1973年に英国で誕生した「ケータハム」は、ロータス・セブンの血統を今もなお製造し続ける。グローバルな自動車メーカーとは一線を画す、英国スピリットが仕立てたサーキットユース向けセブン340Rを、プリウス武井が真夏の首都高速でインプレッション!!

※本稿は2024年9月のものです
文:プリウス武井/写真:小林邦寿
撮影協力/CATERHAM CARS JAPAN
初出:『ベストカー』2024年10月10日号

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■コーリン・チャップマンの意志を継ぐ唯一のメーカー

首都高を疾走するケータハム セブン340R。反対車線のみなさんも驚かれたことだろう

 英国を始め様々な国でロータス セブンのキットカーが販売されているが、ケータハムはコーリン・チャップマンの意志を忠実に継承している唯一のメーカーだ。

 同社がロータスからスーパーセブンの製造ライセンスを取得したのは1973年。半世紀もの間、英国の小規模自動車メーカーとして世界のセブンファンを魅了してきわけだが、2021年4月から日本企業「VTホールディング」の傘下に入り、資金面も含めさらに信頼性が増した。

 ケータハムはロータス セブンの派生モデルを発売しているが、今回、インプレッションするのは340。

 SモデルとRモデルが選択でき、Sはロード志向で、Rはサーキット志向のオーナーを満足させるスポーツサスペンションパック(ワイドトラック、リアアンチロールバー、アジャスタブルプラットフォーム)、LSD、カーボンダッシュボード、コンポジットレースシート、4点式レースハーネス(車載、ディーラーにて別途取付必要)などが標準装備となる。

 さらにシャーシはシリーズ3とシリーズ5の2タイプが用意されている。シリーズ5は、標準のシリーズ3ボディよりもワイド仕様となり、室内空間とトランクスペースを増量、燃料タンク、ワイドトラックサスペンション、サイドスクリーンアームレストにより体格の大きなオーナーにも対応している。

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■この車高の低さは別格!

数多くのクルマに試乗してきたプリ武でさえ、この低さは別格だという。横から見るとほとんど路上に横になっているのと変わらない

 ケータハム・ジャパンからお借りした340は、シャシーがシリーズ3のRモデル。ボディ本体は基本、無塗装アルミボディなのだが、9色あるオプションカラーの中で「デトネーター・イエロー」で塗られ、ケータハムのロゴステッカーやカーボンデカールなどで飾られている。

 試乗した個体にはオプションのフルウインドスクリーン・ソフトトップが備わっていたが、なんせ取材した日は40℃超えの猛暑だったので直射日光を浴びながらインプレッションすることを選択した。

 コンパクトなコクピットに備わるバケット形状のドライビングシートに身体を預けた。座面が深く身体を包み込むようなシートから見る前方視界は、F3マシンにでも乗っているかのように低い。

 今まで車高が低いクルマを数多く試乗してきたが、ケータハムは別格。目線の低さもさることながら、ペダルの間隔がタイトで、アクセルを踏む靴のつま先が隣のブレーキペダルに干渉する。

 この日、不覚にもドライビングシューズではなくスニーカーを履いてきてしまった。340をドライブするなら、つま先の細いレーシングシューズが必須だ。

 靴の干渉問題は長年の経験でなんとかすることにして、イグニッションキーを回し、スターターボタンでエンジンを始動する。湿気の多い真夏でも始動性は抜群。エンジンが鼓動を始めた瞬間からバケットシートごしに鼓動が伝わってくる。

 アクセルを軽く踏むと、耳元にレーシングサウンドが響き渡る。3点式シートベルトを締めいざ出陣!

 ミッションを1速に入れ、クラッチをリリースすると軽く動き出した。ミッションのストロークは短く、往年のフォーミュラマシンのよう。

 ギアの間隔が狭く手首を動かすだけでシフトワークができる。クラッチペダルに気難しい感覚はなく、坂道発進でもサイドブレーキを使わなくても大丈夫そうだ。

 首都高速の入口に向かうため中原街道を五反田方面に出た。クルマが激しく往来する道路にまぎれ交通の波に乗る。

 340はまるでレーシングカーをドライブしている感覚だから、ヘルメットを被っていないと違和感すらある。スクリーンがあるため、顔に風をダイレクトに浴びることはないが、酷暑の今は熱風すら恋しい。

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■外気温と戦いながら運転を楽しむ

40℃超えの猛暑の中、直射日光を浴びつつドライブするプリウス武井氏。熱波に炙られてはいるが、運転する楽しさはじゅうぶん味わえた

 普段、外気と室内が遮断された空間のクルマばかり運転していると、340でのドライブはとても新鮮。運転する喜びに溢れている。

 エキゾースト音とクイックで尖ったハンドリングに、もっと飛ばせと急かされる感覚になるが、路面の凹凸が激しい公道でもしなやかな乗り心地のサスペンションが自制してくれる。

 ちょうどクルマの特性に慣れたところで首都高速に入った。加速車線でアクセルを踏み込むと、タイヤが路面を蹴って軽快に加速。

 エンジン回転がレブ付近に到達した瞬間、シフトアップすると軽量な車重の効果が充分に伝わってくる瞬発力で気分は最高潮。風切音と目線の低さの相乗効果で最新ジェットコースターにでも乗っている感覚になる。

 さらに340のハンドリングは、クイックで少しの舵に対して即座に反応してくれる。ステアリングにタイヤのグリップ感も伝わってきて、公道では限界域が計れないほど高いコーナリング性能を持つ。

 背筋に冷や汗が出るほど驚愕のコーナリングマシンだったが、意外だったのは高速安定性。現代のエアロダイナミクスとは一線を画すスタイリングなので期待はしていなかったが、高速道路でも恐怖感なく巡行できた。

 肝心の制動性だが、ブレーキのペダルタッチはダイレクトで、ドライバーの踏力で微調整が可能。

 Rの標準装着ホイールは15インチなのだが、この個体には13インチが装着されており、フロントブレーキはベンチレーテッドディスク+4ポッドキャリパーが収まっていた。

 比較的高い速度域からの急減速でもしっかり停まってくれて安心だ。

 340のドライブは楽しいことばかりではない。路面温度は50℃以上あったこの日、首都高速の渋滞中の暑さは尋常じゃなかった。

 ドライビングポジションが路面に近いこともあり、とにかく暑い。真夏は体を冷やすグッズを準備する必要性を感じた。

 クルマは現代社会の生活になくてはならないモノだけど、ドライブする楽しみに満ちた特別な存在がケータハムというクルマだった。

 季節の移り変わりをダイレクトに感じることのできるクルマは少ない。「ドライブって楽しい!」そんなことを心底思わせてくれるインプレッションになった。

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■フォード製2.0Lデュラテックエンジン解説

マツダ ロードスターのトランスミッションと組み合わせることで、最高速度209km/hを発揮する

 340に搭載されるエンジンは信頼性の高い英国フォード製デュラテック。排気量1999ccの4気筒DOHC16バルブの最高出力は172ps/7250rpm、最大トルクは17.7kgm/6500rpmで発生する高回転型。

 マツダ ロードスターのトランスミッションと組み合わせることで、カタログスペックの最高速度は209km/hに達する。

 過給機なしのNAだが軽量なボディの効果で停止状態からの加速では馬力以上のパフォーマンスを体感させてくれる。車検証に記載されている車両重量で計算するとパワーウェイトレシオは3.42kg/psと日産 GT-Rやホンダ NSXに匹敵する。

●CATERHAM SEVEN340R 主要諸元
・全長×全幅×全高:3100×1575×1115mm
・ホイールベース:2225mm
・車両重量:560kg(乾燥重量)
・エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC
・総排気量:1999cc
・最高出力:172ps/7250rpm
・最大トルク:17.7kgm/6500rpm
・ミッション:5速MT
・駆動方式:FR
・サスペンションF/R:F=ダブルウィッシュボーン式/R=Aフレーム&ド・ディオン
・ブレーキF/R:ソリッドディスクブレーキ
・0-100m加速:5.0秒以下
・公表最高速度:209km/h
・車両本体価格:1118万7000円(税込)

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