自動車は日進月歩で進化している。それに合わせて装備の多様化も進み、先進技術を用いた機能やアイデアものの機構など、さまざまな装備が採用されてきた。ところが、そんななかで「何コレ!? 正気!?」というものがあったのも事実。そこで今回は、世間をアッと言わせた装備を紹介する。

文/木内一行、写真/トヨタ、日産、ホンダ、三菱

■「マイクを握って車内で一曲どうですか?」日産・セドリック/グロリア(Y30)

カセットデッキはセンタークラスター上段左側にレイアウトされており、そこにマイク用のアウトプットジャックも設置されている。カールコードと下側にチラリと見えるバスガイド風のマイクがなんともいえない

 1983年にモデルチェンジした6代目セドリック/7代目グロリア。

 Y30の愛称で知られるこのモデルは、エンジンをそれまで搭載されていた直列6気筒からV型6気筒(国産車初!)に変更し、後には光通信ステアリングやキーレスエントリーシステムといった先進装備のほか、スーパーソニックサスペンションや電子制御オートレベライザーなどの最新テクノロジーも投入され、注目を集めた。

 そんな時代の最先端を突っ走っていたフラッグシップモデルに搭載された珍装備が、録音機構付きカセットデッキだ。

 ラグジュアリーサルーンだけに、最高級オーディオが装備されるのはごく自然なこと。しかし、録音機構付きというのは非常に珍しい。

 しかも、ご丁寧にエコー機能付きのマイクまで付属しているのだ。

 コレは間違いなくカラオケ用。自分の美声を車内で響かせ、それを録音するための機構なのだろう。マイクを握って熱唱し、それを録音する。そんなシーンを想像すると、実にシュールだ。

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アイデア倒れの珍装備とおじさんが復活してほしい昭和の[クルマ装備]

■「見えづらい? ならワイパー付けちゃおう」マークII3兄弟(X81系)

 1980年代にはハイソカーとして一時代を築いたマークII3兄弟。

 その勢いをそのままに、1988年にはX81系へスイッチ。キープコンセプトでシャシーも先代からのキャリーオーバーだったが、バブル経済真っ只中ということもあり、作りはとにかく贅沢で装備も至れり尽くせり。上位クラスのクラウンにも迫る内容だった。

 そんななかで注目を集めたのが、サイドウィンドウに装着されたワイパー。もちろんこれは世界初の装備で、ドアミラーや側方の視界確保に大きく役立つというもの。

 さらに、ウォッシャー機能も付いているので、多少汚れていてもすぐにクリーンな視界が確保できるのだ。 

 ちなみに、1990年のマイナーチェンジでは超音波の振動とヒーターで鏡面に付いた水滴を除去する、超音波雨滴除去装置付きドアミラーも新採用。サイドウィンドウワイパーと組み合わせて装着することで、最強の視界を手に入れることができたのである。

 実際に使うか使わないかはさておき、サイドウィンドウにワイパーが装着されているのはとにかく斬新だ。

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■「スポーツカーだって周囲に気を遣います」三菱・GTO

 三菱GTOといえば、90年代を賑わせた重量級スポーツカー。リトラクタブルヘッドライトを採用したペタンコでワイドなスタイリングはマッチョ感たっぷりで、ライバルに当たるスカイラインGT-Rとは大きく異なる趣だった。

 しかし、メカニズムはホンモノで、ツインターボと自然吸気という2種の3ℓV6エンジンを搭載し、前者は280ps/42.5kg-mを発揮。駆動方式もツインターボはビスカスカップリング式フルタイム4WDとし、4WS機構や電子制御サスペンションも搭載した。

 こんな漢らしさの塊のようなGTOだが、実はソレっぽくない装備もあった。それがアクティブ・エキゾーストシステムだ。

 これは、メインマフラーへの排気ガスの流入経路を切り替えることで、ノーマルモードとサイレントモードを切り替えることが可能なシステム。

 高速やワインディングではノーマルモードでかっ飛ばし、夜間はご近所へ配慮してサイレントモードで帰宅……なんて使い方ができるのだ。

 そう、GTOは強くて心の優しいスーパーヒーローのような存在なのである。

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■「食事が進み会話も弾む これはもう自宅でしょ」ホンダ・ステップワゴン(2代目)

1列目を回転させて2列目をテーブルとして使うレストランモードは、まるで自宅にいるかのよう。このほか、2列目を回転させてリビング風に使う対座モードや、ゆったり寝られるフルフラットモードなどにより、どんなシーンにも対応する

 ファミリーカーの新たなスタイルを築き、累計約47万台という大ヒットを飛ばした初代ステップワゴン。

 2代目では、その初代のコンセプトを受け継ぎながらボディサイズをアップ。さらに、フロントショートノーズ設計と低床フラットフロアにより、居住空間も拡大された。そして、利便性の高い装備を採用し、日常での使い勝手が高められたのである。

 そんな2代目のアピールポイントが、さまざまに変化する室内空間。多彩なシートアレンジを得意とするのは初代と同じだが、2代目では画期的な機能を搭載。なんと、1列目シートも回転するようになったのだ。

 これによって可能となったのが「レストランモード」。

 1列目を回転させ、2列目を折りたたんでテーブルにする。そして、3列目と向かい合わせて座ればレストラン風のレイアウトの完成だ。テーブルがあるから、行楽地での休憩や車内での食事などで力を発揮すること間違いなし。

 他社のキャッチコピーを拝借すれば、「ステップワゴン・マイ・ルーム」といった感じか。

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■「アウトドアで活躍間違いなしの新発想ベンチ」日産・ウイングロード(3代目)

 今では衰退してしまった国内のステーションワゴン市場だが、以前は魅力的なモデルも多く、ウイングロードも手頃なサイズで高機能という隠れた実力者だった。

 2005年登場の3代目は、スタイリッシュで使いやすいコンパクトワゴンを目指して開発。躍動感のあるエクステリアや、広くて使いやすいインテリアなどが評価され、幅広い世代から支持されたのだ。

 ワゴンだけにユーティリティ性能もポイントで、後席のリクライニングやスライドだけでなく、助手席の前倒し機能により、多彩なシートアレンジを実現。加えて、一部グレードには耐水性表皮を用いたウォッシャブルラゲッジボードを採用し、汚れたものや濡れたものを気軽に積むことも可能だった。

 そして、注目なのがイージーラゲッジベンチ。これは、ラゲッジフロア後端を引き上げれば、背もたれ付きのベンチに早変わりというシロモノ。

 開発者は「サーフィンなどを楽しんでいる彼氏を彼女が待っているシチュエーション」をイメージして設計したというが、実にユニークな装備である。

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