ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はジープ 3代目ラングラー(2007-2017年)試乗です!(本稿は「ベストカー」2018年2月10日号に掲載した記事の再録版となります)

PHOTO/西尾タクト

■趣味のクルマの原点回帰

Jeepラングラー Unlimited Altitude(8AT・455万円)。1941年に誕生したジープだが、ラングラーとしてはこのモデルが3代目で2007年の登場となる

 私は先代のジープラングラーを2台乗り継いだ男だ。今も所有している。

 ラングラー好きになったのは、20年ほど前にこの連載の取材で乗ったからで、高崎(群馬県)の河川敷を走って「こんなにいいクルマがあったのか!」と驚いたからだ。

 それまで三菱ジープに乗っていたから「オートマなんて邪道だ」と思っていたが、乗ってみたらすばらしく「これは魔法のクルマだ!」と感激して、あっさり購入に至った。

 もうすぐ(今年〈※2018年〉10月頃と言われている)新型に切り替わるという今、なぜこの連載でラングラーを取り上げるのかというと、それは編集担当が決めたことだから私は知らない(笑)。

 しかし、まるでボウリングのタマのような紫色のラングラーを見て、ふるさとに戻ってきたような気持ちになった。つくづく、私はジープが好きなのだと思う。

 ラングラーといえば屋根を外せるのが特徴だ。

 屋根を開けられるのではなく「外せる」のだ。それどころか工具と根性があれば、ドアもピラーも外せて、食べ終わった骨だけのサカナのようにもできる。

外した屋根を並べてニッコリのテリーさん。こういうのが楽しいんだって!

 そうはいっても、普通外すのは屋根までだろう。しかし、それも相当な気合いが必要。重くてでかいから、ひとりで脱着しているとガツガツ当たって傷だらけになりそうだ。

 オープンにしてデートに出かけ、河原で最高のBBQ。帰路の激しい渋滞に耐えながら、彼女を部屋に呼んでイイことしようという目論みも「今日は楽しかった。またね」のひと言であっさり玉砕。

 ガッカリ、ヘトヘトになって帰宅して、ガレージにこのでかい屋根がゴロンと横たわっているのを見たら、圧倒的な絶望感に襲われるだろう。

 でも、いいんです! そんなことに動じず「これもまた人生かな」と冷静に外した屋根を付ける俺。これぞ趣味のクルマの究極ではないか!

 そんな妄想にふけられるのもジープだからこそではないか。全身からタダモノではないオーラを漂わせるラングラーを見て「趣味のクルマの原点回帰」という言葉が思い浮かんだ。

 ラングラーのよさはひとりで乗っていると旅人、仲間といると人気者、家族で乗っていると幸せなファミリーに見えることだ。普通のクルマとはそのへんの「見え方」がまったく違う。

 夏の海にも都会の夜景にも溶け込み、そしてTシャツに短パンというラフな格好でもスーツで決めても似合う。こんなにも武骨なクルマがなぜこれほど万能なのか。

 世界的なブームのなか、各国のプレミアムブランドが競ってSUVを出しているが、それらにはまだ「歴史」がないし、あくまでも乗用車の延長にすぎない。

 いっぽうで、ジープは1941年に生まれた軍用車であり、ラングラーはその歴史を受け継いできたクルマだ。

 戦争の道具というのは悲しい出自かもしれないが、半面、戦いに挑んできたというのはかっこいい歴史でもある。

 そういう「本物の匂い」がラングラーを特別なものにしているのだろう。ただラグジュアリーなだけのSUVと一線を画すのは当然。

 これもクルマとしての「性能」のひとつなのだ。

■七味プリン、わさび海苔、ラングラー(笑)

ラダーフレーム独特の振動がだんだんと運転のリズムに合ってくるのが醍醐味。走りのよさは滑らかさだけが正義ではないのだ

 快晴の下、屋根を取り払ってラングラーで走るのは爽快のひと言だった。このウキウキ感! 走りが楽しいというのはこういうことだと改めて思った。

 私が所有しているジムニーシエラもそうだが、ラダーフレーム独特のゴツゴツした乗り味がたまらなくいいのだ。

 この振動が嫌いな人もいるだろう。それは理解できる。

 普通の乗用車、特にラグジュアリーカーの滑らかな走りを好む人には「なんだこりゃ」になるのだろうが、私には最高。

 この揺れがだんだん自分の運転のリズムに合ってくるのがいいのだ。

 これはあとを引く乗り味とでもいうべきか。激辛のポテトチップスやカレーを食べるような感覚。

 あるいは先日初めて食べた七味味のプリンも「こんなのおいしいのか?」と思ったが、意外とイケていてまた食べたくなった。有名なところではわさび味の海苔もその仲間だろうか。

「なんの話だ?」と言われそうだが、ラングラーの走りには強烈な刺激があり、運転している実感がダイレクトに伝わってくるということなのだ。

 最近のSUVにはない独特の乗り味。ジープの偉大さを改めて感じたしだいである。ただし、最小回転半径は7.1m。カタログの誤植かと思ったが、回ってみると本当だった(笑)。

 燃費がキツイ、小回りがきかない、屋根が重い(笑)。欠点は少なくないが、それらをすべて帳消しにできる魅力がこのクルマにはある。私はやはりジープが大好きだ!

■テリー伊藤 今回のつぶやき

 1941年から続く伝統の重みを感じる。乗る人のライフスタイルをダイレクトに伝えてくれる、いまどき稀有なクルマだ!

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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