BEVでありコンパクトSUVでもあるメルセデスベンツ『EQB』。今年6月に登場したマイナーチェンジ版に試乗してみたが、実用車としてのバランスのよさ、出来映えに「ほほぅ!」と感心させられることしきり、だった。

全長4685mm×全幅1835mm×全高1705mm。改めて『EQA』と較べると、全長(+220mm)と全高(+80mm)が大きく、全幅は15mm小さい。ホイールベースは+100mmの2830mmの設定。こうした数値に当たるまでもなくEQBの姿カタチは、クロスオーバーないしはクーペ然としたEQAに対し、前後ウインドゥ(ピラー)の角度が起こされたキャビンはずっと箱形で、遠くに『Gクラス』さえ連想するような、いかにも実直な実用SUVの王道を行っている。手狭な場所でも扱いやすい全幅も美点だ。

メルセデスベンツ EQB 350 4MATIC

さらにこのEQBの場合、ICEの『GLB』をベースとしながらも、GLBにほとんど遜色のないパッケージングを成立させている点も見事だ。再び諸元で見較べると、座面から天井までのクリアランスは1列目はどちらも1070mmで同じ、2列目は-20mm(960mm)、身長165cmまで限定という3列目は-15mm(870mm)。

実車の床を観察すると1列目の下から床の形状が盛り上がっていて、この下にバッテリーが仕込んであると思われるが、古い話でクラスもカテゴリーもまったく異なるが、そもそも床下にバッテリー搭載を想定して開発されたあの初代『Aクラス』を思えば別次元で、ICE車に対して居住空間がほとんどイジめられていないのがいい。実用性も2列目のスライド機構を使い、2列目の快適性と3列目の実用性とを見計らいながら使えばOKだ。

メルセデスベンツ EQB 350 4MATIC

それと何しろしっとりと落ち着いたフラットな乗り味も期待に違わない。最近、車窓の風景を楽しむのが趣味になったらしい乗り心地・NVH評価担当の我が家のシュン(柴犬・オス・2歳8か月)は“フセ”ではなく“オスワリ”の姿勢で乗車していたが、頭が揺さぶられない乗り心地が快適らしかった。

試乗車はAMGラインパッケージが装着され、アダプティブダンピングシステム付きサスペンションを備え、さらに20インチAMGアルミホイールと、電動車を想定し、低転がり抵抗、高グリップ、低騒音などが特徴の設計というピレリ・P ZERO ELECT(MO)を装着していたが、これらが2180kgの車重を活かしつつ受け止め、安定感の高いスムースな乗り味、静粛性の高さを生み出しているところも印象的だ。“飼い主的”には、メルセデス・ベンツらしい穏やかな表情のステアリングフィールや挙動もいいと思った。

メルセデスベンツ EQB 350 4MATIC

一充電走行距離(WLTC)は467km、交流電力量消費率(同)は164Wh/km。FFの「EQB250+」は557km、149Wh/kmだが、数値の差は車重(ベースモデル同士で+60kg)と、満充電からの電気の減り具合はEQA(591km)などと較べると感覚的には幾分か早い。が、それは前後2モーターが生み出す駆動力により安定感の高い走りが得られていることの代償……というよりも、いい意味での差分と捉えるべきか。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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