ランドクルーザーから見て分かるように、本格ヘビーデューティSUVの注目度が高い! オフロードでの圧倒的なタフさが命のヘビーデューティSUVだが、やっぱり気になるのは普段の街乗り。乗り心地や取り回しなど、普段使って快適な大型ヘビーデューティSUVはどのクルマか徹底チェックした!!

※本稿は2024年9月のものです
文:片岡英明/撮影:奥隅圭之/写真:ランドローバー
初出:『ベストカー』2024年10月10日号

■デカッ! 圧倒的存在感の4台

片岡英明氏が街に乗り出して扱いやすさをチェック

 ランドクルーザーは世界中に名声が轟きわたっている本格派のクロスカントリーSUVだ。ランクル250は兄貴分のランクル300と同じ最新のラダーフレーム、GA-Fプラットフォームを採用して誕生した新シリーズだ。

 従来のプラドから大型化し、全長は5mに迫る。全幅も1980mmと、超ワイドだ。サイズ的には兄貴分のランクル300より少し小さいだけで、ランクルプラドよりもずっと大きい。このサイズだと街なかでの取り回しや機動性が心配だから、街に乗り出し、扱いやすさをチェックしてみた。

 比較のライバルとして引っ張り出したのは、兄貴分のランクル300だ。そしてランドローバーブランドのなかで最もヘビーデューティーなディフェンダーと、ジープ直系のラングラーも同行させて、視界や取り回し性を比較した。

 ディフェンダーのロングボディである「130」はランクル300を超える大型。しかもスペアタイヤを背負っているから実際の全長は5mをはるかに超える。ラングラーはライバルより少し小ぶりだが、ホイールベースはディフェンダーなみの3010mmと思いのほか足長だ。

 まずは首都高や幹線道路を走る。SUVのいいところはアップライトなドライビングポジションで視界がいいことだ。見下ろし感覚で、フロントピラーも立ち気味だから運転席から障害物などを発見しやすい。これはオフロードや林道に踏み入れたときにも感じられる美点である。

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■街を走って快適なのはどのクロカンSUVだ?

トヨタ ランドクルーザー250とジープ ラングラー。発売が新しいだけにモダンなテイストの250とは対照的に、ラングラーは20世紀の香りを色濃く残している

 撮影当日は雨まじりで風も強かったが、各車地に足がついた走りを見せつけた。なかでも安心感があったのはディフェンダーだ。エアサスペンションならではの上質な乗り心地に加え、コーナーでも無駄な動きを上手に抑え込んでいる。

 2.6トンを超える重量ボディだが、ディーゼルターボは余裕の走りを披露した。不快な振動を上手に抑え込み、遮音も行き届いているから静粛性も高い。

 逆に『20世紀のSUV』の印象が色濃かったのがラングラー。最もスパルタンなルビコンだったこともあり、最新モデルでもライバル3車よりハードな乗り味だ。高速走行では風切り音も小さくない。エンジンは40.8kgmを発揮する直4、2Lガソリンターボだから加速は俊敏で、速い流れを無理なくリードする。

 いい意味でも悪い意味でもアメリカの香りを強く感じさせ、操って楽しいと思えるSUVだ。ドライビングポジションやペダル配置なども、右ハンドル車だとクルマに合わせる必要があった。ステアリングを握っていてちょっと閉塞感がある。直接のライバルは、ランクルでも昭和生まれの70系になるだろう。

 注目のランクル250は街中から高速道路まで扱いやすく現代のSUVだと感じる。実際は大柄だが、走っていると大きさを意識させない。高速道路をストレスなく走れるし、コーナリングでも背の高さを意識させない安定感だ。

 2.8Lディーゼルターボは4気筒だが、8速ATの採用により意のままに走れる。静粛性もなかなか高い。

 その上を行くのがランクル300だ。ディフェンダーに近い性格で、悠々とした余裕の走りを披露した。3.3LディーゼルエンジンはV型6気筒のターボ付きで最大トルクは71.4kgm。加速はいいし、スムーズさや静粛性などの上質感でも4気筒のランクル250の一歩上を行く。

 大柄だが意外にも取り回しがいいのもランクル300の魅力である。驚いたことに最小回転半径は4車のなかで一番優秀な5.9mだ。ランクル250は6.0mだが最新の電動パワーステアリングの採用によって滑らかな旋回を実現した。

 また、舗装路を駆け抜けた時の走りの軽快感とスポーティな味わいもライバルにはないランクル250の魅力と言えるだろう。

 ちなみにディフェンダーの最小回転半径は6.1m、ラングラーは全長が短いにもかかわらず6.2mである。これは悪路走行を意識して舵角を抑えていることもあるのだろう。取り回ししやすいのは日本勢だ。

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■狭い住宅街でも最近のクロカンは使いやすい!?

トヨタ ランドクルーザー300とランドローバー ディフェンダー130。余裕の動力性能でクルージングは超快適!!

 ちなみに前方視界と見切りではラングラーの見切りのよさが光っていた。身長100cmの飛び出し坊やを前に置き、見えなくなる位置をチェックしたが、ラングラーは72cmまで近づくことができる。ただし、バンパーの張り出しは大きいから油断は禁物だ。

 ランクルはどちらもボンネットの両側を盛り上げる一方中央をくぼませている。そのため直前の情報を得やすいし、見切りもいい。ディフェンダーはボンネットの真ん中を膨らませているので近くに入られると確認しづらかった。

 だが、最新のSUVはフロントとリアにカメラを組み込んでいるからモニターを見れば周囲の障害物を確認できる。この点でも最新のランクル250は確認しやすかった。

 リアのブラインドになる部分も目視だけでなくカメラの映像で確認しやすい。振り向いての目視では、ディフェンダーとラングラーの後方視界が今一歩だった。リアにスペアタイヤを背負っていたからだ。バックする時は、細心の注意を払う必要がある。また、大柄だから、駐車するスペースに余裕がないと大変だ。

 ディフェンダーはエアサスを使って最大293mmまで地上高を拡大することができる。駐車する場所によっては、隣のクルマのドアパンチを防げるだろう。ただし、乗降には慣れが必要だ。

 SUVはサイドステップが重宝する。ラングラーのオートサイドステップは便利な装備で、小柄な人でも乗り降りに苦労しない。だが、フェンダーの張り出しは大きいので要注意だ。

 ランクル300とランクル250は、都市部でも扱いやすく感じた。特にランクル250は、ビギナーでも扱いやすいと感じるはずだ。ただし、背は高く、全幅も広いので、慎重な運転を心がけたい。

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■大型ヘビーデューティSUVの前方視界はどんなもん?

トヨタ ランドクルーザー250 前方視界80cm ヒップポイント88cm 左右も含め見切りは悪くないのだが前方の視界にはより注意が必要

 前方視界を確認するため、身長100cmの「飛び出し坊や」を車体中心前方に置き、運転席から完全に見えなくなる距離を測った。距離は各車のバンパー前端からとした。また、各車のヒップポイントを参考として実測。これは路面から運転席座面上面までの距離。アイポイントの参考としていただきたい。

●トヨタ ランドクルーザー300

 前方視界75cm ヒップポイント88cm フード中央が凹状になり、中央部の視界を助けているのが嬉しい。

●ジープ ラングラー

 前方視界72cm ヒップポイント90cm フロントグリルからバンパー前端まで35cm程度の張り出しがある。

●ランドローバー ディフェンダー130

 前方視界94cm ヒップポイント94cm 車体前方の小さい子どもにはより注意。カメラ画像を活用したい。

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■結論! 街なかで乗って快適な大型SUVは?

大型ヘビーデューティSUV街乗り評価採点チェック

 ビッグサイズSUVでも走ってしまうとサイズを意識させない。住宅地など狭い道に入り込んでも車両感覚はつかみやすい。

 ランクル300はすべてに余裕があり、プレミアム感が漂う。その上を行くのがディフェンダーだ。高価だが舗装路の走りでも絶大な安心感と上質感を秘めている。

 ランクル250は舗装路でも悪路でも扱いやすく、混んだ街中の走りも余裕でこなした。ラングラーは古典的な味わいが強いが、馴染めればとても楽しい。

●トヨタ ランドクルーザー250 ZX(価格:735万円)
・WLTCモード燃費:11.0km/L
・全長×全幅×全高:4925×1980×1935mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2410kg
・エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・総排気量:2754cc
・最高出力:204ps/3000-3400rpm
・最大トルク:51.0kgm/1600-2800rpm
・モーター出力/トルク:―
・トランスミッション:8速AT
・最低地上高:225mm
・最小回転半径:6.0m
・フロントサスペンション:ダブルウイッシュボーン
・リアサスペンション:トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/65R18
・アプローチアングル:30度
・ランプブレークオーバーアングル:23度
・デパーチャアングル:23度

●トヨタ ランドクルーザー300 GR SPORT(価格:800万円)
・WLTCモード燃費:9.7km/L
・全長×全幅×全高:4995×1990×1925mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2560kg
・エンジン:V型6気筒DOHCディーゼルターボ
・総排気量:3345cc
・最高出力:309ps/4000rpm
・最大トルク:71.4kgm/1600-2600rpm
・モーター出力/トルク:―
・トランスミッション:10速AT
・最低地上高:225mm
・最小回転半径:5.9m
・フロントサスペンション:ダブルウイッシュボーン
・リアサスペンション:トレーリングリンク車軸式
・タイヤサイズ:265/65R18
・アプローチアングル:32度
・ランプブレークオーバーアングル:25度
・デパーチャアングル:26度

●ジープ ラングラー Unlimited Rubicon(価格:889万円)
・WLTCモード燃費:9.2km/L
・全長×全幅×全高:4870×1930×1855mm
・ホイールベース:3010mm
・車両重量:2110kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ
・総排気量:1995cc
・最高出力:272ps/5250rpm
・最大トルク:40.8kgm/3000rpm
・モーター出力/トルク:―
・トランスミッション:8速AT
・最低地上高:200mm
・最小回転半径:6.2m
・フロントサスペンション:コイルリジッド
・リアサスペンション:コイルリジッド
・タイヤサイズ:LT255/75R17
・アプローチアングル:44度
・ランプブレークオーバーアングル:22.6度
・デパーチャアングル:37度

●ランドローバー ディフェンダー130アウトバウンドD300(価格:1206万円)
・WLTCモード燃費:9.9km/L
・全長×全幅×全高:5275×1995×1970mm
・ホイールベース:3020mm
・車両重量:2610kg
・エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
・総排気量:2993cc
・最高出力:300ps/4000rpm
・最大トルク:66.3kgm/1500-2500rpm
・モーター出力/トルク:18ps/4.3kgm
・トランスミッション:8速AT
・最低地上高:218.5mm(ハイ:293mm)
・最小回転半径:6.1m
・フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン
・リアサスペンション:インテグラルマルチリンク
・タイヤサイズ:255/60R20
・アプローチアングル:30.6度(37.5度)
・ランプブレークオーバーアングル:22度(27.8度)
・デパーチャアングル:24.5度(28.5度)
※( )内はオフロードモード時の数値

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