日産が落ちぶれてしまった要因はいくつもあるのだが、そのなかでも大きいのがエクストレイルの販売不振。日産にとって大切なマーケットになっている北米では、ハイブリッドの需要が高まっているものの、設定はなし。中国・日本でもe-POWERのみで、組み合わせるエンジンは3気筒ターボのみ。なんで、こうなってしまったの?
文:国沢光宏/写真:日産、ベストカーWeb編集部
■暗黒期招く経営陣の大きな失態
日産の経営状況悪化の要因の一つが、エクストレイルの売れ行き不振だと言われる。実際、日産にとってエクストレイルは最大の収益源になる目論見だった。というのもコンパクトカーだと、台数が出ても利益幅小さい。
しかもノートのプラットフォームはルノー。そして日本でしか売れておらず、儲からない。セダンの売れ行きを見ると縮小傾向。ミドルクラスSUVが重要性なのは日産に限らない。
トヨタはRAV4が世界販売車種だし、ホンダもCR-Vで大きな利益を挙げている。日産の場合はエクストレイル(アメリカ:名ローグ)ということになる。
まず日産にとって最重要地域となるアメリカだけれど、2023年後半あたりからローグの売れ行きが落ち始めた。2024年になると急速に在庫は増えていく。売れると見越して生産台数を増やしていたためだ。
気づくとローグの在庫は駐車場を埋め尽くし、衛星写真から深刻さが解るほどになってしまう。売れないと困るから大幅な値引き販売を行い、利益率を大きく落とすことになる。アメリカにおける日産に赤字はローグの販売経費(インセンティブと言われる)だと言って間違いない。
なぜローグの売れ行きが落ちたのかと言えば、ハイブリッドをラインアップしていないことだろう。アメリカで販売しているRAV4のハイブリッド比率は40%程度。CR-Vなんか50%前後と高い。ハイブリッドを持たないローグは、その分だけお客を逃がしているということになる。
ローグ以外もアメリカのハイブリッド比率は高い。人気ミニバンのシエナや、セダンのベストセラーであるカムリなんか現行モデルからハイブリッドしかラインアップしていない。
ローグはハイブリッドを出す予定無し。先日フルモデルチェンジしたローグより一回り大きいムラーノもハイブリッド無し。トランプ大統領になっても燃費の良いクルマは人気だろうから、ローグの売れ行きが回復することなどなかろう。
しかもローグは日本で生産している。もし円高になろうものなら、生産コストまで上がってしまう。絶体絶命のピンチと言って良い。
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■e-POWERでの勝負が裏目に
中国市場でもエクストレイルは最重要車種になっている。投入直後から売れ行きが伸び悩み、対策として2023年5月にe-POWER仕様を追加。これで挽回しようとした。
ところが中国市場に詳しい人なら御存知の通り、3気筒の評価は極端に低い。中国にe-POWERを導入する際も「3気筒じゃダメだ」とさんざん言われたほど。この情報を日本側で全く無視した。
日産経営陣の中にe-POWER信者がおり「3気筒だからこそ燃費いい。それをキチンと説明すれば売れる」と言い放ったと聞く。アピール不足だと考えたワケです。
案の定、出してみたら3気筒エンジンだからという理由で全く売れない。エクストレイルに4気筒エンジンを導入する予定無し。e-POWER以外は1.5リッター3気筒ターボだけ。このまま低迷しづけるに違いない。
日本市場はどうか? フルモデルチェンジ直後の売れ行きを見ると絶好調! しばらく納期6カ月以上という状況が続いた。
けれどコロナ渦や半導体不足に起因する生産制限がなくなるや、競合他社の生産も増えてきた。となれば割高の価格設定をしているエクストレイルの競争力は落ちる。エクストレイルの販売台数がガックリ落ちてしまった。これまた浮上の気配無し。
ここまで読んで「アウトランダーPHEVと同じプラットフォームなんだから三菱自動車からPHEVを融通してもらったらどうか」と思うかもしれない。そんな計画もあったようだけれど、日産側から「不要」と言われたと聞く。
それ以後、エクストレルにPHEVをラインナップするという話は途絶えた。これからやっても間に合わない(出そうとすれば2年掛かる)。
もっと言えば、エクストレイルも次期型の開発が進んでいないようだ。これから開発に着手したとして、発表までに最短で3年。急いで2027年末。それまで打つ手無く長期低迷することになる。
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