2024年4月にビッグマイチェンをうけて登場した、日産が欧州で販売するミドルクラスSUV「キャッシュカイ(QASHQAI)」がかっこいい。キャッシュカイは、日本では「デュアリス」として販売されていたCセグメントのクロスオーバーSUV。日本では初代モデル終了をもって姿を消してしまったが、欧州ではいまも3代目が活躍中で、欧州ではベストセラーともいえるほど安定して売れ続けている。

 日産の現在のSUVラインアップといえば、国内では、キックスとエクストレイルのみ。キャッシュカイには、e-POWER車も設定されているなど、日産が国内で進める電動化戦略にも則っており、日本に導入する条件はクリアしているように思う。せめてキャッシュカイwith e-POWERは日本にあってもよいのではないだろうか。

文:吉川賢一/写真:NISSAN

日本では売れなかったデュアリス(キャシュカイ)

 日産「デュアリス」は、2007年に登場したモデルだ。エクストレイルよりやや小ぶりなボディサイズと、サイズ感こそ、さほど違いはなかったものの、デザインの方向性もコンセプトもエクストレイルとは異なるモデルで、最大の特徴は走りの性能がより追求されていたこと。

 欧州市場をターゲットに開発されたとあって、2.0LのMR20DEガソリンエンジンとエレクトロニックCVT、そしてザックス製のサスペンションシステムを搭載するなど、デザインは地味ながら、走りに関する装備は一級品。しなやかな足の動きと、SUVらしからぬ高い静粛性は、当時から評判が高く、まさに質実剛健といったクルマだった。

 この内容に惹かれた人によって、デュアリスは当初は好調なセールスを記録したものの、日本ではデザインが地味すぎたのか徐々に販売は落ち込んでいき、初代限りで販売終了に。ただ欧州では、初代モデルが180万台以上の販売記録を打ち立てるなど、欧州日産で過去イチ売れた「メガヒットカー」となった。

欧州では特に走りの評価が高かった初代キャシュカイ(日本名:デュアリス)。たしかに日本ではライバルに比べて華がなかったか
最新型のキャシュカイwith e-POWER。エクストレイルe-POWERと同じく、1.5LのVCターボe-POWERを搭載している
エクストレイルの中古車をもっと見る ≫

デュアリスの頃よりもデザインに優れ、高級感が増した!!

 現行型のキャシュカイは2021年に登場、2022年にe-POWERが追加された。日本でもエクストレイルに搭載されている1.5L 可変圧縮(VC)ターボが採用されており、e-POWER車は、「News UK Motor Awards 2024」で最優秀賞パワートレイン賞も受賞するなど、現地でも高く評価されている。

 2024年4月のビッグマイチェンでは、エクステリアデザインを大胆に変更。特にフロントフェイスは、従来のVモーショングリルから、日本の甲冑の「うろこ模様」からインスパイアされたという緻密で繊細な模様が全体に配置された新しいフェイスとなった。光沢のあるブラック塗装で仕上げられていることで、見る角度によって異なる個性的な表情をつくりだしており、ヘッドライトの形状も、よりシャープなものに変更され、ライトの下にはグリルと同じ「カンマ」形状のデイタイムランニングライトが配置されている。

 インテリアも、上級グレードにはアルカンターラ素材が採用されており、最新のコネクテッド技術、安全運転支援システムも、もちろん搭載されている。デュアリスの頃よりもデザインに優れ、高級感が増した最新型キャッシュカイであれば、日本でもそこそこ売れるのでは、と考えられる。

最新モデルのキャシュカイのリアビュー。コンビネーションランプ内にもフロントグリルと同じ形状のデザインが見られ、洗練された印象がある
ドアトリムやダッシュボードなどへ高級素材を取り入れたことで、高級感が漂うインテリア。これなら日本でも売れそう

いっそのこと、キックスを廃止してこのキャッシュカイとインドのマグナイトを導入しては??

 冒頭でも触れたが、日本の日産ラインアップにおけるSUVは、キックスとエクストレイルのみ。SUVが主流になりつつある昨今においては、選択肢が少なすぎる状況だ。そのキックスも、他社のコンパクトSUVと比較して割高感があることなどで、販売が伸び悩んでいる。

 実際、2024年度上半期(4月~9月)の販売台数は、前年比91.9%の約6,800台。ライバルであるホンダWR-V(17,800台)や、ヤリスクロス(約36,500台)に大きく後れを取ってしまっている。このままでは2024年10月に登場した新たなライバル、スズキ「フロンクス」にも引き離されてしまう結果になりかねない。

 エクストレイルとキャッシュカイは、全幅こそさほど変わらないが、全長は240mmも違う(キャッシュカイ:全長4,425mm×全幅1,835mm×全高1,625mm、WB 2,665mm、エクストレイル:4660mm×1840mm×1720mm、WB 2705mm)。キックスクラス(4290mm×1760mm×1605mm、WB 2620mm)のコンパクトSUVも必要ではあるが、キックスがここから販売台数を伸ばすのはかなり難しいと思われ、いっそのこと、キックスを廃止して、インド日産のコンパクトSUV「マグナイト」(全長3994mm×全幅1758mm×全高1572mm、WB 2500mm)と、このキャッシュカイを導入し、ロッキー/ライズ、WR-Vと競わせるほうが、望みがあるように思う。

 キャッシュカイは、英国サンダーランド工場生産であり、円安が続くなかでは、日本での生産が叶わなければ価格を抑えることも難しいだろうが、このキャッシュカイ&マグナイトの国内導入作戦であれば、一発逆転もありえるかもしれない。ぜひとも日本導入を期待したい!!

インド日産の「マグナイト」。全長は4m以下とコンパクトながら、全幅が1700mmを超えるため、しっかりとした存在感とゆとりがある

記事リンク

前の記事

ジューク マグナイト タウンスター 世界で売っているのになぜ日本で売らない??

次の記事

海外ではいまだ大人気!! でも……[日本人]のお口には合わなかったらしい名車5選

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。