世界には多くの自動車博物館が存在している。しかし、そこに並べられているのは、お宝モノのヴィンテージカーだけじゃない。奇抜で自動車と呼ぶには疑問符が付くものもある。今回はオランダで見つけた珍車を紹介していみたい。
文・写真:高桑秀典
■オランダにある希少車だらけの博物館
アムステルダム、ロッテルダムに次ぐオランダ第3の都市であるデン・ハーグに「LOUWMAN MUSEUM」という自動車博物館がある。2016年に訪問したが、アムステルダムからクルマで1時間程度の距離だったと記憶している。
日本語で書くとローマン・ミュージアムということになる同館は、オランダのトヨタ代理店として知られるローマン・アンド・パルキー社が運営している自動車博物館だ。
オリジナルのトヨダAA型も展示。オランダにある施設ということで、スパイカーのコレクションは世界最大だといわれている。
戦前からオランダでダッジの輸入を手がけていたP.W.ローマンとその愛息による2世代のプライベート・コレクションを一般公開しており、多彩な展示内容となっている。
日本では見かける機会がない珍しいクルマがたくさん展示されていたが、その最たるものがスワンカー。これ、完全なる飾り用かと思ったら、かつて公道を走っていたという。
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■蒸気を口から排出する奇妙な乗り物
このスワンカーが誕生したのは1910年のことで、当時のイギリス領インドの首都であったカルカッタに住んでいた裕福なスコットランド人、ロバート・ニコル“スコッティ”マシューソンの注文に応じて製造された。
この風変わりなスコットランド人は、地方領主達を驚かせようとして排気量3.2Lの4気筒エンジン(最高出力20ps)を積んでいるスワンカーを運転。見事、驚愕させることに成功した。
初めてこのスワンカーがカルカッタの街に出たとき、冷却装置と連動したくちばしから蒸気を放出させ、電球が仕込まれ、暗闇で不気味に光る目をギョロつかせながら移動。群衆がパニック状態に陥り、警察が介入したそうだ。
どうやら、キーボードで操作できる8音階の耳障りな音(排気駆動)を発し、より奇抜に見せるため、車体後部のバルブから航跡を残すための白い粉を落としていったのだという。
リアには、古代より神の知恵の象徴とされてきた金箔で仕上げられた蓮の花がデザインされていた。
運転手への命令には船舶用電信機が使われ、タイヤが集めた象の糞を掃き出すためのブラシも取り付けられていた。
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■子供用に小型版まで作られていた
その後、マシューソンはスワンカーをナバのマハラジャに売却し、新しいオーナーは1920年代に自身の領地で使用するために小型版スワンカーを造らせた。
自分の子どもたちのために生産した小型版スワンカーは、鋼板を手で叩き出したボディに電気モーターを取り付け、ベビースワンまたはシグネットと呼ばれた。
ナバのマハラジャ一族は70年以上所有したが、1991年にローマン・ミュージアムの所有となり、両車は現在博物館で再会している。
ちなみに、スワンカーはオリジナルの状態で発見されたが、豪華なインドシルクはネズミに食い荒らされていた。座席の下にオリジナル生地の残骸があったため、インドの織物工場に新しいものを発注。
すべてのギミックが再び動くようにされ、1993年にスワンカーはカリフォルニアで開催されている権威あるペブルビーチ・コンクール・デレガンスでモンタグ賞を受賞した。
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