ダイムラートラックとボルボグループが大型商用車の「ソフトウェア定義車両(SDV)」プラットフォーム開発で合弁会社に向けて動き出した。トラック専用のオペレーティングシステム(OS)を開発し、車両のブランドやアプリケーションに依存しないSDVプラットフォームを他の商用車メーカーにも提供する。
SDVは商用車分野の次の革新とされ、ユーザーはアプリの購入やソフトウェアアップデート等による継続的な機能向上が受けられること、メーカーにとってはソフトとハードの開発サイクルが分離することで効率的な開発が可能になることがメリットだ。
最新の乗用車は「スマートフォンにタイヤがついたような」と形容されることも多いが、トラック専用OSによりこの傾向は商用車にも広がりそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
ダイムラーとボルボが「SDV」で合弁設立へ
商用車分野で世界の2大グループとされるダイムラートラック(ドイツ)とボルボグループ(スウェーデン)は2024年10月28日、商用車の「ソフトウェア定義車両(SDV)」の基盤となるプラットフォームと、トラック専用のオペレーティングシステム(OS)の開発を行なうため、50/50の合弁会社(JV)を設立すると発表した。
これらのプラットフォームとOSは、将来的にSDV商用車のベースとなるもので、5月にもアナウンスされていたが、この度、法的拘束力のある契約を交わし商用車業界をリードする両社が提携に向けて正式に動き出した。
新会社の本社はボルボと同じくスウェーデンのヨーテボリに置く。ちなみに9月に開催された商用車ショー、IAAトランスポーテーションでも、ダイムラーなどが「SDVは商用車の次の革新になる」とアピールしていた。
大型車用のプラットフォームとOSは両社以外にも開放され、JVの顧客となる他の商用車メーカーもスタンドアローンのデジタル機能を自社のトラックに追加することが容易になるという。
ダイムラーのカリン・ラドストロムCEOは、「この調印は、業界のデジタル化に向けた、私たちに共通するコミットメントを示しています。JVによるソフトウェアとハードウェアは、お客様に前例のないレベルの安全性・快適性・効率性を提供するために不可欠なものです」とコメントしている。
いっぽう、ボルボのマーティン・ルンドステットCEOは次のように述べ、その革新性を強調した。
「私たちは力を合わせてソフトウェアアーキテクチャを再定義し、『自己最適化するトラック』という新時代を切り開きます。(大型車のソフトウェア開発における)複雑性を排除することで、より高い水準のコネクティビティや安全性、効率を実現できます。車両のパフォーマンスが継続的に向上して行くことは、現代の世界的な課題に挑戦するための革新的な手段であり、私たちが業界標準を設定することを誇りに思っています」。
JVの活動領域には、商用車専用に大量のデータを処理できる集中型の高性能制御ユニットの仕様策定と調達などが含まれている。また、専用OSの開発に加えて、商用車メーカーがデジタル機能の開発に用いるツールも開発する。
商用車のソフトウェアとハードウェアの開発サイクルが分離されると、顧客は任意のアプリケーションを無線で(オーバージエア)購入したりアップデートしたりできるようになる。これにより商用車のユーザーは効率とエクスペリエンスを向上することができる。
SDVなどの分野では提携するものの、ダイムラーとボルボは今後も競合相手であり続け、デジタルソリューションを含む独自の商品とサービスの差別化をそれぞれに図っていく。
関係する当局の承認が得られれば、新会社は2025年の上半期に設立される予定だ。
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