創立から120年を超え、源流をたどると19世紀前半までさかのぼる米国の老舗トラックメーカー「ナビスター」が社名を変更。創立当初の名称であり、トラックのブランド名となっていた「インターナショナル」を新社名として復活させた。

 自動車業界で世界有数の老舗企業が、商用車を中心とするソリューション・プロバイダーとして、「次の200年」の成功に向けて変革を続けている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/International motors, llc・NAVISTAR INTERNATIONAL

ナビスターが社名変更

インターナショナルのフラッグシップモデルラインを担う「ローンスター」。いかにもアメリカンなコンベンショナル・キャブの大型トラックだ

 創立から120年を超える歴史を持つ米国の老舗自動車メーカーで、フォルクスワーゲンの商用車部門「トレイトン」グループに属するナビスターは、2024年9月25日、社名変更を発表した。

 正式な社名は10月1日より「Navistar, Inc.(ナビスター・インク)」から「International Motors, LLC(インターナショナル・モーターズLLC)」に変更される。社名変更に合わせて、ロゴとビジュアル・アイデンティティも刷新する。

 同社の源流は19世紀前半までさかのぼることができるが、農業機械の「マコーミック」と「ディアリング」が合併し「インターナショナル・ハーベスター」が誕生した1902年を創立の年としている。

 インターナショナル・ハーベスターから数えて120年以上、マコーミックから数えれば200年という自動車業界でも有数の老舗企業である。

 インターナショナル・ハーベスターは、農業機械部門を売却したことなどから1986年に「ナビスター・インターナショナル」に社名を変更。その由来はトラック製品の名称であった「〇〇スター」と「ナビゲーション」を合わせたものとされた。

 2020年にトレイトンがナビスター・インターナショナルに買収提案を行ない、買収額の引き上げなどの交渉を経て2021年にトレイトン傘下に入った。これに合わせて社名は「ナビスター・インク」に変更されていた。

 ナビスターとしては、トラック部門を「インターナショナル」、バス部門を「ICバス」ブランドで展開していたが、この度、社名の「ナビスター」を廃止し、創立時の名称であり、トラック部門のブランド名である「インターナショナル」を社名として復活させた次第である。

ブランド変更を通じてエクスペリエンスを強化

「MV」シリーズのフル電動バージョンとなる「eMV」。充電サービスなどのソリューションは新社名となったインターナショナル・モーターズでさらに強化される

 今回のリブランディングは、ビジネスを「ソリューション・プロバイダー」へ変化させて行くという戦略に合わせたもので、社名をトラックのブランドであるインターナショナルに統一することで、一貫した顧客体験を提供するという狙いもある。

 インターナショナル・モーターズの戦略・変革責任者を務めるトビアス・グリッタースタム氏はプレスリリースにおいて次のようにコメントしている。

「120年以上の時を経て、弊社は私たちの原点である『インターナショナル』に戻ることを選択しました。この新社名はパートナーシップとコラボレーションにより、あらゆる課題にソリューションで応えるという決意を体現しています。これは、より優れた顧客体験を提供するためのビジネス戦略の変更を補完するものです」。

 インターナショナル・モーターズとなった同社は、トラック・バスの開発・製造以外にも注力していく。

 ソリューションへの投資を進め、顧客体験をシンプルにするという戦略転換を図っているが、もちろん商用車という製品は顧客とのインタラクション(やり取り)の中心であり続ける。いっぽうで部品供給、メンテナンス、ファイナンス、コネクティビティ、充電サービスなど、車両に付随するソリューションを「インターナショナル」として拡充する。

 現在提供している複数のツールは、数か月をかけて「マイ・インターナショナル」と称するデジタルインターフェースに統合する予定で、サービス契約や車両管理など、すべてのデータとソリューションを1か所に集めることで、エクスペリエンスの強化とカスタマイズを可能にする計画だ。

原点に回帰し、「次の200年」へ

インターナショナルの新しいロゴ。「道路」からインスピレーションを得たとか

 こうした進化は、2021年から進めているより広範な変革と軌を一にしたものだ。例えばインターナショナル「S13」統合パワートレーンのローンチ、バッテリーEV所有者への包括的なソリューションの提供、金融分野での「インターナショナル」専用保険の刷新などもその一環だ。

 また、社名変更と同時にビジュアル・アイデンティティ(ロゴ)も更新され、公式サイトとSNSチャネルを通じて紹介された。「道路」を再デザインしたもので、ロゴや色、タイポグラフィーなどは道路の日常からインスピレーションを得たそうで、交通の流れ、都市部を走行中の加減速、曲がりくねった田舎道などを反映しているという。

 ロゴの変更は、車両のほかデジタルツールやディーラーネットワークなど「インターナショナル」ブランド全体に拡張される。

 社長兼CEOのマティアス・カールバウム氏は次のようにコメントしている。

「『インターナショナル』への復帰は弊社の豊かな伝統を誇るとともに、将来への投資を約束するものです。ブランド構造の簡素化と明確なビジュアル・アイデンティティ、そしてお客様との関係性をもっと大切にするというクリアな戦略により、次の200年の成功を目指します。インターナショナル・モーターズとして、私たちは新しい段階に入ります」。

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