小型FRモデルの代名詞的存在だった日産「シルビア」。2002年に最終モデルが販売終了してから20年以上も経過しているが、いまも根強い人気を誇っており、中古車は安くても150万円以上、程度のいい個体となると500万円以上もするものもある。
近年は、シルビアのような個性豊かな名車がメーカーから復活する例は珍しくなく、シルビアにもそのウワサが何度もあったが、残念ながらここまで復活が叶うことはなく、おそらく今後も難しい。ただ、当時を知るファンとしては忘れることができないくらい、いいクルマだった。シルビアの魅力を改めて振り返りつつ、もし復活があるとしたらこうなるのでは、という展望についても考えてみよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN
手頃な価格で手に入れられる美しいFRスポーツカーだったシルビア
日産「シルビア」は、1965年に初代モデルが登場し、7代目モデルが2002年に販売終了となるまで、7代37年にわたって生産・販売されたクルマだ。
特に人気となったのは5代目(S13)以降だ。当時はホンダ「プレリュード」が「デートカー」として大人気であり、その対抗馬として開発されたS13は、コンパクトな車体でありながら、優雅でモダンなデザイン。そのため、女性の間でも人気だったが、プレリュードとは異なりFRレイアウトを採用していたため、スポーツカーとしての素養にも満ちていた。
1980年代後半は、すでに小型FRモデル自体が希少であり、ターボモデルが存在し、かつ手頃な価格で手に入れられるシルビアは、たちまち走り屋の間で人気の車種となった。
スペシャルティカーを意識してボディサイズを拡大した6代目(S14)は、商業的に成功したとはいえなかったが、7代目(S15)では5ナンバーサイズにダウンサイジングして登場。シルビア本来の「小型FRスポーツカー」の魅力を取り戻した。
ただ、厳しい排ガス規制に対応することができなかったことや、時代はすでにミニバンやクロスオーバーSUVに人気が移っていたことなどから、2002年に生産終了となってしまった。
シルビアの中古車をもっと見る ≫シルビアを当時の魅力のまま復活させるのは不可能
小型車が続々とFFレイアウトを採用していく時代にあっても、生涯を通してFRレイアウトを貫いたシルビア。FRレイアウトは部品点数も多く重量もかさむし、またスペース効率が悪く実用性に影響を与えるが、FRならではの素直なハンドリングや、発進加速時の接地感や安定感は「走っていて楽しい」という感覚をもたらしてくれる。
そんなFRレイアウトを採用しながら、デザインにこだわりがあったというのが、シルビアがいまもファンの心をつかんで離さない理由だろう。どうしても「男性の趣味」というイメージが前面に出てきそうなスポーツカーを、こだわりのデザインによって女性ウケもよく、走り屋でなくても乗りたいと思わせる、スペシャルティカーとしての魅力も兼ね備えていたのだ。
そのため、もしシルビア復活があるならば、FRレイアウトと低いボンネットは必須だ。ただ、いまの日産には小型FRプラットフォームがなく、たとえ高額となったとしても購入を希望してくれるファンがどれほどいるのかも見通しが立たないこの時代に、シルビアのためだけにイチから開発するのは考えにくい。そう考えると残念ながらシルビアの復活はほぼありえない。
バッテリーEVでの復活ならあり得るのでは!??
ただ、電動化に力を入れる日産が、そのプロジェクトとユーザー層拡大の一環でシルビアを復活させる可能性はゼロではないと筆者は思う。
バッテリーEVは、バッテリーさえコンパクトにできれば、パッケージングやデザインの自由度が内燃機関モデルとは比較にならないほど高い。そのため、シルビアのような小型FRスポーツカーも開発することは可能だ。シルビアがFRレイアウトを採用した背景には、「ボンネットを低く抑えてスポーツカーらしいデザインを優先させる」という狙いもあったが、ガソリンエンジンよりも省スペースで済む電気モーターのバッテリーEVならば、(歩行者保護の観点の対策は必要だが)低いフードのデザインも実現することもできる。コストを度外視すれば、後輪をインホイールモーター化してもよいのではないだろうか。
シルビアは初代からデザインコンシャスな一面を持っていたモデルだ。安全性、走行性能を含め、時代に合わせた未来的なモデルが完成すれば、立派にシルビアという個性を再び世の中に送り出すことは可能だと筆者は思うのだ。
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日産は2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVの市場投入を目指すと発表している。同時に幅広いセグメントのリリースが予定されているため、その一環としてシルビアが復活という流れもあり得る。また、600万円以上もするフェアレディZが人気殺到して抽選販売となる今ならば、車両価格は多少盛っても大丈夫かもしれない。ぜひ期待したいところだ。
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