売り上げが不調に終わった車種がモデルチェンジで見事業績回復に成功した。今回は、そんな復活劇を実現してみせた国産車を紹介したい。彼らはなぜ復活できたのか? そして先代が失敗したワケは?
文/長谷川 敦、写真/ダイハツ、トヨタ、日産、マツダ、CarsWp.com
■先代の迷走から逆転に成功したクルマ2選
●トヨタ プリウス(5代目)
世界初の量産型ハイブリッドモデル・トヨタ プリウスは、ハイブリッドカーが当たり前になった現在でもカテゴリーを代表するクルマの地位をキープしている。
だが、そのプリウスにも不調な時期はあった。
2015年に登場した4代目モデルがそれで、3代目のイメージを引き継ぎつつも、厳つくなったフェイスデザインが賛否両論を招き、2018年のマイナーチェンジでこの顔つきを変えたものの、販売台数では先代を上回れなかった。
そして2023年には完全新設計の5代目が登場。
燃費性能の追求を第一にしてきた歴代プリウスに対し、この5代目はデザインの良さや充実した装備など、総合的なクルマの質を高めているのが特徴といえる。
そんなメーカーの目論見は成功し、5代目プリウスは販売成績、評価ともに好調で、見事な逆襲を果たしている。
●マツダ ロードスター(4代目)
現在の国産車では貴重なオープン2シーターのFRスポーツがマツダのロードスター。
1989年発売の初代から2005年まで販売されていた2代目までは基本コンセプトを継承していたが、3代目のNC型ではボディの3ナンバー化など大幅な変更が行われた。
しかし、ライトウェイトスポーツという印象が薄れてしまったのは否めず、ボディデザインを含めて3代目の評価はイマイチだった。
そこで2015年デビューの4代目ND型では再び大幅なモデルチェンジを断行し、3ナンバーサイズはそのままながら、エンジンのサイズダウンなどで軽快感を強調した。
このモデルチェンジは成功となり、4代目は現在でも高い人気を保っている。
ちなみに、不人気に終わった3代目もクルマの完成度は高く、中古車市場では状態の良い個体が比較的安価で取り引きされるお得なモデルとして一部で人気を集めている。
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■マイナーチェンジで起死回生! の2台
●ダイハツ タント(4代目)
2022年、ダイハツは軽トールワゴン・タントのマイナーチェンジを行った。
ラインナップのうちタントカスタムにはフェイスリフトが施され、新たなモデルのタントファンクロスも追加となった。
さらに全車種でシートやラゲッジスペースの大幅改良が行われており、使い勝手が向上した。
これらの変更は奏功し、マイナーチェンジ後のタントは販売台数を大きく伸ばすことに成功している。
●ホンダ インテグラ(3代目)
インテグラはホンダが2007年まで日本国内販売を行っていたスポーティなFFモデルで、1985年に初代が発売され(クイントインテグラの名称で販売)、1989年登場の2代目(車名がインテグラのみに)も高い人気を博した。
そんななか、1993年には3代目がリリースされるが、この3代目のヘッドライトは先代の角型から丸目4灯になり、イメージが大きく変わっている。
だが、このイメージチェンジは裏目に出て、国内での販売は不調という結果になった。
そこでホンダは1995年に行った最初のマイナーチェンジでヘッドライト形状を先代に近い横長のものに改めた。
さらに高性能仕様のTYPE-Rも追加され、3代目インテグラは復権を果たしている。
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■イメージ回復には成功。しかしこれが最後のモデルに…「日産 シルビア(7代目)」
1965年に登場した日産の2ドアクーペモデルが初代シルビア。
以降は日産のスポーティクーペの主力モデルとして確固たる地位を築き、1988~1993年に販売された5代目S13型は、バブル景気を象徴するデートカーの1台にもなって、好調なセールスを記録した。
そんな5代目の後を受けて登場した6代目S14型だが、これが想定外の売れ行き不振に陥ってしまう。
S14型ではボディが大型化されてシリーズ初の3ナンバーモデルになり、豪華さを全面に押し出していたが、これが従来のシルビアファンには不評で、さらにバブル崩壊の影響もあって販売台数を減らしてしまった。
こうした反省を踏まえて1999年には7代目のS15型がデビュー。
ボディは再び5ナンバーサイズになり、デザインも少々野暮ったさのあったS14に比べると洗練されていた。
シルビアの本流に戻った感のあるS15は高い評価を得たものの、クーペそのものがあまり売れなくなっていた時代背景も加わって人気ほどには販売実績を伸ばせず、2002年にシルビアシリーズの歴史とともに販売を終えている。
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■番外編~しばしの休息から華麗なる復活「トヨタ シエンタ(初代)」
トヨタの5ナンバーサイズミニバン・シエンタが発売されたのは2003年。
この初代シエンタは3列シートで7人乗車が可能などの使い勝手の良さが好評で、決して失敗作ではなかったが、2010年8月に事実上の後継車であるパッソセッテに道を譲るかたちで生産が終了された。
しかしこのパッソセッテの売り上げが思わしくなく、2011年5月にまさかの販売再開になり、結局2015年まで通算12年も生産されるロングセラーになった。
その勢いで2015年にはフルモデルチェンジが行われ、この2代目も好調なセールスを記録。現在は2022年登場の3代目が元気に走っている。
シエンタに関しては自身ではなく後継車種の失敗をリカバリーしたわけだが、少々珍しい経緯なので紹介させてもらった。
自動車メーカーも失敗モデルと作ろうと思って作るわけではないが、狙いが外れることも意外に多い。
そしてそんな失敗から名誉挽回できるかどうかでメーカーの底力を知ることができる。
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