真っ直ぐ走るだけなら、直線だけなら速い……クルマにもドライバーにも(下手なだけ!?)いますよね、直線番長! 昔から、やっぱ、クルマは速けりゃ偉い! コルベットにスティングレーが復活した記念、直線番長列伝!(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:国沢光宏、石川真禧照、斎藤 聡、清水草一

■直線バカッ速! コルベットにスティングレーの名称復活! デビュー記念

新型スティングレー

 あのコルベットにスティングレーの名が帰ってきた。GMは今年(2013年)1月、7代目となるコルベットのニューモデルを発表したが、かつてのアメ車を代表した「スティングレー」の名称を復活させることを明らかにした。

 新型スティングレーは、ボディや内装にアルミニウムやカーボンを多用するだけではなく、なんとマグネシウム製のシートを新開発した。スペックは公開していないが、これだけ軽量化すれば、燃費もいいだろう。

 エンジンは6.2LのV8エンジンを搭載、マックスパワーは450ps。ミッションには7速ATを組み合わせ、0~96km/h加速は4秒。まさに直線番長復活。日本導入は来年上半期。価格は未発表。日本国内ではスティングレーを名乗れないのは残念だが、凄いクルマが帰ってくるのは嬉しいね。

速さはもちろん、気筒休止システムを採用し、実は環境にも優しい

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■燃費燃費と騒がれる現代だがひたすら速いクルマにはロマンがある

現在の世界最速はブガッティのヴェイロン。時速268マイル(約431km/h)を叩き出したスーパースポーツは30台限定でお値段は約2億8900万円

 最近の日本人って、スゲー小さくまとまっているような気がしてならない。

「燃費が1km/L上がりました、お得です」とか、「ハイブリッドを買って節約生活しています」って。それもいいけど、クルマにはロマンを求めたいよね。

 日本も過去を振り返れば、オイルショックを経験した1970年代後半から1980年代前半、クルマに省エネが叫ばれ、低公害車が流行った。

 そんな暗黒のクルマ界で、三本さんや徳大寺さんは、片端から新車を乗り倒し、覇気ないクルマはボロクソに評価し、また喝を入れた。

アリエルアトムV8

 その結果かどうか、因果関係ははっきりしないが、1980年代には個性的なクルマがどんどん登場し、5ps、10‌psでパワー競争を繰り広げた。あの頃のクルマはメチャクチャに楽しかったし、夢も希望もあったと思いませんか?

 というわけで、この企画はクルマに夢を追いかける「直線番長」。下の表をみてほしい。0~100km/hが2秒台、最高速は400km/hオーバーですよ。

 そんなスピードが、社会で必要とされるわけでもないのに、人は速さを追求する。ライバルより0.1秒でも早く、1km/hでも速く。それが技術の進化をもたらすことも忘れてはいけないと思う。

最高速ベスト10
0〜100km/h加速ベスト10

 さて、古今東西、さまざまな「直線番長」が存在したが、ただ速いだけじゃなく、その時代を象徴するような、心に残るクルマの存在も見逃せない。

 ベストカーの豪華執筆陣に、それぞれの「直線番長」を挙げてもらいましょう。

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■国沢光宏が選ぶ直線番長No.1 ─── ブガッティヴェイロン

ヴェイロンの量産車世界最高速記録は、ギネスに認定されたり剥奪されたりと、話題にもなっている。映像で見ただけだが、とにかく速い

「直線番長」とは「コーナー番長」の対極ということである。コーナー番長の定義は、最高速が遅いにもかかわらずサーキットで速いタイムを出すクルマのこと。コーナリングと直線の速さのバランスから考えるなら、圧倒的な曲がる性能を持っているワケです。

 実際のクルマだとスーパー7のような存在か。直線番長は「最高速凄いのにサーキット走ると速くない」モデルだ。とりあえず最高速が速いクルマに有利なニュルブルクリンクサーキットのタイムをチェックしてみたい。

 市販車No.1は最高速325km/hのレクサスLFAで7分16秒。こいつをベンチマークとしておく。GT-Rなどどうか? 最高速310km/hのラップタイム7分18秒。こいつぁコーナーでタイムを稼いでいると考えていいだろう。

ターボを4基つけた8LのW12エンジンは、1200ps以上のパワーを発揮、最高速ももちろん0~100km/hもムチャクチャ速い

 さて、最高速431km/hと、市販車世界一のブガッティヴェイロンはどうだろう。ニュルのラップタイムは7分40秒と、GT-Rより22秒も遅い。最高速で100km/h遅いクルマと同等。参考までに書いておくと、0~100km/h加速は2.5秒で強烈! 

 ブレーキ性能だって文句なし。高速域じゃエアブレーキまで併用します(400km/hからのブレーキも10秒で停止する)。つまりラップタイムが遅いの、コーナーで大幅に速度を落とさなければならないからなのだった。

 といったことを考えるなら、やっぱしヴェイロンが最強の直線番長だと思う。実際、最高速を出したら“ほぼ〟曲がらないそうな”というか、まっすぐ走らせることが最大のテーマになっている。曲がるようなクルマじゃ怖くて仕方あるまい! 直線にイノチを懸けたクルマだと言って間違いなし!

国沢光宏が選ぶ直線番長ベスト5

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■石川真禧照が選ぶ直線番長No.1 ─── GM EV1

17年前のEVとはまた渋いチョイス。でも常識を覆す速さだったそうだ

 今でこそ、アメリカのテスラが2シーターのEVスポーツカーを出すなど、EVでもスポーツ走行ができる、ということがわかっている人がいる。

 リーフでもそうだが、EVはスタートからのトルクの立ち上がりが一気にMAXに達する。この時の加速は、スーパースポーツカーもビックリの速さ。体験した人はわかってもらえるはずだ。

 しかし、1996年、今から17年前に、EVの加速の凄さを体験したら、それは本当に“じぇじぇじぇ”だったのだ。当時、この仕事をして、世界各メーカーのいろいろな最新モデルやプロトタイプに乗っていたボクにとっても、EVは車速の遅い、シティコミューターくらいにしか思っていなかった。

GM EV1

 だから、サターンの試乗会の時、GMの開発センターで、最新のEVです、とクルマを見せられてもあまり関心が湧かなかったのは当然だった。

 一応スタイリングは2シーターのスポーツクーペだった。1990年に公開されたものの、ようやく1997年からリースで販売するというインフォメーション。そのクルマにひと足先に試乗させてくれたのだ。

 赤いEV1に乗り込み、開発センター内の短いテストコースを走る。試乗前のブリーフィングで、EV1の電池は鉛であること、駆動は前輪であることが判明した。

 で、いよいよスタート。アクセルを踏み込む。いきなり体にGを感じ、EV1は急加速を開始。最初、目がついて行かなかった。

 体がシートに押し付けられ、スピードメーターはアッという間に55マイル。あわててブレーキング。パワーアシストのないステアリングはかなり重く、Uターンするのにひと苦労したのを覚えている。本当に、直線だけのクルマだった。

石川真禧照が選ぶ直線番長ベスト5

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■斎藤 聡が選ぶ直線番長No.1 ─── メルセデスベンツCL65AMG V12ツインターボ

6LのV12にツインターボを組み合わせ2トンのボディを軽々と加速させる。凄い

 直線の速いクルマといってまず思い浮かぶのはCL65AMGだ。

 6LのV12気筒(SOHCエンジン)というだけで強烈に速そうなのに、さらにツインターボを装着。612馬力というパワーもさることながら1000Nm(102kgm)という超絶のトルクを2000~4000回転という低回転域で発生させるモンスターだった。

 高速道路で無造作にアクセルを踏み込むと、次の瞬間から文字どおりシートに体をめり込ませるような加速で際限なく加速していくのだ。加速を始めた瞬間、強烈な加速Gがいきなりかかるものだから一瞬視界がグニャッとゆがむほどだった。

 何より驚いたのは、2トンもあるボディがまるで車重を失ったかのような加速を始め、200km/h超えてもまったく加速が鈍る様子がなかったこと。

ちなみに当時の新車価格3030万円でした

 超重量物が怒涛の加速をしていく時の独特の感覚は、軽量ボディの加速のよさとはまったく別の迫力がある。その一部にはブレーキを踏んでも絶対止まれないだろうなあ……という不安が速度を増すにつれて倍増していく恐怖にも似た感覚も含まれる。この感覚はベントレー・コンチネンタルGTやアウディS8など重量級ウルトラハイパワー車にも共通する。

 当時はまだESPの完成度も高くなく制御もだいぶ荒かった。そのため山道で不用意にアクセルを強く踏み込むと、加速が始まる前に易々とリアタイヤが横に滑りだす。そしてタイヤが滑り出した次の瞬間ガガガッ……とESPが慌てて作動しブレーキがかかる、そんな具合だった。

 シャシー性能が高くなかったのか、あるいは意図的にユーザーに緊張を与えるような味付けをしていたのか、いずれにしてもパワー(トルク)だけが独り勝ちしたようなクルマだった。

斎藤 聡が選ぶ直線番長ベスト5

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■清水草一が選ぶ直線番長No.1 ─── ヴェイルサイドコンバットスープラ

プラモデルになるほど人気だったコンバットスープラ。ガルウイングもクルマ好きの憧れ! 

 乗ったのはもう20年以上前なので、だいぶ記憶が曖昧になっておりますが、とにかく体感的にはあれ以上の直線番長、ウルトラドッカンターボ車は経験したことがなく、死ぬほど印象に残ってるので、これを一番にさせていただきました。

 当時乗ったヴェイルサイドコンバットスープラは、フルチューンで確か650馬力くらいでした。この数字だけ見ると、今では「それほど凄くない」と感じるかもですが、当時は充分凄かったし、この馬力で後輪駆動ってのも凄かった。

 一番凄かったのは、そのエンジン特性。うろ覚えなんだけど、真のパワーが出るのは5000rpm超えてから。そしてレッドゾーンは6500rpmだったかな? なんせパワーバンドが1500rpmしかない。しかしパワーバンドに乗せると、とてつもないことが起きる。

 俺が乗ったのは箱根ターンパクだったんだけど、乗る前にヴェイルサイドの人に、「オーバーレブに気を付けてください」って念を押されたのね。はいはいわかりましたって言って乗って、2速から全開、タコメーターが5000rpmを超えた時、突如フルブーストがかかってマシンが瞬間移動!

今もそうですが、当時のヴェイルサイドチューンは迫力満点だった

 コンマ5秒くらいでレッドゾーンへ! うひいやべえオーバーレブしそう! 慌ててシフトアップしたけど、ちょびっと超えちゃったかも。

 あの瞬間の瞬間移動的加速Gと、あまりにも狭いパワーバンドのせいで死ぬほどオーバーレブしやすい特性。本当に凄かったっす……。

 あの瞬間にハンドルが切れてたらどんなことが起きるのか? 一瞬で3回転スピンくらいするのか? 試しておりませんが、とにかく一生忘れません、ヴェイルサイドコンバットスープラ。

清水草一が選ぶ直線番長ベスト5

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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