スポーツモデルは、長いモデルライフの間に改良を重ねて完成度を高め、じっくりと「熟成」させていく。ここでは2019年登場のトヨタ GRスープラと、2022年登場の日産 フェアレディZに改めて試乗し、その熟成度を確認する。
※本稿は2024年11月のものです
文:松田秀士/写真:大西靖、トヨタ、日産、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年12月10日号
■気になるポイントだった「足」も進化していたGRスープラ
2019年に登場した現行スープラ。BMWとの協業によってスープラの伝統である直列6気筒エンジンを蘇らせた。そのパワートレーンを搭載するRZのステアリングを初めて握ったのは愛知県にあるトヨタの下山テストコース。クルマもコースも初お目見えの試乗会だった。
あの時の印象はストロークを生かした足さばきが心地よかった。しかし、ちょっとだけリアのツッパリ感が気になっていた。
その後、公道試乗会でカットモデルを見た時に理由がわかった。ダンパーはハブに直結しているから減衰の制御は1:1で理想的。しかしリアスプリングとハブとの距離が離れている。テコの原理で、短くて硬いスプリングが必要になる。レバー比と言われる理屈だ。ずっとこのことが気になっていたのだ。
2020年にはエンジン改良が施され340ps→387psとなる。もともと低速域からトルクのあるエンジンだが、中速から高速域までよりパワーアップ。今乗るとこのパワーフィールに改めて魅了される。
その意味ではフェアレディZに搭載されるVR30DDTTのV6ツインターボもスカイライン400Rをさらに進化させたエンジン。こちらも高速域でのキレるフィーリングがレーシーでパンチがある。
さてスープラの気になる足だが、今では進化して明らかに「締り」がある。ロールを含めストローク感は小さくなったが、操舵フィールがターンパイクの中高速コーナーにピッタリ合うのだ。ただしアンジュレーションにリアが跳ねる印象は若干残っているね。
●熟成の過程
・2019年5月発売
・2020年4月一部改良(RZのエンジン改良、特別仕様車発売)
・2021年8月特別仕様車発売
・2022年7月一部改良(ステアリングや足回りの改良など)、RZに6MT車を設定
デビュー当時はやや前後の足が荒れた路面でバタつく印象があり、それをネガと感じていた。一般路では路面のうねりやギャップでバタバタ感が大きくなる。
2022年7月の改良で足回りが進化。、ターンパイクではピタリと足が動き、熟成を感じた。エンジンは387ps仕様になった時点で大きな進化だった。
●トヨタ GRスープラ RZ
・全長×全幅×全高:4380×1865×1295mm
・ホイールベース:2470mm
・車両重量:1520kg
・エンジン:直6DOHCターボ 2997cc
・最高出力:387ps/5800rpm
・最大トルク:51.0kgm/1800-5000rpm
・トランスミッション:6MT
・WLTCモード燃費:11.0km/L
・サスペンション(前・後):ストラット・マルチリンク
・タイヤサイズ(前・後):255/35ZR19・275/35ZR19
・価格:731万3000円
★トヨタ GRスープラ……完熟度:90度
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■まだ年月の浅いZは熟成もこれから
一方フェアレディZは、熟成という意味ではそれほど目立った印象はない。もともとリアサスの動きがスムーズでストローク感があるが、逆にフロントのピッチングが起きやすい傾向にある。スープラと対照的なハンドリングだ。Zはまだまだこれからやるべきノビシロがあるように思える。
●熟成の過程
・2022年1月日本仕様公開、特別仕様車「Proto Spec」発表
・2022年4月全グレードの価格発表
・2023年8月一部仕様変更(新色追加、アクセサリーパッケージ追加など)、「NISM0」追加
現行型のフェアレディZが日本国内で販売を開始したのが2022年夏。2023年8月、新色追加とともに2024年モデルとなったが、パワートレーンや操安性に関する変更はない。いわゆるランニングチェンジはどうかと試乗をしたが、特にデビュー時からの変化は感じなかった。Zは今後の熟成に期待したい。
●日産 フェアレディZ バージョンST
・全長×全幅×全高:4380×1845×1315mm
・ホイールベース:2550mm
・車両重量:1590kg
・エンジン:V6DOHCターボ 2997cc
・最高出力:405ps/6400rpm
・最大トルク:48.4kgm/1600-5600rpm
・トランスミッション:6MT
・WLTCモード燃費:9.5km/L
・サスペンション(前・後):ダブルウィッシュボーン・マルチリンク
・タイヤサイズ:255/40R19・275/35R19
・価格:665万7200円
★日産 フェアレディZ……完熟度:変わらず
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