はたらくクルマの代表格であるトヨタ「ハイエース」の現行モデルが登場したのは、2004年のこと。すでに20年選手であり、最新装備よりもベーシックな機能を追求する商用モデルとはいえ、そろそろフルモデルチェンジを期待したいタイミングです。
クルマの電動化が求められるなか、次期ハイエースの姿としては、ジャパンモビリティショー2023でトヨタが出展した「KAYOIBAKO」のコンセプトが近いようにも思えますが、はたしてどうなるか。KAYOIBAKOについて振り返りながら、次期型ハイエースの姿を予想してみましょう。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA
超拡張性能を備えるKAYOIBAKOは、未来のハイエースの姿かも
「好きなときに・好きな場所で・好きなことができる」モビリティの未来を実現するコンセプトモデルだというバッテリーEVの「KAYOIBAKO」。小口輸送や移動販売車としてや、その名のとおり、拠点の間を行き来しながら部品や製品を安全かつ効率的に運ぶ「通い箱」のような使い方などのビジネスユースのほか、好みにカスタマイズをしてオンリーワンのモビリティに仕上げるプライベートユースとしても活用できるなど、超拡張性能を備えているのが特徴。現在のハイエースも、ビジネスユースからプライベートユースまで、さまざまなシーンで活躍していることを考えれば、KAYOIBAKOは、未来のハイエースのように捉えてもいいのかもしれません。
ハイエースワゴンの中古車をもっと見る ≫ただ、少なくとも次期型のハイエースでは、BEVは厳しい
しかしながら、次期型ハイエースが、KAYOIBAKOのようになるのかというと、それはちょっと違和感ありますよね。
まず真っ先に、ハイエースがBEVで成り立つのか、という疑問が浮かびます。ハイエースは、平均で年間3万キロから4万キロ、なかには5年間で30万キロを超える距離を走るような使い方をされるクルマ。一般人が乗るBEVよりも数倍は走行する使い方に耐えられなければならず、航続距離の問題やバッテリーの耐久性の問題、車両価格の問題など、厳しい課題がたくさんあります。
決まったルートを巡回するバスや、工場で使われる巡回バス、通学バスなどは、バッテリーEVでもよいかもしれませんが、一般的なハイエースユーザーにおいては、ハイエースがBEVになってしまうことは受け入れられないでしょう。
次期ハイエースは、マイルドハイブリッドでは?
バッテリーEVの線は低く、だからといって、乗用車向けのハイブリッドシステム(THS-II)を積むというのも、道具であるハイエースにとっては、スマートではありません。そのため筆者は、次期ハイエースはマイルドハイブリッドになるのではないかと考えています。
積載重量700~1200kg(ボディタイプによる)にもなるハイエースに必要なのは、ゼロ発進時のトルクです。既存のガソリンエンジン、ディーゼルエンジンに、発進時アシスト用の電気モーターをアドオンしたパラレル式ハイブリッドならば、強力なモータートルクの効果で、発進時にアクセルを踏み込む量が減るため、ガソリン消費量を抑制でき、かつ最小限のコストアップで済みます。
「いまさらマイルドハイブリッド?」と思うかもしれませんが、これまで直噴化やターボ化にとどまっていたハイエースにとっては、大きな進歩です。
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2024年1月の東京オートサロンでは、アフターパーツメーカーのHKSが、ハイエースをプラグインハイブリッドへコンバートした「e-ハイエース」を出展していました。HKS担当者によると、ベース車の2.7Lガソリンエンジンはそのまま残し、トランスミッション部分を発電用モーターと駆動用モーターを組み合わせたHKS製モーターユニットへ置き換え、25kW/hの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載したPHEVとのこと。エンジンは発電に特化したシリーズハイブリッド方式にしたそう。既存のユニットを置き換える(コンバージョン)ことで簡単に電動化できるe-ハイエースも、現実的なソリューションとしてはいいアイディアだと思います。
はたして、次期型ハイエースはどのような電動アーキテクチャを取り入れてくるのか!?? 次期型ハイエースの登場が非常に楽しみです。
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