アメリカの大統領選挙で、トランプ前大統領の当選が決まった。海外からの輸入品に高関税を課す政策を推奨しており、日本の自動車メーカーにとっては大打撃を受ける可能性が高い。なかでもヤバそうなのは日産。その理由を解説する。
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部
■トランプ政権の発足で日本メーカーの状況が一変へ
次期米大統領がトランプさんに決まった。投票終了直後からキー局で選挙速報を生中継で流すほど、日本にとってアメリカは重要な国らしい。
確かに自動車業界を見ても、収益の大半をアメリカから得ているメーカーだってある。トランプさんになると、どのメーカーが最も大きな影響受けるのかと言えば、瞬時も迷うことなく「そらもう日産ですね」になります。
なぜか? 前述の「収益の大半がアメリカ」という自動車メーカーは、ホンダと日産、マツダ、スバルということになる。この4社、アメリカで利益を上げられなくなれば、即座に厳しい経営状況になると思っていい。
なかでもアメリカ依存度が極端に大きいのが、すでに2024年度は赤字だと予想されている日産だ。以下、わかりやすく説明しよう。読み終えたら心配になるハズ。
■日産にとってはヤバい状況!? そのワケとは
まず自動車メーカーにおける2023年度の決算が絶好調だった理由は、美味しい美味しい円安によるものだった。1ドル100円だと3万ドルのクルマ売れば300万円。1ドル160円になれば、480万円になる! 販売台数が10%落ちたって絶対的な利益は大きくなるから素晴らしい。かくして販売台数を落としたメーカーすら大幅増益です。日本勢、過去最高の利益を上げている。
参考までに書いておくと、前回トランプさんが大統領だった4年間の為替レートは105円前後の安定した展開だった。バイデンさんになり160円まで円安が進む。バイデンさんというより、バイデンさんをバックアップする議員や官僚の意思によるものだと思う。明らかな円高容認だった。海外に進出している日本企業は、かつてないほど膨大な利益を上げている。
結果、アメリカは強いドルを使い海外からモノを買った方が安いという国になった。逆にアメリカで生産したモノは海外からすれば高価になる。実際、アメリカで生産したクルマを日本に持ってくると、驚くほど高くなってしまった。GMもJeepも値上げに次ぐ値上げ。日本におけるアメリカ車の販売台数は激減した。こういった状況、愛国主義者のトランプさんからすればガマンならん!
自国産業の競争力を付けるため、4年前のようなドル安を望む可能性高い。トランプ派の議員と官僚が「ドル安だ!」と動き出せば、1ドル105円というレートだって大いにありうる。となるとどうか? 日産の為替想定レートは1ドル155円である。そして想定通り、平均155円だった2024年4~6月の4半期決算は前年比99%の減益だ。すでに赤字だったかもしれません。
1ドル155円で収益ほぼゼロ。ここから円高が進むと、その分だけ赤字膨らんでいく。直近3ヶ月の平均は147円ほど。今後さらなる円高に向かえば驚くほどの赤字額になることだろう。日産の場合、アメリカで主力になり始めているハイブリッドやPHVを持っていない。2024年も2025年も「これは売れる!」という商品無し。円高が進むだけで一段と赤字幅が増えていく。
ちなみにマツダとスバルの為替想定レートは1ドル149円。149円までの円高なら、予想通りの決算になる。各社黒字予想のため、140円以上になっても赤字転落はないと思う。さらに強いのがホンダで、為替想定レート1ドル140円。その上、日本からの輸出は無い。アメリカで得たドル建ての利益は変わらず。日本円に換算すると金額が少なくなるだけで、赤字の心配無しです。
■日産が浮上できる解決策はズバリ?
もう少し日産について。トランプさんはメキシコ生産の自動車に対しても、制限を掛けようとしている。日産の数少ない新型車であるキックスはメキシコ工場製。メキシコ問題についていえば、マツダもアメリカで販売しているクルマの3分の1をメキシコで生産している。マツダ、日本からの輸出も多いため。為替相場の影響を受け易い。日産の次に不安要素大きかったりする。
解決策は「アメリカで人気になるクルマを出す」ということしかない。それには燃費のよいハイブリッドが必要ながら(eパワーは高速燃費悪い)、持って居ない。ここにきてホンダから融通してもらうんじゃないかというウワサも出ているけれど、古今東西OME車って売れない。今後円高に向かうようなら、マジで日産は厳しい状況になってしまうかもしれません。
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