で同じセッティングをしたのであれば、10mmローダウンしてもわからないと思う。

 もちろんサーキットなどでクルマの性能をフルに引き出せば、タイヤ差やハンドリングの違いがハッキリ出てくる。そもそもレースやラリーで10mm車高変えたら、減衰力まで変更しますから。

 ただLS600hのFスポーツとバージョンLの乗り味の違いは激しく大きい。こらもうバネから減衰力、タイヤまで違うからだ。というかFスポーツのセッティングで地上高130mmにしたら、120mmのバージョンLよりずっとシャープになる。(国沢)

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■最小回転半径0.1mの違い

●例えばヴィッツは1.3Uが4.7m、1.5Uが4.8mだが、その差は大きく感じるか?

 最小回転半径の0.1mの違いは、意外に取りまわし性に影響する。ヴィッツの1.3Uの4.7mと1.5Uの4.8mは、比率に置き換えれば約2%。それでも狭い道路に面した駐車場の出入りなど、気兼ねなく回り込めるか、少し車両を外側に向けてからハンドルを切り込むかという違いが生じる。

 また車種によって異なるものの、5.3m付近を境に、2車線道路の右折レーンから一発でUターンできるか否か、という差が付くこともある。(渡辺)

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■全高約100mmの違い

ミラとタントエグゼの全高は200mm差があり、居住性の差も大きい
タントエグゼ

●ミラの1530mm、ムーヴの1620mm、タントエグゼの1730mmでは実用上の差は大?

 軽自動車の全長と全幅は各車とも同じ数値だが、全高は低/中/高に分かれる。ミラは1530mm、ムーヴは1620mm、タントエグゼは1730mmで、約100mm間隔になる。

 この差は大きい。そうでないと車種によって低/中/高と全高を変える意味がない。

 走行安定性、居住性、立体駐車場の利用性など、総合バランスが最も優れた全高は、サイズを問わず1550mm弱。フィットなどの値だが、軽自動車の場合、少し着座位置を高めて前後方向の空間を節約するのが合理的だ。

 となればムーヴの高さがベスト。ミラは頭上に若干の圧迫感が伴い、タントエグゼは実用を超えた余裕になる。(渡辺)

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■室内長約100mmの違い

充分な広さを実感できるムーヴの室内

●N-ONEの2020mmとムーヴの2130mmでは実用上の違いは大きいのか?

 クルマの数値のなかで、最も信用できないのが室内長。インパネの一番手前から、後席の後端までを測るため、室内の形状次第で数値が増減する。

 2代目プレサージュは、登場時点の室内長は2995mmだった。ところがマイチェン後は2675mm。インパネなどの形状変更で320mmも減った。別に後期型が窮屈になったわけではなく、居住性は同等だ。

 N-ONEとムーヴの場合は、前後席の乗員間隔が120mm異なり、室内長の違いとほぼ合致する。つまりインパネの形状などは似ていて、室内長の違いが素直に居住性に反映された。見るべきは室内長ではなく、前後の乗員間隔になる。(渡辺)

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■車両重量10kgの違い

MT車は重量税が安いフィット

●フィットは5速MT車が990kgでCVT車は1000kgを超えるが、この差は小さくない?

 車両重量の10kgの違いは、競技などを除く通常の走行では、ほとんど気にならない。

 フィットでも1%の違いで、体重60kgのユーザーが70kgに太れば10kg重くなってしまう。厳密には天井の上やボディの後端が10kg重くなると慣性の影響が拡大し、旋回時にわかるだろうが、このような部分が過度に重くなるケースは少ない。

 むしろ重要なのは重量税。車両重量が1000kgと1010kgでは、エコカー減税対象車で年額2500円、対象外の車種なら4100円の差が付く。

 また10kg重くなって平成27年度燃費基準の重量区分が緩くなり、エコカー減税に該当したり、減税率が高まる場合もある。(渡辺)

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■最大トルク0.1kgmの違い

●ノンターボの2車、eKワゴン「E」の6.0kgmとムーヴの6.1kgmの走りの差は大きい?

 結論から書くと「まったくわからない」。

 トルクは大雑把に言って排気量100ccあたり1kgm。したがって0.1kgmであれば10ccの差。以前から書いているとおり、人間のセンサーって「20%違えば誰でも差を感じる」。

 50ccバイクなら20%も違ってくるためハッキリわかるけれど、660ccの軽自動車なら2%程度。相当敏感な人じゃないとわからないレベルでございます。

 したがって走りの差は「計測しても誤差の範囲」というイメージ。(国沢)

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■全高10mmの違い

●スバルXVは全高1550ミリに抑えたが、それほど10mm程度の違いは大きいのか?

 一般的に全高の数値が問題になるのは、立体駐車場を利用する時だ。

 今は大型車に対応した立体駐車場もあるが、依然として1550mmが分岐点になりやすい。10mm、あるいは20mmといった些細な違いで、利用できるか否かが決まる。

 そこでスバルXVは、最低地上高を海外仕様よりも20mm低く抑え、1550mmに抑えることで立体駐車場の利用を可能にした。

 ジュークは1565mmだが、アーバンセレクションは車高を落として1550mmだ。メルセデスベンツBクラスは1540mmに下げた結果、最低地上高はわずか105mmになっている。全高1550mm付近の10mmの違いは大きい。(渡辺)

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■燃料タンク容量10Lの違い

●アルトは30L、アルトエコは20Lだが、その差はやっぱり大きいのか?

 アルトの低価格グレードの燃料タンク容量は30Lだが、アルトエコは20L。燃料タンクを軽量化した結果ではない。間仕切りを設け、わざと容量を減らした。燃費性能は満タンの状態で測るため、燃料タンク容量10L減らせば、見かけ上は8kg前後の軽量化になるからだ。

 ミライースは30Lで、アルトエコの手段はかなり姑息だが、そこまで今日の燃費競争は激化している。

 一番困るのはユーザー。アルトエコの燃費性能は大幅に向上したが、同じ量のガソリンでノーマルエンジンの1.5倍までは走れない。給油の回数が増えてしまう。10Lの違いでも減らすのは不親切だ。(渡辺)

アルトエコは燃料タンクが小さい

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■最大トルク発生回転数1000回転の違い

●ワゴンRは4000回転、ムーヴは5000回転以上だが走りの差はどうだ?

 エンジンの性能では最高出力より最大トルクが重要とされるが、後者の発生回転数も見逃せない。最大トルクの数値が高くても、高回転域で発生したら使い切れない。4000回転を超える領域で速度の上昇が活発になる車種は意外に多い。

 ワゴンRは6.4kgmの最大トルクを4000回転で発生するが、ムーヴは6.1kgmで5200回転。車両重量もムーヴが20kg重いが、エンジンの性格で実用域の加速が物足りない。1000回転の差は大きい。(渡辺)

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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