本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある企画の中から、2013年の「見えないヘルメット」にまつわる話題をご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:ベストカー編集部

■スタントライダーやマネキンを使い1000回以上もの衝突実験を行なって製品化!

オシャレに自転車を乗りこなす2人だが……首に巻いているのはなに!?

 最近はスーツ姿で自転車を通勤に利用する人も街中で見かけるようになった。健康にもいいことから自転車の愛用者は着実に増えているようだが、クルマを運転している側からすると、「危ないな」と思ってしまうような自転車の姿をしばしば見かける。

 事故ってからでは遅いってことで、2013年11月、スウェーデンから画期的な「見えない自転車用ヘルメット」がやってくる!

 なんのことかって? 実はこれ、自転車用のエアバッグシステム「HOVDING(ホーブディング)」なのだ。エアバッグといっても見た目は大げさなものではなく、形状は首に巻くマフラーのようなスタイリッシュなもの。

「HOVDING(ホーブディング)」本体の装着イメージ

 通常の着用時は当然のことながら頭部を覆わない状態となっているが、自転車で走行していて事故に遭遇した際、内蔵のセンサーがその挙動を検知してエアバッグが瞬時(約0.1秒)に広がり、地面などに頭部が激突する前に頭部全体を覆ってくれるというものだ。

 そもそもどういうきっかけで、このホーブディングが開発されることになったのか。

 実は2000年以降、スウェーデンでは自転車事故によるケガや傷害が急増していたが、スウェーデンの大学で工学デザインを学んでいた女子大生2人が同国の自転車ユーザーの多くがヘルメットをかぶっていなかったことに注目。

 そこで、2人は実際に自転車に乗る人にヘルメットをかぶらない理由を聞いたところ、「ヘアスタイルが乱れる」「格好が悪い」などという声が多く出たそうだ。そこで、彼女たちがひらめいたのがエアバッグ方式だったという。

 2005年より本格的な商品開発に取り組み始め、1000回以上に及ぶスタントマンやマネキンによる衝突実験を繰り返し実施してきた。

本体内部に設置されているブラックボックス内にモーションセンサーがある。USB充電可能

 そのなかで自転車に乗る人の挙動についてデータベース化することに成功。このデータベースをもとに開発されたアルゴリズムに、エアバッグの技術を組み合わせることで、このホーブディングが生まれたのだという。

 ホーブディング本体は人間工学に基づくデザインにより、本体重量(約790g)が肩全体に分散する設計となっている。装着した後にシステムスイッチをオンにすることで、本体内部にあるブラックボックスのモーションセンサーが起動。

 素材は引きずられても破れないように耐久性の高いナイロン素材を採用し、一般的なヘルメットよりも広い保護範囲を誇り、エアバッグ自体も数秒間膨らんだ状態を維持してくれるため、頭部を何度も打つような事故時にも有効とのことだ。

 欧州の安全規格であるCE認証を取得しており、すでに欧州では数千人のユーザーが愛用している。

これが「見えないヘルメット」だ!(装着〈通常時〉→エアバッグ作動時)

 ホーブディングの日本での販売を手がける「ライトウェイプロダクツジャパン」(本社/東京・池袋)の販売促進課の武田氏によると、「8月13日から取り扱いを開始しましたが、注目度は高く、すでに多くの自転車ユーザーの方から問い合わせをいただいております」とのこと。

 ただし、すべての自転車が対象となるワケではないらしく、

「ホーブディングは基本的には27インチの自転車での使用を想定していまして、それより小さい26インチ以下の自転車やBMXやタンデム車といった特殊な自転車での使用はできないようです」(武田氏)

 ちなみに価格は税込み6万5100円で、サイズはSとMで、カラーはシンプルなブラックとカラフルなクリエイターズカットの2種類。

オトコもこんなにスタイリッシュに装着!

 11月から同社で販売がスタートするとのことだ。防水仕様になっており、交換用カバーを交換することで自転車を楽しむためのファッションアイテムとしても楽しむことができる。

 こうなると、カートやレースなど自動車用のホーブディングの登場も期待してしまうのだが、

「現在は自転車専用のものしかラインアップされていませんが、そういった声が多く上がるようなら次の開発商品として検討されるかもしれません」(武田氏)

 日本での販売開始は11月からだけど、夏場の使用は暑いかも!?

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。