東京の町田から新宿へ行こうとするなら電車を使うのが当たり前。ところがある日突然、バスだけで行けないか、という疑問がふと湧いた。調べてみると無理ではない模様。それならちょっと、チャレンジしてみましょうか…。

文・写真:中山修一
(町田→新宿バスチャレンジの写真付き記事はバスマガジンWEBもしくはベストカーWEBをご覧ください)

■小田急町田駅の下が出発点

小田急線町田駅の下にある町田バスセンターがスタート地点に

 電車に乗れば30分で着ける町田→新宿をバスで向かう。出発点となるのは小田急町田駅の下にある町田バスセンターだ。

 実は今回のチャレンジ前、そんなの簡単だろうと思って、予備知識ほぼゼロのまま昼ごろ適当に行ったところ、物の見事に大失敗した経緯がある。

 そんな教訓から、今度はバスの時刻を調べた上で、朝9時前に町田駅をスタートするセッティングにした。高速バス・空港連絡バスは利用NG、一般路線バスだけ使って到達する目論見だ。

■小田急ではなく横浜線沿いに

 町田→新宿といえば、電車なら小田急線一択な区間であるが、バスで行こうとすると、小田急線とは全然関係のない方向へ行く経路が半ば自動的にできあがる。

 まずは町田バスターミナルを経由して、JR横浜線と東急田園都市線の長津田駅方面へ向かう、神奈中バス「町77系統」に乗車する。東京都を離れ一旦神奈川県に出るコースだ。

 決行は土曜日。土曜ダイヤでは1時間に1本しか町77系統のバスがないため、ここは事前に時刻を調べて、特定の便を狙って乗るようにした。比較的順調に進み、23分で長津田駅北口に到着。運賃は310円だ。

■いったん鉄道から離れます

 長津田駅北口に着いたのち、線路を渡って反対側のバス停である長津田駅前に歩いて移動。ここから乗るのは横浜市旭区の若葉台団地へ行く、神奈中バス「40系統」だ。

 日中30分に1本くらいのペースでバスが出ており、ちょうど40系統のバスが出発した直後であったため、30分ほどの待ち時間があった。長津田駅前から40系統で、終点の若葉台中央まで乗り通す。所要時間21分、運賃は240円だ。

 鉄道各線から数km離れた場所にある若葉台中央を経路に選んだのは、よく知っていて土地勘があるという地の利もあるが、横浜駅西口まで約16kmを直行する、長めの距離を一気に移動できる珍しい路線が発着しているためだ。

若葉台中央発・横浜駅西口直行のプチロング路線、神奈中「5系統」を活用

 神奈中バス「5系統」が若葉台中央発・横浜駅西口行き。土曜ダイヤでは1時間に1本のペース。この日は若葉台到着後3分ほどの待ち時間で乗り継げた。

■時間を調べる必要ナシ

 バスの時刻をピンポイントに指定したのは神奈中バス5系統まで。というのも、曜日や時間帯に関わらず、5系統は渋滞にハマりがちで、しょっちゅう遅れる癖があると知っていたからだ。

 土曜だと言うのに国道16号線の目詰まり体質は半端ない。時刻表通りなら54分で着けるところを、32分遅れの1時間26分かけて横浜駅西口へとやって来た。運賃は300円。

時間はかかるが乗り換えなしで横浜まで行けるのが5系統の強み

 それだけ超絶に遅れるバスゆえに、横浜から先は細かくスケジュールを組んでも、指定した便に間に合わず以降ドミノ倒しとなり、無駄骨になってしまう確率が高いのだ。

■川崎に直行できるバスあり

 横浜駅西口で下車したのち、大勢の人々でごった返す横浜駅コンコースを突っ切って、反対側の横浜駅前バスターミナルへ歩いて移動。

 ここから川崎駅西口まで行く、横浜市営バス「7系統」が出ている。多くはないものの40分おきくらいにバスがあり、適当に行っても何とかなる。30分ほどの待ち時間でバスに乗れた。

横浜市営バスに乗り換えて川崎駅西口へ

 運賃は均一220円で、横浜駅前→川崎駅西口への所要時間は55分。降車後、徒歩で西口から川崎駅ラゾーナ広場バスターミナルへとコマを進める。

■都県境を越える頼もしいヤツ!

 このバスチャレンジで最も重要な役割を持つバスが、次に乗車する東急バス「反01系統」五反田駅行きだ。乗ればそのまま多摩川を渡り、神奈川県と東京都の境界を越えてくれる有難い存在である。

 しかも10分くらいおきにバスが出ており、時刻を全く見なくても待っていれば来る最高の利便性を誇り、そうとなれば使わない手はない。

路線バスで都県境を越えると感動すら覚える

 都県境を跨ぐため、東急バスの均一運賃とは異なる280円。50分でいよいよ東京の大都会・五反田駅へと足を踏み入れる。ゴールまでもうすぐだ。

■狭い所が大好き

 五反田駅からは、東急バス「渋72系統」渋谷駅東口行きが役立つ。25分に1本くらいのペースでバスがあり、20分ほど待った。

 この渋72系統、幹線道路から外れた住宅街の小道を積極的に通るのが大変ユニーク。狭い所ばかり選んで入っていく猫みたいな楽しいバスだ。

 東京の街中を縫うように進み、40分かけて渋谷駅東口に到着した。運賃は230円。ここからさらに駅コンコースを横切り、反対側の渋谷駅バス停に歩いて向かう。

東急バス「渋72系統」で渋谷に迫る

■新宿が見えてきた!!

 満を持して最後のバスが登場。渋谷駅前スクランブル交差点近くの乗り場から出る、京王バス「宿51系統」がそれだ。系統番号に宿と付いているだけに、いよいよ新宿が見えてきた。

新宿までラストスパート、残るは京王バスの1本だ

 このバスを使えば新宿駅西口まで直行。本数も10分おきと大量に出ており全く困らない。運賃230円を払い乗車。バスは山手線から離れ、代々木公園や小田急線の参宮橋駅、新宿中央公園などを経由して進む。

 渋谷駅を出発して約20分、都庁やドコモタワーなど、その場所を象徴する高層建築群が目の前に現れ、とうとう新宿駅西口バスターミナルに辿り着いた! 行き慣れている新宿だというのにバスを降りた瞬間、猛烈な達成感に包まれた。

■そんなにかかるの!?

新宿駅西口バスターミナルに着いた!!

 今回は、町田→長津田→若葉台→横浜→川崎→五反田→渋谷→新宿、といった経路で7本のバスを乗り継ぎ、無事チャレンジ成功となった。前述の通り電車で行くと約30分、30.8kmの距離だ。

 バスの場合どうかと言えば、朝9時前に町田を出て新宿に着いたのが16時。東京都内の街と街を移動するのに堂々の7時間だ。大回りせざるを得ないため移動距離もガンガン伸び、鉄道の2倍以上である64.7kmを叩き出した。

 運賃で見ると、小田急線の387円、有料特急利用で合計837円に対して、バスでの総額は1,810円。これでバス運賃のほうにメリットを見出せるなら、その人は相当なやり手の営業マンになれる。

 ちなみに地図の情報によれば、町田→新宿を自転車で行くと最短で36km・2時間20分で到着することになっている。その場合、自転車の平均速度は15.4km/hになるが、バスのほうは12.8km/h。平均速度までチャリに負けるのかよ。

 小田急自慢の特急ロマンスカーで30分の町田→新宿、路線バスで行ったら7時間。近そうだった街と街、バスで行ったらメチャクチャ遠かった!!

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