今後の自動車業界において何が一番重要視されているか、と言われたらやはり環境問題が挙げられるだろう。最近ではカーボンニュートラルも謳われる中、ホンダが遂にGMと共同開発した新世代の燃料電池を開発。早速この電池が搭載された車両に乗ってきたのだが、これが次世代を担うに違いない、無限の可能性を秘めたユニットであった!!

文:国沢光宏/写真:ホンダ

■ぶっちゃけたところ、燃料電池車ってどうなん!?

まだまだ各メーカーは手探り状態

 私自身、燃料電池車MIRAIを2台乗り継いでいるのだけれど、他の人にすすめられるかとなれば微妙。というか「よ~く考えた方がいいですよ」とアドバイスするだろう。理由は簡単。水素ステーションが増えないからだ。

 加えて水素価格も厳しい。エネオス系など当初の2倍になってしまった。1kgで100kmくらい走れるのだけれど、現在2200円。リッター10km/Lしか走らないエンジン車と同等の燃料コストだったりする。

 環境にやさしいパワーユニットなのだけれど、国は全くやる気無いということです。一方、カーボンニュートラルということを考えたら燃料電池は理想に限りなく近い。

 クリーンな電気を作ろうとすれば、太陽光発電が最も安価。火力や水力、原子力より安い。されど作りすぎると貯めなくちゃならない。蓄電池に貯めるか、水素にして貯めるか、だ。

 おそらく両方必要になると思う。水素にした分は燃料電池で使うと最も効率良い。

 水素ステーションさえあれば現時点だって全くストレス無し! 電池だと満充電までそれなりに時間掛かるが、水素であれば3分も掛からず。満充填すると500kmくらい走れてしまう。

 繰り返しになるけれど”水素ステーションあれば”ガソリン車と同じように使えます。国がヤル気になると、電気自動車より利便性高い--ということをトヨタもホンダも認識しているのだろう。燃料電池を止めたくないのだった。

 正しい判断だと思う! 中国や欧州、アメリカを見ると徐々に燃料電池への感心を高めている。考えて欲しい。電気自動車用の電池は日本の技術によって実用化されたものの、普及速度遅かったので中国にやられてしまった。

 燃料電池だって同じ。開発を止めた途端、今までの努力や投資がムダになります。今回発売されたCR-Vの燃料電池PHEVはそんな大局的な理由から開発されたのだった。いろんな意味でホンダの意地を感じます。

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■ホンダが考えた究極の実用性

いつだってホンダの着眼点は鋭い

 さて。ホンダは「どうやったら燃料電池車の実用性を高められるか?」を考えたに違いない。答えが今回発売した燃料電池PHEVだったということです。走行用電池を17.7kWh搭載し、カタログデータでEV航続距離61kmとした。

 実力を80%とすれば50kmくらい走れると言うことになる。つまり毎日50kmくらいの距離だと電池自動車として使えることを意味する。電池無くなったら水素で走ります。

 逆に次の水素ステーションまでギリギリという場合、最初に水素を使っておき、無くなったら電気で走るというチョイスも出来る。文頭に書いた通り私はMIRAIに乗っているけれど、仕事で都心まで出て帰宅すると40km程度。

 MIRAIだと3~4往復したら水素が3分の2くらいになる。その状態だと箱根とかには行く気になれない。参考までに書いておくと自宅から水素ステーションまで1時間掛かるため、簡単には行けない。

 結果的にガソリン入れればストレスなく走れる普通のクルマに乗ってしまう。MIRAIは上のような事情で4年目ながら1万kmくらいしか乗っていない。

 CR-VのようなPHVであれば普段は電気自動車として使い、満タンの水素量をキープしておく。そうすれば突然の400kmドライブをする時も問題なし!

  最悪水素切れになったって充電することで50km走れる。CR-Vなら1台でやれるんじゃなかろうか。

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■実際に乗ってみたけど、めっちゃ良いじゃんこれ!

今回試乗したCR-V。他社のクルマに全然劣ってないぞ!!

 超長い前置きになった。そんなことを考えながら試乗してみたら、とても良いクルマである。基本は電気自動車なので静か&滑らか。

 発電機として使う燃料電池はスタートシーケンス(圧縮空気でスタック内の水分などを飛ばす)で派手な空気音を出すものの、走り出したら無音といってよい。

 GMと共同開発した新世代の燃料電池、クラリティに搭載されていたタイプより寿命2倍。コスト半分になったそうな。

 クラリティで気になったターボポンプの耳鳴りのような高周波は無くなっており快適。現行MIRAIに搭載されているトヨタの燃料電池と同等の性能を持つと考えていいだろう。

 今回は北海道のテストコースにある一般道を模した様々な道を走ってみたが、乗り心地上々! 低重心のため、SUVだということを意識しない安定したハンドリングだった。水素ステーションさえ増えたら、ガソリンPHVと同じように使えます。

 興味深いことにホンダは依然として販売はしない。5年のクローズドエンドリースのみ(クルマは5年後に返却)。価格も少しばかり高い。だからこそ70台というリース目標になっている。

 ただ70台が様々な道を走ることでデータも貯められるし、課題だって出てくると思う。そいつを「コストは今の半分。寿命を2倍にします」(ディーゼルエンジンと同等)という次世代の燃料電池に活かせば日本の技術や競争力をキープ出来ると考える。

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